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なんで、結婚式の準備みたいなことをしているんだ? 俺達は
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人それぞれ好みが違うように、感性ってゆーか感覚か?
えーっと……例えば、物とか人に対して、カッコいいなぁとか可愛いな、綺麗だなって思う基準もさ。
やっぱり、人によって変わってくるだろ? ましてや、生まれ育った環境の影響を受けていたり。そもそも人間と悪魔じゃ、種族が異なるんだからさ。余計にズレが生じても、仕方がないと思うんだ。思うんだが。
いくらなんでも、男の俺に……ベールはどうなんだ? お嫁さんがつけるやつだろ、これ。
あー……別にその、嫌ってわけじゃないんだ。だって下は普通にズボンだからさ。感覚的には、ただ、うっすい布を被ってるってだけだし。
それに、毎日欠かさず熱心に施してくれている、バアルさんによるスキンケアとヘアパックのお陰だ。以前とは見違えるほど、なんなら美容系のビフォーアフターに使われそうなくらい、肌と髪の艶がマシマシになっている。
だから、その、自分で言うのもなんだけどさ……別に見れないほど悲惨ってわけでもないんだ。
ただ、俺自身の固定観念やら、ちっぽけな男のプライドやらが頭をもたげてくるせいで、しっくりしないってだけ。
ごく平均的な身長である俺を、余裕で越える高さがある、縁に金色の装飾があしらわれた大きな姿見。
その中心には、細かい刺繍が施され、腰の辺りにまでふわりとかかっている、真っ白なベールを被った男が。
燕の尻尾というよりは、翼のようにひらひらと尾てい骨の辺りから左右に分かれた、これまた上下どころかベストや靴まで真っ白な燕尾服を身に纏った男が。
片方の腕を掴んで瞳を不安気に細め、眉間にシワを刻み、口をへの字に曲げた男が、もとい俺の姿が映っている。
改めて、目の前にある自分の姿をじっくり見てみる。
燕尾服といっても、カーテンのレースみたいなヒラヒラが、ジャケットの袖やら裾やらについている為だろう。わりかし、フリっフリのお嫁さんベールと特に違和感なくマッチングしている。
やはり、地獄のトップであるヨミ様の、いかにもファンタジーの貴族っぽいゴージャスな服やマント。普段からバアルさんが身に纏っている、上品でカッコいいスーツを手掛けるほど、その腕を買われている仕立て屋さん。お二人が為せる、プロの技ってやつなのだろう。俺に似合っているかどうかは別として。
因みに件のお二人は、最後の仕上げにアクセサリーを取ってくるからと、俺を一人残して出て行ってしまった。
紺色のカーテンで仕切られていなければ、とても試着室とは思えない部屋。大きな革張りのソファーの前、乳白色の石で出来たテーブルには、甘い香りと湯気を漂わせている花柄のティーセットが用意されている。
壁には、ところどころに絵画が。美的センスが乏しい俺には、単純に綺麗だなとしか感想が出てこない、色彩豊かなそれらで彩られたおしゃれな部屋。
この部屋から、奥にあるという衣装部屋へと、二人仲良くいそいそと真っ黒な翼をはためかせ、長い尾羽根を振りながら、スキップしていってしまったんだけどさ。
それにしても、日頃のお礼にとクッキーを渡しに来たはずが……さっきの厨房での件といい、その場の流れでとはいえ、なんで……け、結婚式の準備みたいなことをしているんだ? 俺達は。
えーっと……例えば、物とか人に対して、カッコいいなぁとか可愛いな、綺麗だなって思う基準もさ。
やっぱり、人によって変わってくるだろ? ましてや、生まれ育った環境の影響を受けていたり。そもそも人間と悪魔じゃ、種族が異なるんだからさ。余計にズレが生じても、仕方がないと思うんだ。思うんだが。
いくらなんでも、男の俺に……ベールはどうなんだ? お嫁さんがつけるやつだろ、これ。
あー……別にその、嫌ってわけじゃないんだ。だって下は普通にズボンだからさ。感覚的には、ただ、うっすい布を被ってるってだけだし。
それに、毎日欠かさず熱心に施してくれている、バアルさんによるスキンケアとヘアパックのお陰だ。以前とは見違えるほど、なんなら美容系のビフォーアフターに使われそうなくらい、肌と髪の艶がマシマシになっている。
だから、その、自分で言うのもなんだけどさ……別に見れないほど悲惨ってわけでもないんだ。
ただ、俺自身の固定観念やら、ちっぽけな男のプライドやらが頭をもたげてくるせいで、しっくりしないってだけ。
ごく平均的な身長である俺を、余裕で越える高さがある、縁に金色の装飾があしらわれた大きな姿見。
その中心には、細かい刺繍が施され、腰の辺りにまでふわりとかかっている、真っ白なベールを被った男が。
燕の尻尾というよりは、翼のようにひらひらと尾てい骨の辺りから左右に分かれた、これまた上下どころかベストや靴まで真っ白な燕尾服を身に纏った男が。
片方の腕を掴んで瞳を不安気に細め、眉間にシワを刻み、口をへの字に曲げた男が、もとい俺の姿が映っている。
改めて、目の前にある自分の姿をじっくり見てみる。
燕尾服といっても、カーテンのレースみたいなヒラヒラが、ジャケットの袖やら裾やらについている為だろう。わりかし、フリっフリのお嫁さんベールと特に違和感なくマッチングしている。
やはり、地獄のトップであるヨミ様の、いかにもファンタジーの貴族っぽいゴージャスな服やマント。普段からバアルさんが身に纏っている、上品でカッコいいスーツを手掛けるほど、その腕を買われている仕立て屋さん。お二人が為せる、プロの技ってやつなのだろう。俺に似合っているかどうかは別として。
因みに件のお二人は、最後の仕上げにアクセサリーを取ってくるからと、俺を一人残して出て行ってしまった。
紺色のカーテンで仕切られていなければ、とても試着室とは思えない部屋。大きな革張りのソファーの前、乳白色の石で出来たテーブルには、甘い香りと湯気を漂わせている花柄のティーセットが用意されている。
壁には、ところどころに絵画が。美的センスが乏しい俺には、単純に綺麗だなとしか感想が出てこない、色彩豊かなそれらで彩られたおしゃれな部屋。
この部屋から、奥にあるという衣装部屋へと、二人仲良くいそいそと真っ黒な翼をはためかせ、長い尾羽根を振りながら、スキップしていってしまったんだけどさ。
それにしても、日頃のお礼にとクッキーを渡しに来たはずが……さっきの厨房での件といい、その場の流れでとはいえ、なんで……け、結婚式の準備みたいなことをしているんだ? 俺達は。
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