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細マッチョな先輩と恋人同士になった件(ソレイユルート)

可愛らしい抗議の後で

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 勢いのあまりにベッドが短い悲鳴を上げた。先輩は俺を押し倒したものの、のしかかってこようとはしない。俺の身体を跨ぐように膝立ちになっている。

 にも関わらず俺の両肩を掴んだまま、首横に顔を寄せたままなもんだから、俺は首すら動かせずにいた。

「……ソレイユ?」

 もう一度だけ。呼んで欲しいと望んでくれた名前を呼びかけてみる。反応は早かった。

「んぅ……っ」

 先輩は吸血鬼にでもなってしまったんだろうか。そうすることが返事代わりかのようにまたしても、柔らかな唇で首を軽く吸われてしまった。

 とはいえ、それが良いか悪いかの判断は出来やしない。だから俺は試しに呼び方を戻してみることにした。

「えっと……じゃあ、先輩?」

 どうやらさっきのは良かったみたい。こっちの方が不正解だったようだ。

「わひゃっ」

 感じたのは唇よりも熱い感触。しっとりと濡れた柔らかな体温が、俺の首を這い始める。とはいえ、先程の唇でのお返事のように淡い感覚をもたらしてくれるものではない。

「ちょっ、ははっ……擽った……俺が悪かったですからっ、な、舐めないで下さいよ……んはっ、ははは」

 何だか大きな犬にでも、じゃれつかれているような。そんな錯覚を覚えてしまうほど、先輩からの抗議は可愛らしかった。ただただ擽ったくて、腹筋が痛くなってしまう。

 ……同じ舌でも大違いだな。深いキスをしてもらえている時とは。

 吐息さえ飲み込まれてしまいそうな。このまま続けていれば蕩け合ってしまえそうな。そんなキスを交わしてもらえている時は、その舌先で撫でられてしまうだけで、痺れるような感覚が舌から頭の芯まで響いてしまう。下腹部の辺りがジンと熱を持ってしまう。

 もっと深く、求め合いたくなってしまうのに。

 ふと先輩からの抗議が止まった。代わりに今度は俺の肩から手を離して、薄い胸板へと額を寄せてくる。後ろに腕を潜らせて、背中を抱き寄せてくる。

 また何かを訴えているかのよう。柔らかな髪を揺らしながらぐりぐりと額を押し付け始めた。可愛い。

「ふふ、ごめんねソレイユ。機嫌、直して欲しいな。顔、見せて? このままじゃあ、キスしたくても出来ないよ……」

 緩やかなウェーブのかかったオレンジの髪を撫でながらお願いしてみたところ、訴えが止まった。それでも撫で続けていると、大して待つこともなくおずおずと顔を上げてくれた。

 頬をほんのりと赤く染めている先輩に、俺はお礼を言おうとしていたのだけれども。

「ん……」

「ふぇ……」

 俺に身を委ねてくれるように、そっと瞳を閉じた先輩。間近に迫ったところで止まってしまった端正な顔が、分かっていたけどカッコよすぎて思考がフリーズしてしまう。見惚れてしまう。

「んっ」

 もう一度、短い一言だけで促されても、ついつい。ただただ見つめてしまうばかりで、何も出来ないでいたもんだから、また不満を抱かせてしまったんだろう。

「……ねぇ、キスしてくれるんじゃなかったの? ちゃんとオレ、顔見せたよ?」

    眉間に軽くシワを寄せて見つめてくる瞳は、納得がいかないと言わんばかり。少し拗ねたような声色からも滲み出てしまっていた。

「ご、ごめん……ソレイユがカッコよくて見惚れちゃ……あっ、でも可愛くもあるんだよ?」

 よっぽど焦ってしまっていたんだろう。俺の口は盛大に空回り。フォローになっていないフォローを口走ってしまっていた。
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