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細マッチョな先輩と恋人同士になった件(ソレイユルート)
俺の部屋に馴染んでいる後ろ姿
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やっぱり、この部屋の主はもう先輩になってしまったんだろうか。そんな考えが過るほどに彼の後ろ姿は、俺の部屋に馴染んでしまっている。
「ふんふふん、ふーん」
聞き覚えのない独特な、けれども耳に残るリズム。ご機嫌な様子で可愛らしい鼻歌を口ずさんでいる俺の恋人。ソレイユ先輩は、キッチンに立って夕ご飯を作ってくれている。
リズミカルにトントントンと何かを切っていたかと思えば、深めの器をボウル代わりにして卵をかき混ぜたりと、迷うことなくテキパキと調理工程を進めてく姿は手慣れたもの。
そもそも、冷蔵庫の中、見させてもらってもいい? からの、中にあるもので適当に作っちゃうね、と宣言出来る事自体がすでに自炊上級者な気がする。
しかも、俺の冷蔵庫の中身のもので。
全く持って胸を張って言えることではないが俺は、食事のほとんど冷凍ものか、コンビニに頼ってしまっている。
時々、このままじゃいけない、と奮起して作ることはあれど、その時にスーパーへと繰り出すもんだから、常備している食材の中で料理に使えそうなものはほとんどない。せいぜい卵や納豆に牛乳。後は、ハムとかソーセージくらいのものだろう。
え、野菜? 大丈夫、ちゃんと一日分の野菜が摂れるってお医者さんとかが推奨しているジュースを毎日欠かさず飲んでるからっ!
心の中でちょっかいを出してきた、良心という名のもう一人の自分を説得していると、美味しそうな匂いが漂ってきた。
醤油とかお砂糖とかを使っていそうな、誰もが好きそうな匂い。勿論、俺だって。
高まる期待感が視線に出てしまっていたんだろうか。台所に立ってからずっと集中していた先輩が初めて俺の方を、小さめのテーブルの前で大人しく席についていた俺へと振り向いた。
「ん……?」
先輩が俺の為にキッチンに立ってくれているという、素敵なシチュエーション効果なのか、不思議そうにこちらを見つめている横顔が色っぽい。
胸の辺りがきゅっと高鳴ってしまっている理由は他にも。
普段あんまり出番のない俺のエプロンを高い位置にある腰に巻いているのも、今日プレゼントさせてもらったばかりの黒のヘアピンをつけてくれているのも、効果抜群なんだろう。俺にとっては。
案の定、見惚れてしまっているとタレ目の瞳が擽ったそうに微笑んだ。
「フフ……もうちょっと待っててね、ハチャメチャに美味しいの作っちゃうからさ」
ひらひらと手を振ってくれて、また先輩の眼差しが真剣味を帯びていく。ずっと聞いていられる調理音が再び二人っきりの台所に響き始めた。
程なくして、満面の笑みを浮かべた先輩がテーブルの上へと、俺の前へと丼ものようにと買っていた大きな腕を置いた。
「じゃじゃーんっ」
立ち上る湯気と共に香ってきたお出汁の香りが何とも食欲をそそってくる。タレと混ざり合いトロリとご飯を覆い隠している卵も美味しそう。鮮やかな黄色の中にはゴロゴロと一口サイズに切られた鶏肉が沢山入っている。
「わっ、親子丼ですか? 美味しそうっ」
先輩は、大正解っと大きく頷いてから得意気に片方の口端を持ち上げ、厚い胸板の前で腕を組んだ。
「でしょ? オレだって、これくらいならチョチョイのちょいだよ! ダンくんには負けちゃうけどね」
どうして、そこでダンが。
思ったけれども、慌てて口をつぐむ。そういえば先輩は、ことあるごとに俺達の周りの親しい誰かと自分を比べているような。
「……幸せですっ、今俺、すっごく!」
自然と口が動いていた。今すぐに伝えないといけないって思ったんだ。俺にとって先輩が一番だって。先輩と一緒に居られるこの時間が、とても幸せなんだって。
「ふんふふん、ふーん」
聞き覚えのない独特な、けれども耳に残るリズム。ご機嫌な様子で可愛らしい鼻歌を口ずさんでいる俺の恋人。ソレイユ先輩は、キッチンに立って夕ご飯を作ってくれている。
リズミカルにトントントンと何かを切っていたかと思えば、深めの器をボウル代わりにして卵をかき混ぜたりと、迷うことなくテキパキと調理工程を進めてく姿は手慣れたもの。
そもそも、冷蔵庫の中、見させてもらってもいい? からの、中にあるもので適当に作っちゃうね、と宣言出来る事自体がすでに自炊上級者な気がする。
しかも、俺の冷蔵庫の中身のもので。
全く持って胸を張って言えることではないが俺は、食事のほとんど冷凍ものか、コンビニに頼ってしまっている。
時々、このままじゃいけない、と奮起して作ることはあれど、その時にスーパーへと繰り出すもんだから、常備している食材の中で料理に使えそうなものはほとんどない。せいぜい卵や納豆に牛乳。後は、ハムとかソーセージくらいのものだろう。
え、野菜? 大丈夫、ちゃんと一日分の野菜が摂れるってお医者さんとかが推奨しているジュースを毎日欠かさず飲んでるからっ!
心の中でちょっかいを出してきた、良心という名のもう一人の自分を説得していると、美味しそうな匂いが漂ってきた。
醤油とかお砂糖とかを使っていそうな、誰もが好きそうな匂い。勿論、俺だって。
高まる期待感が視線に出てしまっていたんだろうか。台所に立ってからずっと集中していた先輩が初めて俺の方を、小さめのテーブルの前で大人しく席についていた俺へと振り向いた。
「ん……?」
先輩が俺の為にキッチンに立ってくれているという、素敵なシチュエーション効果なのか、不思議そうにこちらを見つめている横顔が色っぽい。
胸の辺りがきゅっと高鳴ってしまっている理由は他にも。
普段あんまり出番のない俺のエプロンを高い位置にある腰に巻いているのも、今日プレゼントさせてもらったばかりの黒のヘアピンをつけてくれているのも、効果抜群なんだろう。俺にとっては。
案の定、見惚れてしまっているとタレ目の瞳が擽ったそうに微笑んだ。
「フフ……もうちょっと待っててね、ハチャメチャに美味しいの作っちゃうからさ」
ひらひらと手を振ってくれて、また先輩の眼差しが真剣味を帯びていく。ずっと聞いていられる調理音が再び二人っきりの台所に響き始めた。
程なくして、満面の笑みを浮かべた先輩がテーブルの上へと、俺の前へと丼ものようにと買っていた大きな腕を置いた。
「じゃじゃーんっ」
立ち上る湯気と共に香ってきたお出汁の香りが何とも食欲をそそってくる。タレと混ざり合いトロリとご飯を覆い隠している卵も美味しそう。鮮やかな黄色の中にはゴロゴロと一口サイズに切られた鶏肉が沢山入っている。
「わっ、親子丼ですか? 美味しそうっ」
先輩は、大正解っと大きく頷いてから得意気に片方の口端を持ち上げ、厚い胸板の前で腕を組んだ。
「でしょ? オレだって、これくらいならチョチョイのちょいだよ! ダンくんには負けちゃうけどね」
どうして、そこでダンが。
思ったけれども、慌てて口をつぐむ。そういえば先輩は、ことあるごとに俺達の周りの親しい誰かと自分を比べているような。
「……幸せですっ、今俺、すっごく!」
自然と口が動いていた。今すぐに伝えないといけないって思ったんだ。俺にとって先輩が一番だって。先輩と一緒に居られるこの時間が、とても幸せなんだって。
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