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細マッチョな先輩と恋人同士になった件(ソレイユルート)

好物は先に食べる派? 最後まで取っておく派?

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 どうでもよくなれたお陰で、その後は順調に。照れ臭さでブレーキがかかってしまうことなく先輩を撫でることが出来ていた。

 ずっとこのまま柔らかな髪を、可愛い先輩を堪能しつつ、のんびりと過ごすような気がしていた頃、ふと膝が軽くなった。先輩が、おもむろに均整の取れた身体を起こしたのだ。

「ん……じゃあ、今度はオレの番だね」

「へ……?」

 どうかしたんですかと俺が尋ねる前に、先輩はそう宣言して俺の頭を撫でた。ベッドの端に腰掛けていた俺の手を握りながら尋ねてくる。

「ね、どっちがイイ? 膝枕と雄っぱい枕。シュンちゃんの好きな方からでイイよ?」

 どこか挑発的に、片方の口端だけを持ち上げながら先輩が笑う。順々に指し示してくる。緩く胡座をかいてから、引き締まったしなやかな足を。相変わらず無防備な襟元からも、服越しからも、頼もしい分厚さが分かる胸板を。

 どちらも魅力的でしかない。でも、俺は、やっぱり。

「雄っぱいで宜しくお願いします……っ」

「フフ、そっか……」

 口にしてもいないのに、やっぱりね、と言われたような気がした。緩やかな先輩の動作に合わせて、二人では狭いベッドが軋んだ音を立てる。

「いいよ、ほら、おいで?」

 先輩はベッドの真ん中で仰向けになってから俺を招いた。柔らかく微笑みながら広げられている両腕に、俺は誘われるがままに彼の胸元へと抱きついていた。早速、頬を寄せていた。

 俺の重みを受けて、またベッドが鈍く鳴く。先輩も擽ったそうな笑みをこぼした。

「すみませ、重く……ないですか?」

「だいじょーぶ、大丈夫。シュンちゃんは、色々と食べさせたくなっちゃうくらいに可愛いからね」

「ぅ……ありがとう、ございます」

 俺の髪を梳くように撫でてくれながら、また先輩は楽しそうに笑っている。そんなには重くないってこと、だろうか。

 鼓動の騒がしさっぷりは相変わらずだが、多少、現状を楽しむくらいの余裕は出てきたらしい。五感が戻ってきたかのように先輩の温もりを、柔らかくも弾力のある大胸筋の感触を、頬に感じ始めた。

 それから、いい匂いも。俺と同じボディーソープを使ったとは思えない、爽やかだけれども甘い匂いも。

 ふと、思い出したかのように先輩が話し始める。

「ね、シュンちゃんってさ……もしかして、好物は先に食べちゃうタイプ?」

「ふぇ……?」

 一瞬、話が入ってこなかった。間の抜けた声を出してしまっていた。頬に触れている感触を、先輩の雄っぱいに抱かれているという事実を噛み締めてしまっていたもんだから。

 聞き逃しかけた質問を、頭の中で自分で自分に問うてから、結論を出す。

「あー……うん。時と場合によりますかね。お腹があんまり空いていない時は、好きなものから先に食べちゃいますけど。でも、余裕がある時は好きな味で終わらせたいんで」

 けれども、一体なんの為に? いや、別に雑談なんだから意味はない、か。ただ単に思いついただけで、思いついたからには聞いてみたくなっただけで。

「へぇ……じゃあ、今は、あんまり余裕なかったりして?」

「っ……」

 そういうことか。そういうことだったか。

 まさか意味が有ったとは。いや、でも、その人の性格とかって、その人の行動見てたら大体分かるだろうし。一つの質問から、別の行動に結びつけることも出来……っていうか、実際、バッチリ当たってちゃってるんですけどねぇっ! ええっ!!

「情けない話ですけど、いっつもないですよ、余裕……先輩と一緒に居る時は……」

「へぇー……ふーん……フフ、うふふ……」

 半ば自棄気味に認めれば、先輩の笑顔がニヤついた。それはもう楽しそうに、嬉しそうに。
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