気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件~恋人ルート~

白井のわ

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細マッチョな先輩と恋人同士になった件(ソレイユルート)

え? シュンは、オレのものでしょ?

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 今度は手を止めることなく尋ねれば、先輩は委ねるようにそのキレイな瞳をそっと閉じた。柔らかな笑みを浮かべていた唇を僅かに尖らせた。

「ん……」

 そうして、ただの吐息にも聞こえそうな一音をひとつ。眠たくなってしまったんだろうか。

「その、良かったら……眠っちゃってもいいで」

「んっ」

 足が痺れるであろうことを覚悟しての提案は、不満気な一音に遮られた。先輩は、俺との距離を少しでも詰めるように、その細い顎を上げた。

 どうやら先程の一音は、不意に漏れてしまった吐息ではなかったらしい。それから、眠たかった訳でも。となると、一つしか思いつかない。目を閉じて、少し唇を尖らせて強請ることなんて、アレしか。

「あ、ぅ……」

 思いついていながらも、俺には実行する勇気もなければ、して欲しいんですか、と尋ねてみる勇気もなかった。

 だからだろう、先輩の方から直接的な言葉で強請ってきた。しびれを切らしたように。

「だーかーらー……キスして?」

 やっぱり? そうだよな? それしかないもんね?

 大好きな先輩からのお願いなのに、俺は動けずにいた。なんせ、俺にとってはこのシチュエーションですら夢のよう。いっぱいいっぱいだったのだ。

 そこへ可愛らしいお願いをされたもんだから、あふれてしまっていた。嬉しいとか、好きだとか、可愛いだとか、もっと喜んで欲しいだとか、色々と。だというのに。

「……イチャイチャさせてくれるんでしょ? オレのリクエスト、何でも聞いてくれるんでしょ?」

「……っ」

 先輩はさらなる追い打ちをかけてくる。甘えるよえな、けれどもどこか寂しそうな、胸を甘く締めつけてくるような声で尋ねてくる。雨に濡れた子犬のような、ほっとけない眼差しで見つめてくる。

 今度は込み上げてきた喜びの方が勝ったようだ。おそるおそるとゆっくりとした動作ではあれど、俺は自分から彼に近づけていた。

 また先輩が俺に任せてくれる。嬉しそうに目を閉じて、待っていてくれている。その姿に背を押されるように、俺は形の良い唇に口を押し当てていた。

 重ねた唇の柔らかさに、伝わってくる温もりに、また胸のあたりがきゅっと締め付けられる。喜びだけでなく、達成感にも満たされていく。

 触れ合えたのは、ほんの数秒の間。だというのに、ずっと触れ合えていたような気分になっていた。そっと離した唇が、ジンと痺れるように熱い。

「ん……」

 こういう時は、余韻も大切なのだろうに。けれども俺は堪えられなかった。先輩からの感想が……いや、先輩に褒めて欲しくて、つい尋ねてしまっていた。

「……どう、ですか? 先ぱ」

 俺が目を開けるよりも先に開いていたオレンジ色。見上げていた瞳が、色鮮やかに煌めいている。

「最っ高……」

 ゆるりと微笑む瞳は、今にも蕩けてしまいそう。噛み締めるように呟きながら、先輩が俺の頬へと手を伸ばす。

 手のひらが添えられて、しなやかな白い指が目元をなぞるように撫でていく。

「こんなに顔真っ赤にして照れてるのに……健気にお願い聞いてくれてるオレの恋人、めっちゃ可愛い……」

 期待はしていた。だって、先輩は今までだってちゃんと褒めてくれていたから。

 でも、こんな……っ、こんなのって……

 嬉しかったよ、上手だね。そんな俺の期待なんて簡単に先輩は飛び越えてきてしまう。それは、スゴく嬉しいことで幸せなことだってのに、何でか俺は素直に受け止められなかった。そこからは目を逸らすように、別の部分を指摘してしまっていた。

「お、おれのって……」

 ヘタをしなくても不満にしか取れないだろう。けれども先輩はどこ吹く風。あっけらかんと、差も当然のように尋ねてくる。

「……え? シュンは、オレのものでしょ?」

 見つめてくる眼差しは、澄んだ水面のように透き通っていた。あまりにも純粋な眼差しに、顔が熱をもってしまう。

 バカらしくなってしまう。下手な照れ隠しとか、妙な意地とか、全部。

「それはっ…………そう、ですね……」

「当然、オレもシュンのものだからね」

「……はぃ……ありがとうございます……」

 どういたしまして、と先輩は笑った。満開な笑顔も心の底から嬉しそうで、無邪気で。彼が好きだってこと以外、どうでも良くなってしまっていた。
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