392 / 442
細マッチョな先輩と恋人同士になった件(ソレイユルート)
これくらいなら
しおりを挟む
クリーム溶けちゃうよ? とちゃっかりブーメランまで。慌てて頬張ったせいか、自分の限界を見誤ってしまった。欲張りすぎた。
「んむ……っ」
瑞々しいみかんの果肉と滑らかなホイップクリーム、表面はパリッと香ばしいのにもっちりとした生地。それら甘酸っぱい美味しさが口の中いっぱいになだれ込む。
先輩みたいに豪快でカッコよく、かつスマートに一口で収めることなど出来る訳もなく。入りきれなかったクリームを口元につけてしまっていた。
「フハ、大丈夫? ゴメンゴメン、焦らせちゃったね」
笑いのツボにハマったのか、先輩はクスクスと笑い続けている。こんな情けのない状態でなければ、無邪気で明るい笑顔をのんびり見ていられるんだけれども。
とにかく何か拭くものは。救世主はすぐに見つかった。クレープと一緒に手渡されていた、プラスチックスプーン。透明な袋に入っている小さくて、鮮やかな蛍光色のピンクと一緒に紙ナプキンが添えられていた。
こういうことを見越してか、それとも手元が汚れてしまった時ようにか。どっちにせよ助かった。早速、取り出して口元を。
袋へと指をかけた時だった。顎をそっと掬い上げられたかと思えば、目の前がカッコいい笑顔でいっぱいになっていた。
「せ、先輩……っ」
見惚れていると鳴った軽やかなリップ音。けれども唇には柔らかな感触は、どちらかといえば口の端ギリギリに。
「ん、大丈夫だよ。ちゃんとキレイになったよ?」
何が大丈夫だって言うんだ! いや、クリームを取ってくれたってのは分かったけれども!
「っ……それに関しては、ありがとうございます」
「どういたしましてー」
返ってきた返事は、なんてことのないような。お陰様で余計に顔が熱を持ってしまう。やっぱり、俺ばっかりじゃないか? 色々と意識しちゃってるの。
「っ……た、ただ、こういうのは……嬉しいですけど、誰が見ているか分からな」
「見せつけも兼ねてたから問題ないよ」
「へ?」
間の抜けた声を出してしまっていた。遮るようにさらりと、とんでもないことを言い放ってきたもんだから。
ただただ見つめてしまっていても、先輩は柔らかく微笑んだまま。そればかりか、ますます胸の音が騒がしくなるようなことを言ってくれる。
「可愛いオレのシュンちゃんが、また可愛いことしてくれちゃってたからさ。悪い虫が寄ってこないように、今のうちに牽制しとかないとね」
「け、牽制って……」
「シュンはオレのものなんだって、分からせておかないといけないでしょ?」
シュンはオレのもの。
緩やかな笑みを浮かべた唇から紡がれた言葉が、頭の中で木霊する。クリームよりも甘ったるい喜びが、胸いっぱいにあふれてくる。
「そ、そんなこと、しなくても……周りに分からせなくても……とっくに俺は、先輩のもの、ですよ……?」
珍しく俺は素直になれていた。真っ直ぐな言葉に浮かされたからだろうか。思っていたことを、誤魔化すことなく、照れ隠しをすることもなく、伝えることが出来ていた。
「…………」
先輩が何やら呟いた気がした。聞き取れなかったし、尋ねることも出来なかった。
すぐに悔しげに続けた言葉に、また俺は心を鷲掴みにされてしまっていたのだ。
「あー……ホント、二人っきりだったらなぁ……もっと、もっと、シュンちゃんのこと可愛がれるのになぁ……」
「っ……何言って」
またしても、俺の声が聞こえていないんだろうか。何の躊躇もなく先輩は、その滑らかな頬を俺の頬へと擦り寄せてくる。
「わ、ちょ、先輩っ」
やっぱり聞く耳を持つ気はないみたい。甘えてくれているような仕草を止めようとはしない。このままだと満足するまで続けそう。だったら。
「あー……もう……はい、どうぞ」
いっそのこと、今出来る恋人同士っぽいことを。そう思って俺のクレープを差し出したものの、先輩は珍しく汲み取れなかったようだ。きょとんと目を丸くしている。
「あーんですよ、あーん。食べさせてあげます。これくらいなら、人の目があるところでしても大丈夫でしょう……?」
「ッ……うんっ」
出し惜しみなく伝えたところで、先輩はぱあっと顔を輝かせた。笑顔の形で大きく開かれた口に、みかんホイップクレープの四分の一がぱくりとおさまった。
「んむ……っ」
瑞々しいみかんの果肉と滑らかなホイップクリーム、表面はパリッと香ばしいのにもっちりとした生地。それら甘酸っぱい美味しさが口の中いっぱいになだれ込む。
先輩みたいに豪快でカッコよく、かつスマートに一口で収めることなど出来る訳もなく。入りきれなかったクリームを口元につけてしまっていた。
「フハ、大丈夫? ゴメンゴメン、焦らせちゃったね」
笑いのツボにハマったのか、先輩はクスクスと笑い続けている。こんな情けのない状態でなければ、無邪気で明るい笑顔をのんびり見ていられるんだけれども。
とにかく何か拭くものは。救世主はすぐに見つかった。クレープと一緒に手渡されていた、プラスチックスプーン。透明な袋に入っている小さくて、鮮やかな蛍光色のピンクと一緒に紙ナプキンが添えられていた。
こういうことを見越してか、それとも手元が汚れてしまった時ようにか。どっちにせよ助かった。早速、取り出して口元を。
袋へと指をかけた時だった。顎をそっと掬い上げられたかと思えば、目の前がカッコいい笑顔でいっぱいになっていた。
「せ、先輩……っ」
見惚れていると鳴った軽やかなリップ音。けれども唇には柔らかな感触は、どちらかといえば口の端ギリギリに。
「ん、大丈夫だよ。ちゃんとキレイになったよ?」
何が大丈夫だって言うんだ! いや、クリームを取ってくれたってのは分かったけれども!
「っ……それに関しては、ありがとうございます」
「どういたしましてー」
返ってきた返事は、なんてことのないような。お陰様で余計に顔が熱を持ってしまう。やっぱり、俺ばっかりじゃないか? 色々と意識しちゃってるの。
「っ……た、ただ、こういうのは……嬉しいですけど、誰が見ているか分からな」
「見せつけも兼ねてたから問題ないよ」
「へ?」
間の抜けた声を出してしまっていた。遮るようにさらりと、とんでもないことを言い放ってきたもんだから。
ただただ見つめてしまっていても、先輩は柔らかく微笑んだまま。そればかりか、ますます胸の音が騒がしくなるようなことを言ってくれる。
「可愛いオレのシュンちゃんが、また可愛いことしてくれちゃってたからさ。悪い虫が寄ってこないように、今のうちに牽制しとかないとね」
「け、牽制って……」
「シュンはオレのものなんだって、分からせておかないといけないでしょ?」
シュンはオレのもの。
緩やかな笑みを浮かべた唇から紡がれた言葉が、頭の中で木霊する。クリームよりも甘ったるい喜びが、胸いっぱいにあふれてくる。
「そ、そんなこと、しなくても……周りに分からせなくても……とっくに俺は、先輩のもの、ですよ……?」
珍しく俺は素直になれていた。真っ直ぐな言葉に浮かされたからだろうか。思っていたことを、誤魔化すことなく、照れ隠しをすることもなく、伝えることが出来ていた。
「…………」
先輩が何やら呟いた気がした。聞き取れなかったし、尋ねることも出来なかった。
すぐに悔しげに続けた言葉に、また俺は心を鷲掴みにされてしまっていたのだ。
「あー……ホント、二人っきりだったらなぁ……もっと、もっと、シュンちゃんのこと可愛がれるのになぁ……」
「っ……何言って」
またしても、俺の声が聞こえていないんだろうか。何の躊躇もなく先輩は、その滑らかな頬を俺の頬へと擦り寄せてくる。
「わ、ちょ、先輩っ」
やっぱり聞く耳を持つ気はないみたい。甘えてくれているような仕草を止めようとはしない。このままだと満足するまで続けそう。だったら。
「あー……もう……はい、どうぞ」
いっそのこと、今出来る恋人同士っぽいことを。そう思って俺のクレープを差し出したものの、先輩は珍しく汲み取れなかったようだ。きょとんと目を丸くしている。
「あーんですよ、あーん。食べさせてあげます。これくらいなら、人の目があるところでしても大丈夫でしょう……?」
「ッ……うんっ」
出し惜しみなく伝えたところで、先輩はぱあっと顔を輝かせた。笑顔の形で大きく開かれた口に、みかんホイップクレープの四分の一がぱくりとおさまった。
0
お気に入りに追加
129
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
少年野球で知り合ってやけに懐いてきた後輩のあえぎ声が頭から離れない
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
少年野球で知り合い、やたら懐いてきた後輩がいた。
ある日、彼にちょっとしたイタズラをした。何気なく出したちょっかいだった。
だがそのときに発せられたあえぎ声が頭から離れなくなり、俺の行為はどんどんエスカレートしていく。
おねしょ癖のせいで恋人のお泊まりを避け続けて不信感持たれて喧嘩しちゃう話
こじらせた処女
BL
網谷凛(あみやりん)には付き合って半年の恋人がいるにもかかわらず、一度もお泊まりをしたことがない。それは彼自身の悩み、おねしょをしてしまうことだった。
ある日の会社帰り、急な大雨で網谷の乗る電車が止まり、帰れなくなってしまう。どうしようかと悩んでいたところに、彼氏である市川由希(いちかわゆき)に鉢合わせる。泊まって行くことを強く勧められてしまい…?
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
反抗期真っ只中のヤンキー中学生君が、トイレのない課外授業でお漏らしするよ
こじらせた処女
BL
3時間目のホームルームが学校外だということを聞いていなかった矢場健。2時間目の数学の延長で休み時間も爆睡をかまし、終わり側担任の斉藤に叩き起こされる形で公園に連れてこられてしまう。トイレに行きたかった(それもかなり)彼は、バックれるフリをして案内板に行き、トイレの場所を探すも、見つからず…?
エレベーターで一緒になった男の子がやけにモジモジしているので
こじらせた処女
BL
大学生になり、一人暮らしを始めた荒井は、今日も今日とて買い物を済ませて、下宿先のエレベーターを待っていた。そこに偶然居合わせた中学生になりたての男の子。やけにソワソワしていて、我慢しているというのは明白だった。
とてつもなく短いエレベーターの移動時間に繰り広げられる、激しいおしっこダンス。果たして彼は間に合うのだろうか…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる