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細マッチョな先輩と恋人同士になった件(ソレイユルート)
つい考えてしまうことは、貴方のことばかり
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先輩が見つけていたというお手頃価格なアクセサリー屋さんは、雑貨屋さんの三つ隣にあった。
白を基調とした店内は、並んでいるショーケースによるものか、明るい照明によるものか、上品で華やかな雰囲気を醸し出している。
正直、入りづらい……さっきの雑貨屋さんが可愛かったレベルだ。
「シュンちゃん」
「は、い……」
たった二文字なのに、言葉を詰まらせそうになった。見上げた先でかち合った眼差しの柔らかさに、たちまち心を奪われてしまったから。
少し骨ばった手が俺の頭を撫でてくれる。繋いでいる手を握り直すように、何度か力が込められる。先輩が隣に居てくれるんだって、そう俺に伝えてくれているみたいに。
肩の力が抜けていくのが分かった。俺からも握り返せば、また先輩も優しく返してくれる。
俺の緊張が和らいだのが伝わったんだろう。そっと手を引いてくれながら先輩が微笑んだ。
「行こっか?」
「はいっ」
店の中は、通りから見ていたよりも広かった。
行き交う人達で賑やかなモールの中と同じとは思えない。入った途端に、別のところへと来たような。そんな錯覚を覚えてしまうほどに、店内は静かな空気に満ちていた。
俺達の他にも何人かのお客さんがちらほらと。店員さんからショーケースの中の品を見せてもらっていたり。和気あいあいといった感じで、二人で店内を見回っていたりと、思い思いにアクセサリーを選んでいる。
「ペアリングのコーナーはこっちみたいだね」
俺が好奇心の赴くままにきょろきょろと見回している内に、先輩は目的のコーナーを見つけたらしかった。確認を取るように俺に微笑みかけてくれた。俺が頷くと、手を引き導いてくれる。
「わぁ……」
長方形のショーケースの中に並んでいる指輪の数々。銀に、金に、銅色、黒など。シンプルな単色だけのものもあれば、二色の色が混じっているものもある。
金と銀がねじれるように混ざっているもの。表は銀だけど裏っかわは、指に隠れて見えない方は、鮮やかな青のもの。細い輪っかを二つ並べているみたいに、上と下とで色が違うもの。
色の種類だけでもかなりのバリエーションの多さだ。だというのに、デザインや輪っかの太さも豊富なもんだから目移りしてしまう。
この手前にある細くて波みたいなデザインとか、先輩の白くて長い指に似合いそう。いや、待てよ、意外と右奥の太くて表面がゴツゴツしてるのもカッコいいかも。いやいや、やっぱり、左のシンプルなものの方が。
「フフ、オレに似合うかってことばっかり考えてくれるのは嬉しいけどさ……シュンちゃんも一緒に付けるんだよ?」
「それは、分かってますけど……でも、つい考えちゃうじゃないですか……一番先輩に似合うのはどれかなって…………え?」
散々と普通通りに受け答えしていておいて、今更だった。不思議に思ったのは。
また、顔に出ていたんだろうか。それとも、また、俺の心の内を見透かされて?
当然の疑問に答えてくれることなく、先輩は俺の腰を抱き寄せた。俺に合わせてくれるように高い背を軽く屈めて、内緒話をするように顔を寄せながらショーケース越しにとある指輪を指し示す。
「まぁ、因みにオレは……このV字のリングとか、シュンちゃんの華奢で可愛い指に似合うと思うな」
白を基調とした店内は、並んでいるショーケースによるものか、明るい照明によるものか、上品で華やかな雰囲気を醸し出している。
正直、入りづらい……さっきの雑貨屋さんが可愛かったレベルだ。
「シュンちゃん」
「は、い……」
たった二文字なのに、言葉を詰まらせそうになった。見上げた先でかち合った眼差しの柔らかさに、たちまち心を奪われてしまったから。
少し骨ばった手が俺の頭を撫でてくれる。繋いでいる手を握り直すように、何度か力が込められる。先輩が隣に居てくれるんだって、そう俺に伝えてくれているみたいに。
肩の力が抜けていくのが分かった。俺からも握り返せば、また先輩も優しく返してくれる。
俺の緊張が和らいだのが伝わったんだろう。そっと手を引いてくれながら先輩が微笑んだ。
「行こっか?」
「はいっ」
店の中は、通りから見ていたよりも広かった。
行き交う人達で賑やかなモールの中と同じとは思えない。入った途端に、別のところへと来たような。そんな錯覚を覚えてしまうほどに、店内は静かな空気に満ちていた。
俺達の他にも何人かのお客さんがちらほらと。店員さんからショーケースの中の品を見せてもらっていたり。和気あいあいといった感じで、二人で店内を見回っていたりと、思い思いにアクセサリーを選んでいる。
「ペアリングのコーナーはこっちみたいだね」
俺が好奇心の赴くままにきょろきょろと見回している内に、先輩は目的のコーナーを見つけたらしかった。確認を取るように俺に微笑みかけてくれた。俺が頷くと、手を引き導いてくれる。
「わぁ……」
長方形のショーケースの中に並んでいる指輪の数々。銀に、金に、銅色、黒など。シンプルな単色だけのものもあれば、二色の色が混じっているものもある。
金と銀がねじれるように混ざっているもの。表は銀だけど裏っかわは、指に隠れて見えない方は、鮮やかな青のもの。細い輪っかを二つ並べているみたいに、上と下とで色が違うもの。
色の種類だけでもかなりのバリエーションの多さだ。だというのに、デザインや輪っかの太さも豊富なもんだから目移りしてしまう。
この手前にある細くて波みたいなデザインとか、先輩の白くて長い指に似合いそう。いや、待てよ、意外と右奥の太くて表面がゴツゴツしてるのもカッコいいかも。いやいや、やっぱり、左のシンプルなものの方が。
「フフ、オレに似合うかってことばっかり考えてくれるのは嬉しいけどさ……シュンちゃんも一緒に付けるんだよ?」
「それは、分かってますけど……でも、つい考えちゃうじゃないですか……一番先輩に似合うのはどれかなって…………え?」
散々と普通通りに受け答えしていておいて、今更だった。不思議に思ったのは。
また、顔に出ていたんだろうか。それとも、また、俺の心の内を見透かされて?
当然の疑問に答えてくれることなく、先輩は俺の腰を抱き寄せた。俺に合わせてくれるように高い背を軽く屈めて、内緒話をするように顔を寄せながらショーケース越しにとある指輪を指し示す。
「まぁ、因みにオレは……このV字のリングとか、シュンちゃんの華奢で可愛い指に似合うと思うな」
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