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細マッチョな先輩と恋人同士になった件(ソレイユルート)
初めての記念は一緒に
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「ペア、リング」
口に出すだけで、気分が明るく浮ついてしまう。決まった訳じゃないのに、その気になってしまう。先輩のキレイで長い指なら、どんなデザインのリングが似合うのかな、なんて思い浮かべてしまう。
そんなんだから、しっかり顔にも出ていたんだろう。
「……別のお店、行ってみる?」
「え……」
「雑貨屋さんを出て、少し行った先にさ……お手頃なアクセサリーブランドのお店が有ったんだよね……」
ぽつぽつと続ける先輩の声は、何故か徐々に遠慮がちに。お店の入口の方へと視線を送ったその横顔も、ほんのりと赤く染まっている。
でも、些細なことだった。胸の高鳴りが全身にまで響いていて、前のめりがちに続きの言葉を待っていた俺にとっては。
「だから、さ……シュンちゃんさえ良かったら……その……」
「行きます! 行ってみたいです!」
ぱっとこちらを向いた瞳は少しだけ驚いているように見開いていて、星が舞うように煌めいていた。
「ん……じゃあ、さ……そこで探してみよっか? ……オレ達の、ペアリング」
「っ……はいっ!」
俺の手を取り雑貨屋さんを後にした先輩は、すっかりいつもの調子を取り戻していた。なんなら、それ以上に明るいというか。ご機嫌そうで、俺まで嬉しくなってしまう。
先輩はしなやかな足を軽やかに進め、アクセサリー店を目指していた。が、ふと思い出したかのように、歩みを緩めた。
「あ、先に言っておくけどさ」
「はい、何ですか?」
「ペアリングに関しては、俺にも出させてよ? シュンちゃんからの贈り物って話だったけどさ」
「えー……それじゃあ、お返しにならないじゃないですか」
俺からも先輩にいい贈り物が出来るって思ってたのに。それも、俺的にもスゴく嬉しいお揃いの。
不満が返ってくることは重々承知だったのだろう。先輩はすぐさま二の矢を放ってきた。また、あの寂しそうな顔と声でお願いをしてきたんだ。
「このイヤリング以外では、初めてのお揃いになるでしょ?」
さり気なく伸ばした指先で俺が耳につけている片割れを、雫の形をしたイヤリングをそっと撫でていく。
たまたまなのか、狙ってなのか。耳の裏まで優しく撫でられて、ますます鼓動が煩くなってしまう。
「しかも、ペアリングとか、今後のオレ達にとってスッゴク記念になるものじゃん」
「っ……まぁ、そうですね……」
自分は金額を俺に教えずに、さっさと会計済ませちゃってたくせに。俺は知らなかったけど、なんかブランドものっぽかったから、絶対にいいお値段していただろうに。
言いたいことは次から次へと胸の内に浮かんできていた。でも、口からは全然出てきやしない。
……やっぱり俺、弱いのかな。先輩のこの表情と声に。
俺自身ですら、揺らいでいると自覚していたのだ。先輩が見逃す訳がなかった。
「でしょ? だからさ、一緒に買おう? オレ達の初デートの記念に、ね?」
「く、ぅ……」
この時点で勝負はついていた。なんせ、俺の心の中の天秤は、すっかり傾いてしまっていたのだから。俺一人が買ってプレゼントするんじゃなくて、先輩と一緒にペアリングを買いたいって。
でも、先輩は最後の最後まで気を抜かなかった。
「シュン……」
指を絡めて手を繋いで、じっと俺を見つめてきたのだ。それも、今にもはらりと美しい涙が頬を伝ってしまいそうな潤んだ瞳で。
そんな切なそうな顔で見つめられてしまったら。心がきゆっと締め付けられるような声で名前を呼ばれてしまったら。もう。
「っっ……分かりました……俺達の記念に、買いましょう……二人で、一緒に……」
「やったっ、シュンちゃん大好きだよっ」
コロリと変わった笑顔に、ああ、またしてもと顔が熱を持つ。ちょっとだけ思うところはあれども、可愛いなぁと思ってしまう。
「……俺も、好き……ですよ」
そんな中でも、咄嗟に応えることが出来ただけでも、及第点だと思いたい。
口に出すだけで、気分が明るく浮ついてしまう。決まった訳じゃないのに、その気になってしまう。先輩のキレイで長い指なら、どんなデザインのリングが似合うのかな、なんて思い浮かべてしまう。
そんなんだから、しっかり顔にも出ていたんだろう。
「……別のお店、行ってみる?」
「え……」
「雑貨屋さんを出て、少し行った先にさ……お手頃なアクセサリーブランドのお店が有ったんだよね……」
ぽつぽつと続ける先輩の声は、何故か徐々に遠慮がちに。お店の入口の方へと視線を送ったその横顔も、ほんのりと赤く染まっている。
でも、些細なことだった。胸の高鳴りが全身にまで響いていて、前のめりがちに続きの言葉を待っていた俺にとっては。
「だから、さ……シュンちゃんさえ良かったら……その……」
「行きます! 行ってみたいです!」
ぱっとこちらを向いた瞳は少しだけ驚いているように見開いていて、星が舞うように煌めいていた。
「ん……じゃあ、さ……そこで探してみよっか? ……オレ達の、ペアリング」
「っ……はいっ!」
俺の手を取り雑貨屋さんを後にした先輩は、すっかりいつもの調子を取り戻していた。なんなら、それ以上に明るいというか。ご機嫌そうで、俺まで嬉しくなってしまう。
先輩はしなやかな足を軽やかに進め、アクセサリー店を目指していた。が、ふと思い出したかのように、歩みを緩めた。
「あ、先に言っておくけどさ」
「はい、何ですか?」
「ペアリングに関しては、俺にも出させてよ? シュンちゃんからの贈り物って話だったけどさ」
「えー……それじゃあ、お返しにならないじゃないですか」
俺からも先輩にいい贈り物が出来るって思ってたのに。それも、俺的にもスゴく嬉しいお揃いの。
不満が返ってくることは重々承知だったのだろう。先輩はすぐさま二の矢を放ってきた。また、あの寂しそうな顔と声でお願いをしてきたんだ。
「このイヤリング以外では、初めてのお揃いになるでしょ?」
さり気なく伸ばした指先で俺が耳につけている片割れを、雫の形をしたイヤリングをそっと撫でていく。
たまたまなのか、狙ってなのか。耳の裏まで優しく撫でられて、ますます鼓動が煩くなってしまう。
「しかも、ペアリングとか、今後のオレ達にとってスッゴク記念になるものじゃん」
「っ……まぁ、そうですね……」
自分は金額を俺に教えずに、さっさと会計済ませちゃってたくせに。俺は知らなかったけど、なんかブランドものっぽかったから、絶対にいいお値段していただろうに。
言いたいことは次から次へと胸の内に浮かんできていた。でも、口からは全然出てきやしない。
……やっぱり俺、弱いのかな。先輩のこの表情と声に。
俺自身ですら、揺らいでいると自覚していたのだ。先輩が見逃す訳がなかった。
「でしょ? だからさ、一緒に買おう? オレ達の初デートの記念に、ね?」
「く、ぅ……」
この時点で勝負はついていた。なんせ、俺の心の中の天秤は、すっかり傾いてしまっていたのだから。俺一人が買ってプレゼントするんじゃなくて、先輩と一緒にペアリングを買いたいって。
でも、先輩は最後の最後まで気を抜かなかった。
「シュン……」
指を絡めて手を繋いで、じっと俺を見つめてきたのだ。それも、今にもはらりと美しい涙が頬を伝ってしまいそうな潤んだ瞳で。
そんな切なそうな顔で見つめられてしまったら。心がきゆっと締め付けられるような声で名前を呼ばれてしまったら。もう。
「っっ……分かりました……俺達の記念に、買いましょう……二人で、一緒に……」
「やったっ、シュンちゃん大好きだよっ」
コロリと変わった笑顔に、ああ、またしてもと顔が熱を持つ。ちょっとだけ思うところはあれども、可愛いなぁと思ってしまう。
「……俺も、好き……ですよ」
そんな中でも、咄嗟に応えることが出来ただけでも、及第点だと思いたい。
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