気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件~恋人ルート~

白井のわ

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細マッチョな先輩と恋人同士になった件(ソレイユルート)

やっぱり惹かれちゃうじゃん?

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 店内へと入る前から、鼻先を甘い香りが擽っていた。いい香りなんだけれども、余計に場違いな気がしてしまう。男の俺が入ってもいいのかなって。

 逆に、先輩は似合っているけれども。目鼻立ちが整っていて華やかだし。モデルさんよりもスタイルがいいし。

 つい、その中性的な横顔ばかりを見つめてしまっていると目が合った。微笑みかけられて、しぼみかけていた気分がぱっと明るくなっていく。現金なものだ。

 抱き寄せてくれたままの腰をぽん、ぽんと励ますように軽く叩いてから、先輩は俺を店内へと誘った。

 やっぱり、俺達以外は女の人ばっかりだな。いや、でも、恋人同士っぽい人達も、彼氏さん連れの人もいるな。

 だったら、大丈夫……かな。俺とソレイユ先輩だって、恋人同士なんだし。

 自分を納得させようとしていると、弾んだ声が俺を呼んだ。

「あ、見てみてシュンちゃんっ、これ! ほら、可愛くない?」

 先輩が手にしていたのは、ネコのぬいぐるみ……いや、ティッシュカバーだった。

 くたりと伸びをしているような格好で、瞳をとろんと細めている黒ネコは確かに可愛らしい。でも、それよりも。

「あれ、もしかしてシュンちゃん犬派? だったら、こっちのコの方が好みだったりする?」

 黒猫をそっと棚に戻してから先輩が手に取ったのは黒い犬。小さな舌をちょこんと出して、伏せをしているティッシュカバーを差し出して、俺の反応を窺うように見つめている。

 ああ、やっぱり……可愛いな、先輩の方が。俺との買い物を楽しんでくれている先輩の方が。太陽みたいにキラキラしていて、ふとした時に眩しくなって……それでも、俺に勇気をくれる。

 場違いだとかなんて関係ない。俺も堂々としていよう。楽しもう。せっかくの、先輩とのデートなんだから。

「……可愛いですね、どっちも。先輩は猫と犬、どっちが好きなんですか?」

「っ……えっとね、オレもどっちも好きかな。というか、動物全般好き……いや、鳥だけはダメだったわ……特にカラスとハトが……」

「先輩の大切なバイクの天敵ですもんね」

「そうっ、そーなんだよ! ホントにアイツらさー……」

 子どもみたいに無邪気に顔を輝かせたかと思えば、苦々しそうに口をへの字に。かと思えば、細い眉を釣り上げる。コロコロと変わる表情もまた可愛くて、ついクスクスと笑ってしまっていた。

「ん、やっぱり……どっちも似てるかも」

「どっちもって……何の話、ですか?」

「このコと、このコ。シュンちゃんに似てるなって」

 微笑んで、差し出してきたのは手にしていた黒猫。そして、今度は黒い犬に持ち替えて、俺の鼻先へと近づけてくる。

 このぬいぐるみ達が、俺に?

 どこが似ているのかは分からない。が、言われてみれば先輩が手に取っていたのは黒い色ばかり。棚に並んでいるティッシュカバーの中には、グレーの猫や三毛猫。オーソドックスな茶色の柴犬や、白い犬がいるにも関わらず。

「……わざわざ黒ばっかり選んでいたのって」

「そりゃあ、可愛いシュンちゃんの目と髪の色だし。やっぱり惹かれちゃうじゃん? 好きなんだからさ」

「すっ……ッっ」

 何でこの人は、当たり前みたいにこんなことを!? それも、誰が聞いているのかも分からないところで?

「かっわいー照れちゃった?」

 手にしていた犬のティッシュカバーを戻して、俺の頭を撫で回してくる。その手つきが、まるで犬猫を可愛がっているようなもんだから、余計に背中が擽ったくなってしまう。

「な、照れるに決まって……っ」

 待てよ。もしかしなくても、俺は今、先輩に喜んでもらえる為のとびきり良いヒントを得たんじゃ?

 ただ、それを確認するのは勇気がいるけれども。顔から湯気が出そうなくらいに気恥ずかしいけれども。

「…………先輩」

「ん?」

「……プレゼント、色は……黒にした方が、より喜んでもらえますか?」

 高鳴っている心臓の音が全身に響いている。その鼓動に揺さぶられているみたいに、指先までもが震えてしまう。

「うんっ、オレの大好きな色だからね」

 弾んだ声に、眩しい笑顔に、ますます大きく高鳴ってしまった。うっかり、ひっくり返ってしまいそうなくらいに。

 当然、そんな惨事になる前に、しっかり先輩が抱き支えてくれたんだけどさ。
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