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細マッチョな先輩と恋人同士になった件(ソレイユルート)

先輩と比べりゃあ、俺なんか

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「ふ、んぁ……ん、ん……ソレイユ……」

 ついばむような優しいキス。柔らかな唇が重ねられるだけで、確かな喜びを俺は感じていた。でも、そんな幸せもすぐに終わってしまった。

「……あ」

 もうちょっとして欲しかった。

 ついこぼれてしまっていた素直な不満に、物欲しげな声に、先輩は気づいているハズだ。なんせ、くすくす笑っているからな。

 でも、続きをしてはくれない。優しい手つきで頭を撫でてくれるだけだ。いや、撫でてもらえるのも嬉しいんだけどさ。

 ……色々と触れてもらえるようになってから、だよな。俺、なんか、どんどん我儘になってきて。

「……ね、シュン」

「は、はい。なんでしょう?」

「明日からさ……準備しない?」

「……準備、ですか?」

 一体、何の? 今日はお泊りしてくれるし、明日は休日。剣術部もお休みだと聞いていたから、デートしてもらえるかなって期待はしているんだけれども。

 考えても浮かんでこない、浮かぶ気配のない俺を見ている瞳が細められる。そっと伸びてきた人差し指が、俺の口をちょんとつついた。

「うん、シュンを抱く準備」

 だく、俺を、先輩が…………抱く?

 じわじわと飲み込めてきた宣言に、落ち着きかけていた心臓が駆け足になる。こみ上げてきた衝動のままに、俺は先輩の手を両手でしっかと握ってしまっていた。

「っ……し、しますっ、頑張りますっ、頑張りますからっ、俺っ」

 前のめりになっている俺を見て、先輩が擽ったそうに笑う。細い眉を片方下げながら、空いている手で宥めるように頭を撫でてくれた。

「ほいほい、ちょっと落ち着いて。喜んでくれるのは嬉しいんだけどさ」

「……すみません」

「フフ、いいよ。それでさぁ、ぶっちゃけオレのってデカいじゃん?」

 軽い調子で尋ねられて思い出された先輩のもの。キレイでカッコいいお顔に似合わず、けれども鍛え抜かれて引き締まった長身には似合っているそれは、贔屓目に見ても長くて太い。

 普通くらいだと思っていた自分のものが、子供サイズなのではと思い知らされたくらいには。だからといって悔しさなんて微塵も湧いてこなくて、それどころか今まで以上の憧れを抱いたのだけれども。

「は、はぃ……その、カッコいい、です……」

「……ん、ありがと」

 さっきの調子はどこへやら。頬をほんのりと染めた先輩の唇は、拗ねたようにちょこんと尖っている。

 釣られて照れてしまったんだろうか。撫でてくれていた指先も、どこかあたふた。俺の髪に触れては離れてを繰り返している。

 そんな可愛い様子に癒やされていると、何やらじっと見つめられてしまった。もしや、機嫌を損ねて?

「あの、先ぱ」

「でさ、シュンちゃんはさ、オレと比べて目茶苦茶繊細でしょ? ちっちゃくて細いし」

「え、ええ……まぁ、そうですね……」

 確かにモデル顔負けなその長身に比べりゃあ俺なんかチビですし。剣術部の二大エースであるその鍛え抜かれた身体に比べりゃあ細いですけども。

 今更な事実を言いながら、俺を撫でる先輩の手つきがなんだか妖しい。手のひらではなく指の腹で、産毛だけを撫でるように触れてくる。

 しなやかな長い指は頬を撫でて、首を撫でて、急に腰にまで伸びてきた。尾てい骨の辺りに触れられると背筋がぞくぞくとして、何だか変な気分になってしまう。

「……ちゃんと筋肉はついてるのにさ、どこもふにふにしてて柔らかいし。良い匂いするし、スッゴく可愛いし」

 手の動きに気を取られている内に、いつの間にやら鼻筋の通った顔が近づいてきていた。

 頬と頬とをするりと擦り寄せてきたかと思えばすぐに離れて、今度は首元に。高い鼻先を擦り寄せた後は、薄い胸板がターゲットに選ばれたらしい。

 鎖骨にそっと唇で触れてから、揉み応えのない俺の胸板に柔らかい頬をくっつけてきた。
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