気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件~恋人ルート~

白井のわ

文字の大きさ
上 下
343 / 519
細マッチョな先輩と恋人同士になった件(ソレイユルート)

だから、言いたくなかったのに

しおりを挟む
「え……? あ、いや、その……」

 先輩の変わりように、俺は困惑するばかり。ただ引き金になった言葉だけは分かっていた。ライと練習したってのがいけなかったんだろう。何でかは、やっぱり分からないけれども。

「練習って……ライ君と? どんな練習をしたの?」

 予想は当たっていたようだ。先輩は案の定その部分を追求してきた。

 声色からも分かっていたことだけれども、やはり俺は先輩の機嫌を損ねてしまったらしい。彼の眉間には深いシワが刻まれており、オレンジの瞳からも俺を求めてくれていた熱は冷めてしまっていた。

 ここまで損ねてしまっては、素直に言ったところで機嫌を直してくれるかは分からない。だが、言わなければもっと悪くなってしまうだろう。

 分かってはいた。いたのだが、俺は中々口に出せずにいた。見たことのない先輩の気迫に飲み込まれてしまっていたのかもしれない。

「そ、それは……」

「シュン……言えないの?」

 言い淀んだ瞬間、苛立ち以外の感情が先輩の顔に薄っすらと滲んだ。苦痛に歪んだ寂しそうな顔。今にも泣き出してしまいそうな顔を見て俺は。

「オレには言えないこ」

「あ、アイスでっ!」

「はい?」

 叫んだ勢いのまま、俺は一気に言い切ろうとした。

「ライに棒アイス持っててもらって……それに見立てて、俺が……その……」

 けれども続かなかった。すぐに失速してしまっていた。今更になって気恥ずかしさが勝ってしまったのだ。たかだかアイスを舐めたくらいで、バッチリ練習をこなせた気になっていた自分自身に対しての。

 それから、申し訳無さも湧いてきていた。俺の不安を拭う為だけに付き合わせてしまったライに対しての。

「棒、アイス……」

 きょとんと目を丸くしたまま、呆然とした声で先輩が繰り返す。

「ぷっ、フフ、くく……っ、ふ……」

 堪えきれないといった感じだった。一度笑い出してしまえば、急な坂道を転がるように。キレイに割れた腹筋を押さえ、目に涙を滲ませながらケラケラと笑い続けている。

「あーっ、やっぱり笑った! だから言いたくなかったのにっ!」

「ふはっ、ゴメン、ゴメン……」

 ひとしきり笑った先輩の表情が、またガラリと変わっていく。でも、さっきみたいに不機嫌になった訳じゃなさそう。どちらかと言えば、落ち込んでいるような。

「ホントにゴメンね……絶対に有り得ない、変なこと……考えちゃって……勝手に嫉妬して、ごめんなさい……」

 嫉妬……? ライにってこと、かな? 俺が時々サルファー先輩に嫉妬しちゃうようなのと同じ、だったんだろうか? だったら仕方がないよな。

「よく分からないですけど……誤解が解けたみたいで良かったです。だから、気にしないで下さい。ちゃんと最初っから詳しく説明しなかった俺が悪いんですから」

「いや、シュンちゃんは悪くないよ。オレ、が……」

 まだ謝ろうとする口を塞いでやった。柔い唇を食んで、言葉を喉の奥へと押しやってやった。

 先輩は僅かに目を見開いたものの受け入れてくれた。頭を撫でてくれながら、先輩からも擦り寄せてくれた。何度か触れ合えた後に口を離すと、先輩が名残惜しそうに俺を呼んだ。

「シュンちゃん……」

「続き、してもいいですか? 俺、もっと先輩に喜んで欲しい……俺が、どれだけ先輩のことを好きなのか伝えたいんです……駄目、ですか?」

「…………るい」

「ソレイユ先輩?」

 何やら蚊の鳴くような声で呟いた彼の口は拗ねたように尖っている。頬を赤く染め、恨めしげな目で俺を見つめながら高い鼻先をくっつけてきた。

「ズルいよ……そんな可愛いこと言われちゃったら、断れる訳が無いでしょ……」

「じゃあ……」

「でも、ムリしちゃイヤだからね? こういうのは、お互いに気持ちよくなれないと意味がないんだからさ」

「はいっ、頑張りますね!」

「……ホントに分かってるのかな」

 困ったように眉を下げながら先輩が笑う。俺の頭を撫でてくれる手つきは甘やかすように優しかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~

シキ
BL
全寮制学園モノBL。 倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。 倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……? 真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。 一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。 こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。 今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。 当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。

【完結】お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO
BL
第12回BL大賞奨励賞いただきました!ありがとうございます。僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して、公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…我慢の限界で田舎の領地から家出をして来た。もう戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが我らが坊ちゃま…ジュリアス様だ!坊ちゃまと初めて会った時、不思議な感覚を覚えた。そして突然閃く「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけにジュリアス様が主人公だ!」 知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。だけど何で?全然シナリオ通りじゃないんですけど? お気に入り&いいね&感想をいただけると嬉しいです!孤独な作業なので(笑)励みになります。 ※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。

せっかく美少年に転生したのに女神の祝福がおかしい

拓海のり
BL
前世の記憶を取り戻した途端、海に放り込まれたレニー。【腐女神の祝福】は気になるけれど、裕福な商人の三男に転生したので、まったり気ままに異世界の醍醐味を満喫したいです。神様は出て来ません。ご都合主義、ゆるふわ設定。 途中までしか書いていないので、一話のみ三万字位の短編になります。 他サイトにも投稿しています。

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

処理中です...