上 下
333 / 460
細マッチョな先輩と恋人同士になった件(ソレイユルート)

オレばっかり見られるの不公平じゃない?

しおりを挟む
 ほんの少しの沈黙の後、聞こえてきたのは大げさなくらいに大きな溜め息だった。求めていた答えではなかったんだろうか。

「シュンちゃんさぁ……オレのことどうしたいワケ?」

「ど、どうしたいって」

「ことあるごとに、オレの自己肯定感バク上げするようなことばっか言ってくれちゃってさ」

「へ……?」

 過った不安は杞憂だったらしい。先輩は拗ねたような声でぶつくさ言いながらも、ぐいぐい頬をくっつけてきてくれる。柔らかな髪が時々頬を掠めてきて擽ったい。

「乗っちゃうよ? イイの? オレ、目茶苦茶調子に乗っちゃうよ?」

「えっと……いいんじゃ、ないですか? 今の先輩、可愛い、しっ」

 最後の最後で声がひっくり返ってしまった。急に抱き締めてもらえたもんだから、目の前が逞しい雄っぱいでいっぱいになったもんだから。

 ただでさえ喜びを噛み締めていたところでの強烈なときめきの追撃。ますます踊り狂い始めた鼓動が伝わってしまいそうだ。

 あれ? でも、バクバクはしゃいでしまっている音が、何だか二重に聞こえているような?

「もー……可愛いのはシュンちゃんの方でしょ……」

 先輩に褒めてもらえるのは嬉しい。けれども、それはそれとして反論したいところだ。まぁ、今はしないけれど。頬に触れちゃってる魅惑的な筋肉の谷間の方が大事だし。

 ちゃっかりかこつけて、しっとりとした弾力を堪能してしまっていると肩を掴まれた。ひょいっと距離を離されて、顎を持ち上げられて、ご対面した先輩の口はちょんと尖ってしまっていた。調子に乗り過ぎてしまったかもしれない。

「……なんか、シュンちゃんだけズルい」

「え?」

「という訳で、隙ありっ!」

「ひゃっ!?」

 どういう訳なんだと、心の中でツッコんでいる内にウェストゴムを掴まれて、ズボンをずり下ろされてしまっていた。しかもパンツごと。

 お陰様で心もとなくなった下を隠せているのはパーカーのみ。大して丈も長くはないもんだから太ももの上部分しか、股の付け根に近い方しか隠せてはいない。

 しかし反射的に俺の手は、往生際悪くパーカーの裾を引き下げていた。そんな悪足掻きをしたところで、どうせこれから脱ぐんだけどさ。そもそも、すでに先輩には色々と見られちゃってるんだけどさ。

 俺が恥ずかしがってしまっているのは火を見るよりも明らかだろうに、今の先輩は少し意地悪だ。わざわざ俺の恥ずかしさを上昇させるようなことを言ってきたのだ。楽しそうに口笛を吹いてから、おちゃらけたような調子で。

「ひゅうっ、シュンちゃん、その格好大胆だねー……目茶苦茶唆る」

「そ……っ」

 ますます顔が熱くなっただけでは済まなかった。背筋に淡い感覚まで走ってしまっていた。

 それもこれも、急に声のトーンを変えてくるからだ。うっかり本気っぽく聞こえたじゃないか。絶対にからかわれているだけだろうに。

「ぬ、脱がせたのは先輩でしょうっ」

「そりゃまぁそうだけどさ、オレばっかり見られるの不公平じゃない?」

「うっ……」

「でも、シュンちゃんの熱ーい眼差しを独り占めに出来てたのは、最高に嬉しかったんだけどね」

「うぅ……」

 何も言えなくなってしまった。正論で返されて、も一つおまけに嬉しいことを言われてしまえば。

「それでさ、シュンちゃんはオレと流し合いっこしてくれるの? ……それとも今日はバスタオル巻いて、一緒にお風呂に浸かるだけにしておく?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

処理中です...