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細マッチョな先輩と恋人同士になった件(ソレイユルート)
申し訳ないやら、情けないやら……嬉しいやら
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ふと開いた視界。寝惚けているからか、まだぼんやりとボヤけたそこに映ったのは、俺を見下ろすように眺めている先輩の姿だった。
タレ目の瞳と目が合うと柔らかい微笑みがますます蕩けていく。俺の頭を撫でてくれながら先輩が声をかけてきた。
「おはよう、シュンちゃん。っていっても、まだ夜なんだけどさ」
どうやら俺が眠ってしまっていた間、ずっと膝の上で抱き抱えてくれていたらしい。どうりで身体がぬくぬくしている訳だ。
きっと重かっただろうに、先輩は何ともなさそう。やっぱり俺とは鍛え方が違うんだろう。なかなか声が出てこない俺に気にすることなく「こういう時って、何て挨拶するのがいいんだろうね」と小首を傾げている。
「おはよう、ございます……」
ようやく出せた声は少し掠れていた。まるで長時間歌った後みたいな。そんなに、俺、大きな声を出すようなことを?
そこまで考えたところで、やっとこさ思い出してきた。眠ってしまう前に先輩にしてもらえていた数々を。そして、俺のやらかしを。
また俺ばっかり気持ちよくしてもらったどころか眠っちゃうなんて。せっかくのお部屋デートなのに、初めて泊りに来てもらえたのに、先輩のこと放ったらかしにして。
「……あ、あのっ、先輩……俺……」
「ゴメンね、シュンちゃん」
「ごめんなさいっ」
とにもかくにもと俺が口にした謝罪とほとんど同時だった。眉を八の字にした先輩が俺に向かって頭を下げたのは。
「って、え? 何で先輩が謝るんですか?」
「あ……いや、勝手に着替えさせちゃったから……それに、その……必要に駆られたとはいえさ、許可も取らずに恋人のタンスを開けちゃったからさ……」
「えっ……あっ、ホントだ」
はたと自分の身体へと目を向ければ、確かに昨日洗ったばかりの部屋着を着ていた。いくらなんでも気がつくのが遅過ぎる。
よくよく見れば、先輩の私服も変わっていた。前のものは、先輩のスタイルの良さが分かるような、シルエットのカッコいいものだった。今着ているものは少しゆったりめだけれども、こっちはこっちで似合っている。
「ありがとうございます、着替えさせてくれて」
今更なんだけどさ。裸以上に恥ずかしいところなんて、いっぱい見られちゃってるし。情けのないところも散々。でも、気がついて早々に自分が汚してしまった惨状を見なくて済んだのは、ホントに助かった。
「……大丈夫? ムリしてない? イヤじゃなかった? だって、オレ……替えを探す為とはいえ、シュンちゃんの下着……」
「大丈夫ですよ、むしろ助かりました。先輩には、その……色々見られちゃっても大丈夫なんですけど……汚しちゃったのをずっと見られちゃうのは、やっぱり恥ずかしいから……」
「そっか、良かった……あ、後ね、勝手にタオルも借りちゃった。流石にあのまま着替えさせる訳にはいかなかったからさ。洗面所で濡らしてから拭かせてもらったんだけど……大丈夫?」
これまたどうりでスッキリしている訳だ。致してもらっていた近くのカーペットを横目で見ても、目立ったシミは一つもない。もしかして。
「ありがとうございます、大丈夫ですよ。それよりも、掃除までしてもらっちゃってたりします?」
「ああ、うん。オレが調子に乗っちゃったせいで汚しちゃったからね。使わせてもらったタオルと前の服とか下着は洗濯中だよ。汚れが酷かった下着はちゃんと洗ってから洗濯機に入れたから」
「ひぇ……何から何まですみません……ありがとうございます……」
申し訳ないやら、情けないやら。どんどん熱くなっていく顔を覆い隠そうとしていたところで手を握られた。絡めてきた長い指は、しっかりとしているのに上品な美しさも感じる。
「気にしないで……オレ、スゴく嬉しかったんだからさ……シュンちゃんのこと、好きなだけ愛させてもらえたから」
「あ、い……っ」
熱烈な言葉だけでも心を鷲掴みにされるには十分だった。なのに、間近にある微笑みからあふれんばかりの好きが伝わってきて、胸の奥が甘く締め付けられてしまう。
ほのかに漂ってきたそういう雰囲気に、性懲りもなく俺はそわそわしてしまっていた。けれども密かに抱いていた期待は外れることになる。
「ところでさ、お腹空いてない?」
「うぇ?」
慈しむような微笑みから一転して無邪気な笑顔。コロリと変わった先輩の様子に声がひっくり返ってしまう。でも、言われてみれば。
「あー……空いて、ますね……かなり」
お腹の具合を気にしたからだろう。さっきまで全く気配のなかった空腹が急に訴え始めた。このままじゃあ、先輩の前だってのに盛大に腹の虫を鳴らしてしまいそう。
「じゃあ、お弁当温めて食べよっか? それでさ、その後、一緒にお風呂に入ろう?」
「は、はいっ、ご一緒させていただきます」
「フフ、楽しみ。交代で背中流し合いっこしようね」
「はいっ」
先輩とのお風呂の約束に舞い上がった結果、またしても俺は忘れてしまっていた。肝心要な自分がしたかったことを。先輩にいっぱいの好きを伝えるということを。
タレ目の瞳と目が合うと柔らかい微笑みがますます蕩けていく。俺の頭を撫でてくれながら先輩が声をかけてきた。
「おはよう、シュンちゃん。っていっても、まだ夜なんだけどさ」
どうやら俺が眠ってしまっていた間、ずっと膝の上で抱き抱えてくれていたらしい。どうりで身体がぬくぬくしている訳だ。
きっと重かっただろうに、先輩は何ともなさそう。やっぱり俺とは鍛え方が違うんだろう。なかなか声が出てこない俺に気にすることなく「こういう時って、何て挨拶するのがいいんだろうね」と小首を傾げている。
「おはよう、ございます……」
ようやく出せた声は少し掠れていた。まるで長時間歌った後みたいな。そんなに、俺、大きな声を出すようなことを?
そこまで考えたところで、やっとこさ思い出してきた。眠ってしまう前に先輩にしてもらえていた数々を。そして、俺のやらかしを。
また俺ばっかり気持ちよくしてもらったどころか眠っちゃうなんて。せっかくのお部屋デートなのに、初めて泊りに来てもらえたのに、先輩のこと放ったらかしにして。
「……あ、あのっ、先輩……俺……」
「ゴメンね、シュンちゃん」
「ごめんなさいっ」
とにもかくにもと俺が口にした謝罪とほとんど同時だった。眉を八の字にした先輩が俺に向かって頭を下げたのは。
「って、え? 何で先輩が謝るんですか?」
「あ……いや、勝手に着替えさせちゃったから……それに、その……必要に駆られたとはいえさ、許可も取らずに恋人のタンスを開けちゃったからさ……」
「えっ……あっ、ホントだ」
はたと自分の身体へと目を向ければ、確かに昨日洗ったばかりの部屋着を着ていた。いくらなんでも気がつくのが遅過ぎる。
よくよく見れば、先輩の私服も変わっていた。前のものは、先輩のスタイルの良さが分かるような、シルエットのカッコいいものだった。今着ているものは少しゆったりめだけれども、こっちはこっちで似合っている。
「ありがとうございます、着替えさせてくれて」
今更なんだけどさ。裸以上に恥ずかしいところなんて、いっぱい見られちゃってるし。情けのないところも散々。でも、気がついて早々に自分が汚してしまった惨状を見なくて済んだのは、ホントに助かった。
「……大丈夫? ムリしてない? イヤじゃなかった? だって、オレ……替えを探す為とはいえ、シュンちゃんの下着……」
「大丈夫ですよ、むしろ助かりました。先輩には、その……色々見られちゃっても大丈夫なんですけど……汚しちゃったのをずっと見られちゃうのは、やっぱり恥ずかしいから……」
「そっか、良かった……あ、後ね、勝手にタオルも借りちゃった。流石にあのまま着替えさせる訳にはいかなかったからさ。洗面所で濡らしてから拭かせてもらったんだけど……大丈夫?」
これまたどうりでスッキリしている訳だ。致してもらっていた近くのカーペットを横目で見ても、目立ったシミは一つもない。もしかして。
「ありがとうございます、大丈夫ですよ。それよりも、掃除までしてもらっちゃってたりします?」
「ああ、うん。オレが調子に乗っちゃったせいで汚しちゃったからね。使わせてもらったタオルと前の服とか下着は洗濯中だよ。汚れが酷かった下着はちゃんと洗ってから洗濯機に入れたから」
「ひぇ……何から何まですみません……ありがとうございます……」
申し訳ないやら、情けないやら。どんどん熱くなっていく顔を覆い隠そうとしていたところで手を握られた。絡めてきた長い指は、しっかりとしているのに上品な美しさも感じる。
「気にしないで……オレ、スゴく嬉しかったんだからさ……シュンちゃんのこと、好きなだけ愛させてもらえたから」
「あ、い……っ」
熱烈な言葉だけでも心を鷲掴みにされるには十分だった。なのに、間近にある微笑みからあふれんばかりの好きが伝わってきて、胸の奥が甘く締め付けられてしまう。
ほのかに漂ってきたそういう雰囲気に、性懲りもなく俺はそわそわしてしまっていた。けれども密かに抱いていた期待は外れることになる。
「ところでさ、お腹空いてない?」
「うぇ?」
慈しむような微笑みから一転して無邪気な笑顔。コロリと変わった先輩の様子に声がひっくり返ってしまう。でも、言われてみれば。
「あー……空いて、ますね……かなり」
お腹の具合を気にしたからだろう。さっきまで全く気配のなかった空腹が急に訴え始めた。このままじゃあ、先輩の前だってのに盛大に腹の虫を鳴らしてしまいそう。
「じゃあ、お弁当温めて食べよっか? それでさ、その後、一緒にお風呂に入ろう?」
「は、はいっ、ご一緒させていただきます」
「フフ、楽しみ。交代で背中流し合いっこしようね」
「はいっ」
先輩とのお風呂の約束に舞い上がった結果、またしても俺は忘れてしまっていた。肝心要な自分がしたかったことを。先輩にいっぱいの好きを伝えるということを。
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