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細マッチョな先輩と恋人同士になった件(ソレイユルート)

当たり前じゃないですか、好きなんだから

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 かち合ったオレンジの瞳が楽しそうに微笑んでいる。

 一応、俺は頷くことで肯定を示したハズ。が、それだけでは足りなかったらしい。言葉でも求められているようだ。もう一度、強請るように尋ねてきた声はあふれる喜びを隠そうともしていない。

「……ね、楽しみにしてくれてたの? ……オレが泊りに来るの」

「は、はい……楽しみに、してました……」

「そっか……」

 俺が何とか素直な気持ちを絞り出せたことで、先輩は満足してくれたらしかった。タレ目な瞳をますます細めながら頬をそっと寄せてきた。彼が小さく首を動かし擦り寄ってくれる度に、滑らかな柔らかさが頬を撫でていく。

 可愛いな。何だか甘えてもらってるみたい……頭とか、撫でちゃってもいいのかな? いい、よな? だって、先輩だって俺のこといっぱい触ってくれてるんだし。俺だって、ちょっとくらい。

 懐っこいネコのように擦り寄ってくれている、ウェーブのかかった髪にそっと触れてみる。オレンジ色の柔らかな髪は、見た目通りふわふわしていて触り心地がいい。

 指先でしか触れていなかったんだが、気づかれたらしかった。ご機嫌そうに伏せられていた瞳が、驚いたようにぱちりと開いた。

「あ、ごめんなさ……」

 咄嗟に引っ込めようとしていた俺の手を、たおやかな手が握ってくる。口端をニコリと持ち上げて、先輩は俺の手を自身の頭へと導いた。

「そんなに遠慮しないでさ、もっと撫でてくれていいんだよ?」

 これだけしてもいいんだと指し示してくれるようだった。縮こまっていた俺の手が広げられ、手の甲を握られて、先輩の頭へと無遠慮に置かれてしまう。握ったままの俺の手を、わしゃわしゃと動かし始めた。カッコいいヘアスタイルが乱れてしまうのも構わずに。

「さ、ほら……やってごらん?」

 微笑む瞳が、とろりと下がった目尻が、何だかスゴく色っぽい。息を飲んだ俺は返事を返せなかったどころか、喉を鳴らしてしまっていた。ただただ見惚れてしまっていた。

 自分から手を動かさない俺に焦れたんだろう。先輩が拗ねたように唇を尖らせた。

「……シュンちゃんの好きなように撫でてくれていいんだよ?」

「は、はいっ」

 寂しそうな声と眼差しに、惚けていた頭が少しだけ冷静さを取り戻す。やっとこさ撫でることが出来た髪は、日頃から手入れが行き届いているのだろう。指通りが良く、少し動かすだけでサラリと指横を撫でていく。

 ……何だかクセになりそうだ。撫で心地が良いもんだから、止め時が分からなくなっちゃいそう。

「フフ……そうそう、上手だね」

 その上、嬉しそうな声で褒められてしまえば、上機嫌そうな笑みを向けられてしまえば、ますます張り切ってしまう訳で。

「おっ、スイッチ入った? ノリ気だね」

 両手でよしよし撫でてしまっても、先輩はますます嬉しそうに目尻を下げるだけ。それどころか、楽しそうな声で俺を昂らせるようなことまで、余裕たっぷりな笑みで言ってくれてしまう。

「イイよ、イイよ、もっといっぱい撫でてくれて、頭以外も触ってくれていいんだよ……?」

「っ……ホントに? ホントに触ってもいいんですか?」

 確認している最中なのに、すでに俺はしっとりと柔い彼の頬に触れてしまっていた。カッコいい輪郭をなぞるように撫でてしまっていた。

 また驚いたように、先輩が長い睫毛を瞬かせたのは少しだけで、すぐに俺の手が取られた。逃げられないように固定してから、自ら頬を擦り寄せてくれる。

「うん、イイよ……嬉しいな……シュンちゃんもオレに触りたいって思ってくれたなんて……」

「そんなの、当たり前じゃないですか……先輩のこと、好きなんですから……好きな人に触りたいって思うのは普通のことでしょう?」

 また先輩は少し驚いたような。けれども、すぐに瞳を細めた。花咲くように綻ばせた唇から、擽ったそうな笑みをこぼしながら。

「フフ、そっか……そうだよね、好きだったら触りたくなっちゃうよね……」

「そうですよ、好きなんですから……」

 何でムキになったのかは自分でも分からない。けれども俺は、わざわざ好きって部分を強調しながら、もう一度先輩に伝えていた。そんな俺に対して、先輩はまた擽ったそうに笑っていた。頬をほんのり染めながら。
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