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細マッチョな先輩と恋人同士になった件(ソレイユルート)
動き始めた、一世一代の
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柔らかな風が熱くなった頬を撫でていく。いまだに俺の背を撫でてくれていたサルフが、ああ、と何か思い出したような声を上げた。
「因みにだが、本当はシュンにどうしたいんだ?」
まるで今日のコンディションを聞いてくるような。全く大したことないような調子で、こっちとしては答え辛いことを尋ねてきた。
今更だけど。もうすでに色々と吐き出しちゃった後だし。
「……とことん甘やかして優しくして、オレのことしか考えられないようにしたい。オレが居ないと生きていけないようになって欲しい」
この際だからとことんと素直に告げれば、オレの背をバシバシ叩きながらカラカラと笑い出した。
こっちに関しては笑うのか。いや、真面目な顔して受け止めてもらっちゃっても困るけれど。
「ははっ、それは確かに愛が重たいな……だったら、もういっそ婚約してしまえばいいんじゃないか?」
思いつきにしては、いい提案だと思っているのだろう。サルフは朗らかな笑顔のまま、あっけらかんと言い放った。しかし、オレは気が気ではなかった。ズバリ心の内を見透かされたような気分になっていたからだ。
よっぽど変な顔をしていたんだろう。オレを見つめる黄色い目が丸くなっていく。眉間には再びシワが刻まれていた。
「ん? なんだその顔は? 考えたこと、なかったのか?」
「い、いやー……一応、考えたことはあるけどさ……早くない?」
言えない。実はシュンちゃんに告白しようと決意していた時にはすでに、プロポーズしようと考えていたなんて。
サイズが間違ってたらイヤだから、それっぽい小箱まで買っちゃってさ。だからって、一緒に選ぼうねって空箱だけ渡すのも寂しいかなって、バラのブリザードフラワーまで用意していたなんて。
しかも、結局まだどっちも渡せていないだなんて。それどころか、オレが回りくどい告白をしちゃったせいで勘違いさせて泣かせてしまっただなんて。
絶対に、サルフにだけは、口が裂けても言えない。
だって、事あるごとに引っ張り出されるに決まっている。シュンちゃんの前でも結構しんどい。ましてや、ダンくんやライくんにグレイ先生、セレストさん。はては剣術部の先輩後輩の前でもポロッと言われたりなんかしたら。やっぱり、この秘密だけは死守しなければ。
まぁ、それはそれとして。やらかしちゃったお陰で、シュンちゃんの方から熱烈な告白を聞けたのは、怪我の功名だったのかもしれないけどさ。
「……だって、ついこの間だよ? シュンちゃんと恋人同士になれたの。初デートだって、まだ」
「昨日、家に行ったのはデートに入らないのか?」
どこか納得の言っていない顔をしている親友を納得させようと試みたものの大失敗。さくっと痛いところをつかれてしまった。
「う……そりゃあ、あれも立派なデートでしたけど……」
「だろう? そもそも、恋に出会った期間の長さは関係なかったんじゃないのか? そう貴様が言っていただろう。だったら、別にプロポーズが早くてもいいんじゃないか? 互いの気持ちさえ、同じ方を向いていたらな」
今すぐ蹴っ飛ばしたい。いつぞやに、したり顔でサルフにアドバイスしていたオレを。
というか、サルフは何でそう確信を持ったような顔をしているんだ。まるで、オレが勇気さえ出せれば、シュンちゃんは絶対に応えてくれるみたいな。オレと婚約してくれるみたいな。
根拠はない。けれども、その強い光を宿した瞳は信じられる。試合で心が折れそうな時に『俺達ならば必ず勝てる』と奮い立たせてくれるその眼差しは。
「……どうせなら、思い出に残るような場所でしたくない?」
いつものベンチでプロポーズしようとしてたくせに、今さら何言ってんだって感じだけども。
いやでも、あそこはお気に入りの場所だし。シュンちゃんと仲良くなった切っ掛けの場所でもあったから、オレにとってはスゴく特別な場所なんだけどさ。
「思い出に残るような、か……だったら、少し俺に心当たりがあるが……どうだ?」
なにやら、また自信ありげにサルフは口の端を持ち上げ笑う。思わず前のめりになる気持ちを抑えつつ、オレは耳を傾けた。
「因みにだが、本当はシュンにどうしたいんだ?」
まるで今日のコンディションを聞いてくるような。全く大したことないような調子で、こっちとしては答え辛いことを尋ねてきた。
今更だけど。もうすでに色々と吐き出しちゃった後だし。
「……とことん甘やかして優しくして、オレのことしか考えられないようにしたい。オレが居ないと生きていけないようになって欲しい」
この際だからとことんと素直に告げれば、オレの背をバシバシ叩きながらカラカラと笑い出した。
こっちに関しては笑うのか。いや、真面目な顔して受け止めてもらっちゃっても困るけれど。
「ははっ、それは確かに愛が重たいな……だったら、もういっそ婚約してしまえばいいんじゃないか?」
思いつきにしては、いい提案だと思っているのだろう。サルフは朗らかな笑顔のまま、あっけらかんと言い放った。しかし、オレは気が気ではなかった。ズバリ心の内を見透かされたような気分になっていたからだ。
よっぽど変な顔をしていたんだろう。オレを見つめる黄色い目が丸くなっていく。眉間には再びシワが刻まれていた。
「ん? なんだその顔は? 考えたこと、なかったのか?」
「い、いやー……一応、考えたことはあるけどさ……早くない?」
言えない。実はシュンちゃんに告白しようと決意していた時にはすでに、プロポーズしようと考えていたなんて。
サイズが間違ってたらイヤだから、それっぽい小箱まで買っちゃってさ。だからって、一緒に選ぼうねって空箱だけ渡すのも寂しいかなって、バラのブリザードフラワーまで用意していたなんて。
しかも、結局まだどっちも渡せていないだなんて。それどころか、オレが回りくどい告白をしちゃったせいで勘違いさせて泣かせてしまっただなんて。
絶対に、サルフにだけは、口が裂けても言えない。
だって、事あるごとに引っ張り出されるに決まっている。シュンちゃんの前でも結構しんどい。ましてや、ダンくんやライくんにグレイ先生、セレストさん。はては剣術部の先輩後輩の前でもポロッと言われたりなんかしたら。やっぱり、この秘密だけは死守しなければ。
まぁ、それはそれとして。やらかしちゃったお陰で、シュンちゃんの方から熱烈な告白を聞けたのは、怪我の功名だったのかもしれないけどさ。
「……だって、ついこの間だよ? シュンちゃんと恋人同士になれたの。初デートだって、まだ」
「昨日、家に行ったのはデートに入らないのか?」
どこか納得の言っていない顔をしている親友を納得させようと試みたものの大失敗。さくっと痛いところをつかれてしまった。
「う……そりゃあ、あれも立派なデートでしたけど……」
「だろう? そもそも、恋に出会った期間の長さは関係なかったんじゃないのか? そう貴様が言っていただろう。だったら、別にプロポーズが早くてもいいんじゃないか? 互いの気持ちさえ、同じ方を向いていたらな」
今すぐ蹴っ飛ばしたい。いつぞやに、したり顔でサルフにアドバイスしていたオレを。
というか、サルフは何でそう確信を持ったような顔をしているんだ。まるで、オレが勇気さえ出せれば、シュンちゃんは絶対に応えてくれるみたいな。オレと婚約してくれるみたいな。
根拠はない。けれども、その強い光を宿した瞳は信じられる。試合で心が折れそうな時に『俺達ならば必ず勝てる』と奮い立たせてくれるその眼差しは。
「……どうせなら、思い出に残るような場所でしたくない?」
いつものベンチでプロポーズしようとしてたくせに、今さら何言ってんだって感じだけども。
いやでも、あそこはお気に入りの場所だし。シュンちゃんと仲良くなった切っ掛けの場所でもあったから、オレにとってはスゴく特別な場所なんだけどさ。
「思い出に残るような、か……だったら、少し俺に心当たりがあるが……どうだ?」
なにやら、また自信ありげにサルフは口の端を持ち上げ笑う。思わず前のめりになる気持ちを抑えつつ、オレは耳を傾けた。
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