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細マッチョな先輩と恋人同士になった件(ソレイユルート)
やっぱり先輩は、繊細な人じゃないか
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ひとしきりして笑いは収まったけれども、乱れてしまっていた息は整わない。まだ、お腹も少しだけ痛い。笑い過ぎて。
「なんか、バカみたいですね……」
「だねぇ、お互い勝手にビビっちゃってさ……最初っからちゃんと話しておけば良かったよ……」
微笑んでいた横顔がこちらを向く。頭の後ろがもぞりと動いて、後頭部を抱き寄せられて気がついた。いつの間に、俺は先輩の腕を枕代わりにしてしまっていたんだろうか。
お詫びも、反省もする間がなかった。
仰向けで寝転んでいた体勢から、向き合う体勢にさせられてすぐ、ちょこんと額がくっついてきたんだ。また先輩の柔らかな微笑みしか見えなくなってしまう。また後少しでキス出来る距離に。
「だからさ、これからは極力隠し事ナシでいかない?」
おどけた調子で提案されて、ウィンクされて、はっとなる。危なかった。そういう雰囲気でもなかったのに、自分からキスしそうになっちゃってた。
突発的にしかけていた俺の行動に先輩は気づいていないらしい。擦り寄るように額を押しつけながら微笑んでいる。
「そ、そうですね……って、何で極力なんですか?」
「ん? いやだって、どうしてもヒミツにしたいことの一つや二つはあるだろうし……それに」
「それに?」
「そういう男の方がミステリアスでカッコよくない? もっとシュンちゃんが、オレにメロメロになってくれちゃうかも?」
声色は、さっきみたいにお茶目だった。でも、俺は気づいてしまった。見つめてくる眼差しが、ほんの僅かに揺れていることに。
きっと、こういう小さなことでも不安なんだろう。ふとしたことを切っ掛けに俺の心が離れていってしまわないかって。そんなことある訳がないのに。
やっぱり先輩は、繊細な人じゃないか。
改めて思った途端、胸に温かいものが込み上げてきた。先輩のことが好きで、好きで仕方がない。その瞳に映してもらえるだけで、全身に喜びが満ちていく。勝手に笑みがこぼれてしまう。こういう感覚を愛おしいって言うのかも。
「……どんなソレイユ先輩でも俺は大好きですし……もう、メロメロになってますよ……」
「……シュンちゃん」
はたと見開いてから、細められたオレンジの瞳が熱を帯びていく。鼻筋の通った顔が、少しだけ空いていた俺達の距離を詰めてくる。
自然と俺からも近づくことが出来ていた。頬に手を添えてきた彼に倣って俺も手を伸ばす。手のひらに感じた温もりは熱かった。重なった唇も。
「ん……は、ふぁ……先ぱ……」
てっきり俺は、さっきみたいに終わるのかと。触れるだけのキスを交わしてもらえて、抱き締めてもらえるのかと。それだけでも十分に幸せなのに。
淡い感覚を感じた時には、もう触れてもらってしまえていた。俺の背を抱いていた彼の手が股の間へと伸びてきていた。
「なんか、バカみたいですね……」
「だねぇ、お互い勝手にビビっちゃってさ……最初っからちゃんと話しておけば良かったよ……」
微笑んでいた横顔がこちらを向く。頭の後ろがもぞりと動いて、後頭部を抱き寄せられて気がついた。いつの間に、俺は先輩の腕を枕代わりにしてしまっていたんだろうか。
お詫びも、反省もする間がなかった。
仰向けで寝転んでいた体勢から、向き合う体勢にさせられてすぐ、ちょこんと額がくっついてきたんだ。また先輩の柔らかな微笑みしか見えなくなってしまう。また後少しでキス出来る距離に。
「だからさ、これからは極力隠し事ナシでいかない?」
おどけた調子で提案されて、ウィンクされて、はっとなる。危なかった。そういう雰囲気でもなかったのに、自分からキスしそうになっちゃってた。
突発的にしかけていた俺の行動に先輩は気づいていないらしい。擦り寄るように額を押しつけながら微笑んでいる。
「そ、そうですね……って、何で極力なんですか?」
「ん? いやだって、どうしてもヒミツにしたいことの一つや二つはあるだろうし……それに」
「それに?」
「そういう男の方がミステリアスでカッコよくない? もっとシュンちゃんが、オレにメロメロになってくれちゃうかも?」
声色は、さっきみたいにお茶目だった。でも、俺は気づいてしまった。見つめてくる眼差しが、ほんの僅かに揺れていることに。
きっと、こういう小さなことでも不安なんだろう。ふとしたことを切っ掛けに俺の心が離れていってしまわないかって。そんなことある訳がないのに。
やっぱり先輩は、繊細な人じゃないか。
改めて思った途端、胸に温かいものが込み上げてきた。先輩のことが好きで、好きで仕方がない。その瞳に映してもらえるだけで、全身に喜びが満ちていく。勝手に笑みがこぼれてしまう。こういう感覚を愛おしいって言うのかも。
「……どんなソレイユ先輩でも俺は大好きですし……もう、メロメロになってますよ……」
「……シュンちゃん」
はたと見開いてから、細められたオレンジの瞳が熱を帯びていく。鼻筋の通った顔が、少しだけ空いていた俺達の距離を詰めてくる。
自然と俺からも近づくことが出来ていた。頬に手を添えてきた彼に倣って俺も手を伸ばす。手のひらに感じた温もりは熱かった。重なった唇も。
「ん……は、ふぁ……先ぱ……」
てっきり俺は、さっきみたいに終わるのかと。触れるだけのキスを交わしてもらえて、抱き締めてもらえるのかと。それだけでも十分に幸せなのに。
淡い感覚を感じた時には、もう触れてもらってしまえていた。俺の背を抱いていた彼の手が股の間へと伸びてきていた。
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