上 下
301 / 460
細マッチョな先輩と恋人同士になった件(ソレイユルート)

要は、お互いに

しおりを挟む
 覆い被さっていた均整のとれた身体が、ゆっくりと離れていってしまう。先輩は、膝立ちで俺の身体を跨いだまま、手で顔を覆ったまま、肩を落とした。

 俺は言葉を待っていた。いや、待つことしか出来なかった。何で先輩が落ち込んじゃっているのか、分からなかったから。

 少ししてから、先輩はぽつりぽつりと話してくれた。それでも、目元から手は退いていたけれども、なかなか目を合わせはてくれない。

「あー……先に言っておくけどさ、間違ってたらゴメンね」

「はい。気にしませんから、どうぞ」

「ありがと」

 ようやく目が合った。微笑んでくれた。でも、すぐにまた逸らされてしまう。すでに彼の白い頬は赤く染まっていた。引き締まったラインが美しい首までもが、じわじわと色づき始めている。

「えーっと、さ……」

 知りたい気持ちが勝っている俺の気持ちは前のめりだったが、胸の内を話す側の先輩としては言い辛いのだろう。いつになく言い淀んでいる。

 長い指で頭をわしゃわしゃかき混ぜながら口を開いては閉じるという、何度目かの逡巡の後。気合を入れるかのように深呼吸をし「よしっ」と声を上げた。

「あの時オレが断って、帰っちゃったから……だよね? だから、そんな勘違いさせちゃったんでしょ? シュンちゃんは、勇気を出して誘ってくれたのにさ……」

「はい……先輩は繊細だから、そういうことはしたくないのかなって……だから引かれちゃったかなって思ってました……俺の下心が見抜かれちゃったんだって」

「繊細……オレが……?」

 よっぽど意外だったんだろうか。細い顎に指を当て、不思議そうにしている彼の眉間には深いシワが刻まれてしまっている。

 先輩が考える人になりかけていたのもつかの間、弾かれたように顔を上げた。カーペットに投げ出されていた俺の手を取り握り締めた。

「って、ちょっと待って! し、下心って……じゃあさ、やっぱりあの時に、もう覚悟してくれてたの? 思ってくれてたの? オレと……そういうこと、したいって」

「は、はい……一緒にご飯を食べて、そのまま泊まっていってくれないかなって……その時に、その……そういう雰囲気にならないかなって……期待し、て」

 顔の中心へと熱が集まっていくにつれ、声がどんどん萎んでいってしまう。言い終わるまで先輩の顔を見つめ続けることは出来なかった。

 顔ごと背けてしまっていると、顎を掴まれた。長い指先に促されて前を向けば、もう鼻先に柔らかい微笑みが。

「あっ、先輩……ん、ふ……」

 期待が滲んでいた俺の声がくぐもっていく。何度か重ねてもらえてから、触れ合っている唇がそっと離れていった。

「……ゴメンね、我慢してたんだ……シュンちゃんに嫌われたくなかったから……」

「へ? 何で俺が先輩のことを…………あー……」

 今度は俺が自己完結する番だった。要するに俺達は似た者同士だったって訳で。

「俺とおんなじようなこと、考えてたんですね……引かれちゃわないかって……」

「はい、考えてました……」

 先輩がスッと上体を起こしてから、姿勢を正して小さく頭を下げる。一気に笑いが込み上げてきてしまった。

 何だか無性におかしくて仕方がなかったのだ。たった今判明した、勝手に空回っていただけという事実に、彼の畏まったような言動が相まって。

「ははっ」

「フフっ」

 俺が吹き出したのに釣られたように先輩が笑い出す。軽くのしかかられて、抱き締められて、ますます笑いが加速していく。じゃれ合うように俺達はカーペットの上で笑い転げていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

処理中です...