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細マッチョな先輩と恋人同士になった件(ソレイユルート)
どこまでも優しい俺の友達
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まだ、目に焼き付いたように離れない。昨日の先輩の表情が。困らせてしまったってのに、俺を気づかってくれていた微笑みが。
「うぅ……ソレイユ先輩に……引かれちゃったかも……」
情けなくテーブルに突っ伏してしまっている俺の頭を、小さな手がそっと撫でてくれる。相変わらずライは優しい。
ソレイユ先輩とのことで相談に乗って欲しい、と連絡を入れたら、すぐに「いいよ!」と返事を返してくれたこともだけど「今、部屋に居るけれど、来る?」と招いてまでくれたのだから。
秒針の音が聞こえるほど静かな室内に、風鈴のような軽やかな音が鳴った。続けて泡の弾ける音。背中からきのこが生えてきそうなくらいに、ジメジメしてしまっている俺とは正反対の爽やかな音。
どうやらグラスの中で溶けた氷が奏でたらしい。ライが入れてくれたのに、ずっと放置してしまっていた炭酸水。汗をかいたグラスを満たす焦げ茶色のジュースがシュワシュワと泡を弾けさせている。
向かい合わせにテーブルを挟んでいるライが、励ますようにポン、ポン、と撫でてくれる手は止めずに遠慮がちに尋ねてきた。
「……ねぇ、シュン……何かさ、直接そういうこと……先輩に言われたり、したの?」
「……言われては、ない……けど……」
言われた方が、まだマシ……だったのかな。
部屋まで送ってくれる前の出来事が……キスしてくれて、物語の王子様みたく抱き上げてくれたのが、まるで俺にとって都合の良い夢だったかのよう。送り終えた途端に、背を向けられてしまったのだから。そそくさと帰られてしまったのだから。
でも、ハッキリ言われたら言われたで凹むよなぁ……
また、あの微笑みが浮かぶ。柔らかなカーブを描いている眉を下げて「ゴメンね……」と。想像しただけで、目の前がじわりとボヤけてしまっていた。
「シュン……大丈夫?」
「あ、ああ……ごめん……大丈夫、大丈夫だよ……」
慌てて目元を拭った俺に、ライは何か言いたそうな顔をしていた。けれども、言わずにいてくれた。俺が落ち着くまで、また話せるようになれるまで、待っててくれたんだ。
「その、さ……まだ一緒に居たいって、部屋に誘ったら……丁重にお断りされちゃったんだ……がっついてるって思われちゃったよね、やっぱり……」
「……シュンのこと、大事にしたいだけじゃない?」
「だったら、良いけど……でも、先輩、鋭いし……俺の下心読まれたのかも……」
「だとしても、問題ないんじゃない? 好きな人から求められるって、嬉しいことだと僕は思うよ」
ゆったりと静かな口調で問いかけてくるライの声は優しくて、そうだったら良いなと、そうかもしれないと、思いたくなる。
けれども過ってしまった。昨日の、有無を言わせないような先輩の微笑みが。
「……ありがとう……でも、先輩……結構繊細な人だから、あんまりそういうことはしたくないのかも……」
静まり返った空気が重たくなった。
そう感じていたのは俺だけだったらしい。でも、でも、と後ろを向いてばかりの俺に愛想を尽かすことなく、ライは頭を撫でてくれた。変わらず優しい声で励ましてくれたんだ。
「……そんなに心配しなくても大丈夫だと思うけどなぁ……ねぇ、シュン何か鳴ってない?」
ライに言われて初めて気がついた。ポケットから端末を取り出すと着信を知らせるランプが点滅していた。
「うぅ……ソレイユ先輩に……引かれちゃったかも……」
情けなくテーブルに突っ伏してしまっている俺の頭を、小さな手がそっと撫でてくれる。相変わらずライは優しい。
ソレイユ先輩とのことで相談に乗って欲しい、と連絡を入れたら、すぐに「いいよ!」と返事を返してくれたこともだけど「今、部屋に居るけれど、来る?」と招いてまでくれたのだから。
秒針の音が聞こえるほど静かな室内に、風鈴のような軽やかな音が鳴った。続けて泡の弾ける音。背中からきのこが生えてきそうなくらいに、ジメジメしてしまっている俺とは正反対の爽やかな音。
どうやらグラスの中で溶けた氷が奏でたらしい。ライが入れてくれたのに、ずっと放置してしまっていた炭酸水。汗をかいたグラスを満たす焦げ茶色のジュースがシュワシュワと泡を弾けさせている。
向かい合わせにテーブルを挟んでいるライが、励ますようにポン、ポン、と撫でてくれる手は止めずに遠慮がちに尋ねてきた。
「……ねぇ、シュン……何かさ、直接そういうこと……先輩に言われたり、したの?」
「……言われては、ない……けど……」
言われた方が、まだマシ……だったのかな。
部屋まで送ってくれる前の出来事が……キスしてくれて、物語の王子様みたく抱き上げてくれたのが、まるで俺にとって都合の良い夢だったかのよう。送り終えた途端に、背を向けられてしまったのだから。そそくさと帰られてしまったのだから。
でも、ハッキリ言われたら言われたで凹むよなぁ……
また、あの微笑みが浮かぶ。柔らかなカーブを描いている眉を下げて「ゴメンね……」と。想像しただけで、目の前がじわりとボヤけてしまっていた。
「シュン……大丈夫?」
「あ、ああ……ごめん……大丈夫、大丈夫だよ……」
慌てて目元を拭った俺に、ライは何か言いたそうな顔をしていた。けれども、言わずにいてくれた。俺が落ち着くまで、また話せるようになれるまで、待っててくれたんだ。
「その、さ……まだ一緒に居たいって、部屋に誘ったら……丁重にお断りされちゃったんだ……がっついてるって思われちゃったよね、やっぱり……」
「……シュンのこと、大事にしたいだけじゃない?」
「だったら、良いけど……でも、先輩、鋭いし……俺の下心読まれたのかも……」
「だとしても、問題ないんじゃない? 好きな人から求められるって、嬉しいことだと僕は思うよ」
ゆったりと静かな口調で問いかけてくるライの声は優しくて、そうだったら良いなと、そうかもしれないと、思いたくなる。
けれども過ってしまった。昨日の、有無を言わせないような先輩の微笑みが。
「……ありがとう……でも、先輩……結構繊細な人だから、あんまりそういうことはしたくないのかも……」
静まり返った空気が重たくなった。
そう感じていたのは俺だけだったらしい。でも、でも、と後ろを向いてばかりの俺に愛想を尽かすことなく、ライは頭を撫でてくれた。変わらず優しい声で励ましてくれたんだ。
「……そんなに心配しなくても大丈夫だと思うけどなぁ……ねぇ、シュン何か鳴ってない?」
ライに言われて初めて気がついた。ポケットから端末を取り出すと着信を知らせるランプが点滅していた。
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