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細マッチョな先輩と恋人同士になった件(ソレイユルート)

とある恋の決着

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 ライと別れてから先輩の様子がおかしい。浮かない顔で黙りこくってしまっている。

 行動もだ。てっきり俺は、このまま上の階にある俺の部屋へと場所を移すのかと。しかし先輩は、俺の手を引きながら寮を後にしているのだ。

 何やら深刻そうな様子に、俺は何も言えずにいた。ただ黙々と歩んでいく彼に連れられるがまま、足を進めていた。

 険しそうに細められ、どこか遠くを見つめている眼差しが、ようやく俺を見てくれた。固く引き結ばれていた唇が僅かに綻んでいく。

「……シュンちゃん」

「……はい」

 尋ねてきた声は小さかったけれども、芯のある声だった。

「……オレも、報告したいやつがいるんだけど、いい?」

 すかさず頷くと、先輩は「ありがとう」と微笑んでから再び前を向いた。目指している方向から察するに学園、だろうか。この時間まで残っているとなると、先輩が報告したい相手は何らかの部に属している可能性が高いけれど。

 そこまで考えて、思い至ってしまった。というより、彼としか思えない。だって、俺が知る限り、ソレイユ先輩にとって一番に報告したいほどの大事な人って。

 駆け出し始めた鼓動は、全身に響くほど。繋いだ手から、確実に伝わってしまっていそうだ。

 俺を導く長い足に迷いはない。正門を抜け、一直線に練習場へと歩いていく。すでに人がまばらなそこに、静かに佇んでいる人影が一つ。軍服姿のがたいのいい青年が、夕焼け色に染まりながらただ黙々と剣を振るっていた。

 俺達に気付いたんだろう。練習用の剣を慣れた手つきで腰の鞘に納めると、骨ばった手で額の汗を拭い、爽やかな笑みを浮かべた。

「どうしたんだソル? 今日は大事な用事があったんじゃ……」

 青年、サルファー先輩の黄色い瞳が、俺を捉えた。はたと見開いた眼差しが、ゆっくりと下りていく。

 俺達の手元を見つめて、また俺の顔を、ソレイユ先輩の顔を見てから、彼は納得したように小さく頷き、口端を僅かに持ち上げた。寂しそうな微笑みだった。

「そうか……シュンは、ソルを選んだんだな……ソル、貴様……覚悟は出来ているんだろうな?」

 地を這うような声と共に向けられた眼差しは、彼の剣筋のように鋭かった。見つめられていない俺でも、身体が強張ってしまったのに、ソレイユ先輩は真っ向から受け止めていた。繋がれた手に力が込められる。

「ああ、オレはシュンちゃんを……シュンを愛してる。この気持ちは誰にも負けない。絶対に、シュンを離さない」

 こみ上げてきた熱が胸を満たしていく。喉が震えて言葉が出ない。声にならない。

 せめて応えようと温かい手を握り返した。柔らかな眼差しが俺に微笑みかけてくれる。また握り返してくれる。

「そうか……それが、貴様の答えか」

 腕を組んだまま、先輩の宣言に耳を傾けていたサルファー先輩が大股で俺達に迫ってきた。先輩の目前で、ゆらりと拳を振り上げた。

 咄嗟に手を伸ばしていた俺の悪い想像は外れた。握られた拳が振るわれることはなく、ソレイユ先輩の胸にとんっと優しく置かれた。

「あ、あれ? 殴んないの?」

「む? 何で俺が貴様を殴るんだ?」

 目を白黒させているソレイユ先輩に、サルファー先輩が太い首を傾げた。

 どうやら、ソレイユ先輩も勘違いしていたらしい。しかも、受け止めるつもりだったみたい。気持ちは分かるけど。友達の話という体で、大まかな事情を知ってしまっている俺は。

「いやいや、だって俺……サルフの事応援するっていったのに……なのに、シュンちゃんのこと」

「だが、好きになったんだろう? 本気で」

「うん、大好き……愛してる」

 サルファー先輩の問いかけに、先輩は間髪入れずに俺への想いを紡いでくれた。もう供給過多もいいとこだ。ひたむきな言葉を捧げられ続けた俺の心臓は壊れそうなくらいに暴れ狂ってしまっている。

 顔にも出てしまっていたんだろう。俺を見つめるサルファー先輩の瞳が楽しそうに細められている。ソレイユ先輩に向けて、白い歯を見せニカッと笑った。

「だったら、迷うことは何もないだろう。絶対にシュンを幸せにしろ。もし泣かせてみろ、貴様のことを……」

「ぶっ飛ばす?」

「ああ、分かっているならそれでいい。おめでとうソル」

「ありがとう……サルフ」

 笑い合う二人の拳が軽く合わせられる。サルファー先輩は「ソルのこと、頼んだぞ」と俺の頭をひと撫でしてから俺達に背を向け、部室の方へと歩いていった。
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