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細マッチョな先輩と恋人同士になった件(ソレイユルート)
嬉しい勘違い
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嬉しいけれども、落ち着かない。
肩を抱き寄せてもらえていたさっきより、密着してしまっている温もり。包むように抱き締めてくれている彼から香る、ほのかに甘くて、けれども爽やかないい匂い。
ソレイユ先輩は、俺を軽々と膝の上へと乗せてくれている。横抱きの形で腰を支えてくれながら、空いている手で頭や頬を撫でてくれている。それはそれはご機嫌そうに。小さく鼻唄を歌いながら。
……過剰供給がすぎるし、可愛すぎるし……一体俺をどうするつもりなんですか?
とっくに伝わってしまっているであろう心音ははしゃぎっぱなし。壊れそうなくらいに高鳴ってしまっている。要因の一つは言うまでもない。先輩からのスキンシップだ。
他にもあるのかって? あるんだよなぁ、これが。誰かに見られちゃうんじゃないかっていう緊張が。
先輩から触ってもらえるのは凄く嬉しい。しかし、いくら人通りが少ないとはいえ、ここは外だ。それも、寮に住んでいる人達にとっては、通る可能性の高い道なのだ。
万が一にでも誰かに見られてしまったら恥ずかしい。しかも知り合いとかだったら、今後どんな顔をして会えば。だから、どうせイチャつくんなら自室とか、確実に二人きりになれる所がいいんだけれど。
とはいえ、楽しそうな先輩の水を差す訳には。そもそも、俺自身、先輩とのひと時を出来るだけ長く堪能したいし。
そういう訳で、今の俺にはただただ願うことしか出来なかったんだ。どうか、誰も通りませんようにと。
時々、通りの先へと目を向けながらも、俺の目はついつい楽しげな横顔に惹かれてしまっていたらしい。微笑む瞳がこちらを向いた。気づかれてしまった。
「ん? どうしたの、シュンちゃん」
「っ……いや、その……」
「あっ、待って」
長い人差し指が俺の唇にちょんと触れる。先輩は、何やら考えるように視線を上へと向けてから、片方の口端を持ち上げた。
「……ふふ、分かったよ」
「えっ」
流石の先輩だ。いつも俺の心を読んでいるかのような言動をするだけあって、今回もバッチリ見通したみたい。
だったら、場所を変えてくれるのかな? 部屋……片付いていた、よな? いや、もしかしたら先輩のお部屋にお邪魔させてもらっちゃったり? どうしよう……まだ心の準備が……
ぐるぐると思考を回している内に、端正な顔が直ぐ側まで近づいてきていた。額を寄せられて、鼻先が当たりそうになってしまう。
「あ……先ぱ」
「遠慮しないで言ってくれればいいのに……まぁ、そういうところも可愛いけどさ」
花が咲くように綻んでいる唇が、ますます笑みを深くする。
夕日のように美しいオレンジ色の瞳。淡い光を帯びた双眸がゆるりと細められていく。見惚れている内に柔らかな感触が、熱い吐息が唇に触れていた。
「ん……は、ぁ……」
まだ触れてもらいたかった。けれども先輩は離れていってしまう。満足そうに微笑みながら、俺の頬を優しく撫でてくれる。
「ふふ、顔真っ赤だね……」
クスクスと笑われても恥ずかしくなかった。それどころか、ずっと気にしていたことまで忘れてしまっていた。周りのことなんて、もう、どうでもよかった。そんなことよりも。
「……ソレイユ、先輩……」
「……どうしたの?」
同じ質問をしてから、先輩は指先で俺の顎裏を擽るように撫で始めた。
「あの……その……」
「……もう一回、して欲しい?」
「は、はい……欲しい、です……き、キスして下さ、んっ」
顎を持ち上げられて、また重ねてもらえた。髪を梳くように撫でてくれながら、何度も。
無意識の内に自分からも口を押し付けていた。彼の首に腕を絡めて抱きついてしまっていた。嬉しい勘違いから始まった触れ合いに溺れてしまっていたんだ。
肩を抱き寄せてもらえていたさっきより、密着してしまっている温もり。包むように抱き締めてくれている彼から香る、ほのかに甘くて、けれども爽やかないい匂い。
ソレイユ先輩は、俺を軽々と膝の上へと乗せてくれている。横抱きの形で腰を支えてくれながら、空いている手で頭や頬を撫でてくれている。それはそれはご機嫌そうに。小さく鼻唄を歌いながら。
……過剰供給がすぎるし、可愛すぎるし……一体俺をどうするつもりなんですか?
とっくに伝わってしまっているであろう心音ははしゃぎっぱなし。壊れそうなくらいに高鳴ってしまっている。要因の一つは言うまでもない。先輩からのスキンシップだ。
他にもあるのかって? あるんだよなぁ、これが。誰かに見られちゃうんじゃないかっていう緊張が。
先輩から触ってもらえるのは凄く嬉しい。しかし、いくら人通りが少ないとはいえ、ここは外だ。それも、寮に住んでいる人達にとっては、通る可能性の高い道なのだ。
万が一にでも誰かに見られてしまったら恥ずかしい。しかも知り合いとかだったら、今後どんな顔をして会えば。だから、どうせイチャつくんなら自室とか、確実に二人きりになれる所がいいんだけれど。
とはいえ、楽しそうな先輩の水を差す訳には。そもそも、俺自身、先輩とのひと時を出来るだけ長く堪能したいし。
そういう訳で、今の俺にはただただ願うことしか出来なかったんだ。どうか、誰も通りませんようにと。
時々、通りの先へと目を向けながらも、俺の目はついつい楽しげな横顔に惹かれてしまっていたらしい。微笑む瞳がこちらを向いた。気づかれてしまった。
「ん? どうしたの、シュンちゃん」
「っ……いや、その……」
「あっ、待って」
長い人差し指が俺の唇にちょんと触れる。先輩は、何やら考えるように視線を上へと向けてから、片方の口端を持ち上げた。
「……ふふ、分かったよ」
「えっ」
流石の先輩だ。いつも俺の心を読んでいるかのような言動をするだけあって、今回もバッチリ見通したみたい。
だったら、場所を変えてくれるのかな? 部屋……片付いていた、よな? いや、もしかしたら先輩のお部屋にお邪魔させてもらっちゃったり? どうしよう……まだ心の準備が……
ぐるぐると思考を回している内に、端正な顔が直ぐ側まで近づいてきていた。額を寄せられて、鼻先が当たりそうになってしまう。
「あ……先ぱ」
「遠慮しないで言ってくれればいいのに……まぁ、そういうところも可愛いけどさ」
花が咲くように綻んでいる唇が、ますます笑みを深くする。
夕日のように美しいオレンジ色の瞳。淡い光を帯びた双眸がゆるりと細められていく。見惚れている内に柔らかな感触が、熱い吐息が唇に触れていた。
「ん……は、ぁ……」
まだ触れてもらいたかった。けれども先輩は離れていってしまう。満足そうに微笑みながら、俺の頬を優しく撫でてくれる。
「ふふ、顔真っ赤だね……」
クスクスと笑われても恥ずかしくなかった。それどころか、ずっと気にしていたことまで忘れてしまっていた。周りのことなんて、もう、どうでもよかった。そんなことよりも。
「……ソレイユ、先輩……」
「……どうしたの?」
同じ質問をしてから、先輩は指先で俺の顎裏を擽るように撫で始めた。
「あの……その……」
「……もう一回、して欲しい?」
「は、はい……欲しい、です……き、キスして下さ、んっ」
顎を持ち上げられて、また重ねてもらえた。髪を梳くように撫でてくれながら、何度も。
無意識の内に自分からも口を押し付けていた。彼の首に腕を絡めて抱きついてしまっていた。嬉しい勘違いから始まった触れ合いに溺れてしまっていたんだ。
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