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マッチョな先輩と恋人同士になった件(サルファールート)

★ 出来ているから、煽ったんだろう?

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 ほんの少しの間だった。重たい感覚を感じたのは。すぐに塗り替えられてたんだ。それよりも強い感覚に。指の腹で内壁を擦られる悦びに。

「ん、ひっ……あ、あんっ、は、ぁっ……あっ……」

 薄暗い室内に響いているのは、鼻にかかった俺の声。尻の穴から漏れ聞こえ続けている、はしたなく濡れた音。それに混じって、俺を見下ろしている先輩の余裕のなさそうな、唸り声に近い吐息が聞こえている。

 大丈夫だと言ったのだ。来て欲しいと誘ったのだ。だから俺は覚悟を、先輩にだったら強引に身体を暴かれても構わないと思っていたのだけれど。先輩は冷静そのものだった。

 三本の太い指が俺の中を広げている。単純に指と指とを開いて閉じてを繰り返したり。ローションを隅々まで馴染ませるように、中をゆったりかき混ぜり。

 それらは、練習を兼ねていつも行っていた準備。俺が痛い思いをしないようにと、俺を傷つけないようにと、欠かさずにやってくれていた工程。

 なんだ……ちゃんと、とびきり優しくしてくれているじゃないか。なのに、出来ていないだなんてさ。律儀っていうか、自分に厳しいにも程があるっていうか。

 ああ、でも、剣の鍛錬の時もか。一番、自分のことを追い込んでいて。

 過ったのは、真剣な眼差し。いつもは、柔らかく微笑んでいる瞳が、屈託のない輝きを宿した瞳が、研ぎ澄まされた剣先のような鋭さを帯びる瞬間。

 あの輝きを見つめていられるのなら、あの輝きに捉えられるのなら、一太刀浴びせられてしまっても構わないなんて思ってしまう、俺の憧れ。

「シュン……?」

「あ……」

 不思議そうな声に名前を呼ばれて気がついた。自分が軽く上体を起こしていたことに、先輩の目元に触れていたことに。

 一体いつから、どのくらいの間、撫でてしまっていたんだろうか。俺の中を解していた途中の指は引き抜かれていて、代わりに中途半端に起き上がっていた俺の腰を抱き支えてくれている。

「えっと……こ、これは、ですね……」

 なんと言ったらいいのか。行動に出た俺ですら理由が分からないのだ。説明出来る訳が無い。

 強いて言うんだったら、触れたかった……とか?

「ごっ、ごめんなさ」

 気がつけば謝っていて、退けようとしていた手を握られていた。釣られて俯いていた視線を上げれば、かち合ったのは蜂蜜色。優しく微笑んでいるけれども、確かな熱を宿した真っ直ぐな眼差し。

 ああ、やっぱりカッコいいな。

 見惚れている内に、口づけられた。でも、唇同士が軽く触れ合えただけ。すぐに離れていってしまう。繋いでいた手も離されてしまう。

「サルファー先ぱ……」

「覚悟は出来ているんだろう?」

「へ?」

 頬に添えられた手が熱い。甘やかすように撫で始めたその手つきは、いつもと変わらない。でも、真っ直ぐに俺を見つめてくる先輩は、見たことがない顔をしていた。

 優しく微笑んでくれているハズなのに、目の奥が笑っていないというか。でも、怒っているんじゃなくて、もっと別の。

 ……ああ、そうだ。似ているんだ。俺を求めてくれている時の感じと。

「出来ているから、煽ったんだろう?」
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