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マッチョな先輩と恋人同士になった件(サルファールート)
やっぱり先輩には
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広い背中に腕を回して、遠慮なく抱きついた。顔を埋めさせてもらっていた分厚い胸板が、くつくつと揺れ始める。温かい手のひらが俺の頭を優しく撫でてくれる。
「可愛いな……もしかして、乗る前から期待してくれていたのか?」
ぐうの音も出ない。その通りだ。ここなら先輩と二人っきりになれるからって。なんなら、それ以上のことまで俺は。
恥ずかしくて、つい回した腕に力を込めてしまっていた。先輩は、また機嫌が良さそうにくすくすと笑ってから少し低いトーンで告げてきた。
「……俺は、期待していたんだ……ここでなら、君を思う存分抱き締められるんじゃないかって……」
……先輩も? 俺だけじゃなくて?
思いがけない嬉しい告白に、思わず俺は筋肉で盛り上がった胸元から顔を離していた。弾かれるように見上げた先で、気恥ずかしそうに細められた蜂蜜色の瞳とかち合う。
「帰ってからと自分で言っておいてなんだが……我慢出来なくなってしまってな……君が……可愛いことばかり言ってくれるから……」
「お、俺だって……期待して、ました……先輩が……あんなこと言うから……」
「……あんなこと?」
「俺しか、見えてないって……嬉しいこと言うから……俺……」
顔に熱が集まっていくにつれ、声がどんどん萎んでいってしまう。俯いてしまう。
また、目の前にある逞しい胸元へと顔を寄せたくなっていた時、少し硬い指先が顎に触れた。
促されるように上を向かされて、視界が柔らかな笑顔でいっぱいになっていく。
「先ぱ、い……」
やっぱり先輩には、見透かされていたんじゃないか。
やっぱり先輩は、俺の期待に応えてくれるんじゃないか。
慈しむように優しく重ねられた唇に、満たされていく。それだけに離れていってしまうのが寂しくて仕方がない。強請るように名前を呼んでしまっていた。
「ん……ふ、サルファー……」
「シュン……好きだ。愛しているよ……」
もう一度、触れるだけのキスをしてくれてから、筋肉質な腕が俺を抱き締めてくれた。
伝わってくる温もりが、頭を撫でてくれる優しい手つきが、心地いい。見どころであるハズの景色も見ずに、夢中になってしまう。
ふと先輩の手が止まる。切り出してきた声は、少し緊張しているように聞こえた。
「……シュン、君に渡したい物があるんだ」
「……渡したい物、ですか?」
記憶を探るもピンとこず、ついそのまま言葉をなぞって返してしまう。見上げた先輩の顔は、耳まで赤く染まっていた。
さっきまでのスマートさとは打って変わって、先輩の様子はどこかぎこちない。そんな彼がショルダーバッグから取り出したのは、二つの細長いケース。紺色の片方を俺へと差し出してきた。
「……開けてみてくれ」
蓋を開けてみてやっとだった。収まっていたのは黒のスティックネックレス。先週の買い物デートの際に二人で選んだお揃いだ。
黒い長方形にあしらわれた黄色い天然石。先輩の瞳に似ている輝きの上には、ちゃんと俺達の名前が刻まれている。
「可愛いな……もしかして、乗る前から期待してくれていたのか?」
ぐうの音も出ない。その通りだ。ここなら先輩と二人っきりになれるからって。なんなら、それ以上のことまで俺は。
恥ずかしくて、つい回した腕に力を込めてしまっていた。先輩は、また機嫌が良さそうにくすくすと笑ってから少し低いトーンで告げてきた。
「……俺は、期待していたんだ……ここでなら、君を思う存分抱き締められるんじゃないかって……」
……先輩も? 俺だけじゃなくて?
思いがけない嬉しい告白に、思わず俺は筋肉で盛り上がった胸元から顔を離していた。弾かれるように見上げた先で、気恥ずかしそうに細められた蜂蜜色の瞳とかち合う。
「帰ってからと自分で言っておいてなんだが……我慢出来なくなってしまってな……君が……可愛いことばかり言ってくれるから……」
「お、俺だって……期待して、ました……先輩が……あんなこと言うから……」
「……あんなこと?」
「俺しか、見えてないって……嬉しいこと言うから……俺……」
顔に熱が集まっていくにつれ、声がどんどん萎んでいってしまう。俯いてしまう。
また、目の前にある逞しい胸元へと顔を寄せたくなっていた時、少し硬い指先が顎に触れた。
促されるように上を向かされて、視界が柔らかな笑顔でいっぱいになっていく。
「先ぱ、い……」
やっぱり先輩には、見透かされていたんじゃないか。
やっぱり先輩は、俺の期待に応えてくれるんじゃないか。
慈しむように優しく重ねられた唇に、満たされていく。それだけに離れていってしまうのが寂しくて仕方がない。強請るように名前を呼んでしまっていた。
「ん……ふ、サルファー……」
「シュン……好きだ。愛しているよ……」
もう一度、触れるだけのキスをしてくれてから、筋肉質な腕が俺を抱き締めてくれた。
伝わってくる温もりが、頭を撫でてくれる優しい手つきが、心地いい。見どころであるハズの景色も見ずに、夢中になってしまう。
ふと先輩の手が止まる。切り出してきた声は、少し緊張しているように聞こえた。
「……シュン、君に渡したい物があるんだ」
「……渡したい物、ですか?」
記憶を探るもピンとこず、ついそのまま言葉をなぞって返してしまう。見上げた先輩の顔は、耳まで赤く染まっていた。
さっきまでのスマートさとは打って変わって、先輩の様子はどこかぎこちない。そんな彼がショルダーバッグから取り出したのは、二つの細長いケース。紺色の片方を俺へと差し出してきた。
「……開けてみてくれ」
蓋を開けてみてやっとだった。収まっていたのは黒のスティックネックレス。先週の買い物デートの際に二人で選んだお揃いだ。
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