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マッチョな先輩と恋人同士になった件(サルファールート)
どうしても、今、言葉が欲しくて
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少しお昼を過ぎていたからだろうか。園内の賑わいに比べて店内はお客さんが少ない。待つことなく席に座れそうだ。運が良い。
店名がハッピーハートカフェなだけあって、外観がミニチュアハウスの様に可愛らしかったが、内装もなかなかにファンシーだ。店内のいたるところにハートやウサギがモチーフの置物が飾られている。
食事の時でも楽しめるようにと、徹底している雰囲気作りには尊敬の念しかないんだけれど……可愛いしかない空間に、男の俺が踏み入るのは。先輩と一緒じゃなかったら、入る勇気なかったかも。いくらテーマパーク内のレストランとはいえ。
件の先輩はといえば、キラキラとした目で興味津々に店内を見回しながら、俺の手を引いてくれている。
頼もしい。それから絵になる。長身でマッチョな先輩とハートとウサギにまみれたファンシーな空間。可愛いにカッコ可愛いを足しているのだ、最強に決まっている。まぁ先輩ならば、どんな場所だって似合うだろうけど。
素晴らしいコラボレーションに見惚れている内に、ひらひらたっぷりの衣装を身に着けた店員さんに案内されて奥の席へ。
当たり前のように先輩は俺にソファーを譲ってくれて、背もたれがハートの形をした椅子に腰を下ろした。
店員さんが満点のスマイルと共にお水を置いてくれてから頭を下げて戻っていく。運ばれてきたグラスも上から眺めるとハート型。その可愛らしさにまた先輩は、興味深げに持ち上げ眺めている。
先輩とはテーブルを挟んでいるだけ。手を伸ばせば、すぐにでも届く距離だ。でも。
「……先輩、隣に来てくれませんか? 一緒に座りたいです……」
「あ……ああっ、そうだな、そうしようっ」
驚いたような表情に笑顔が戻ってホッとする。
彼女達からもらったチケットを見たからだろうか。少しでも先輩にくっついていたい。安心したい。
隣に座ってくれた先輩の手を取り繋ぐと、すぐに握り返してくれた。喜びが滲んだ小さな笑い声が頭の上から降ってくる。釣られて顔を上げると、先輩はどこか申し訳無さそうに片方の眉を下げた。
「すまない、君から繋いでくれたのが嬉しくてな……気を悪くしただろうか?」
「いえ……」
安心したように先輩が口元を綻ばせる。重なった手のひらから伝わってくる温もりが、心の中に滲んだモヤモヤをはらってくれる。
とはいえ、欲ってのは尽きないもので。
「サルファー先輩は……俺のもの、ですよね?」
聞きたくなってしまった。言葉が欲しくなってしまった。あの時も、彼女達に誘われていた時も、先輩は十分に示してくれたのに。
我儘な自分にうんざりする。再び滲み出てきた暗いもの。それすらも、容易く吹き飛ばされてしまった。
「あぁ、そうだ。俺は君だけのものだし、君も俺だけのものだ、絶対に誰にも渡さない」
真っ直ぐな眼差しと力強い言葉。高鳴るそれらによって、喜びがあふれてしまったんだろう。こんな質問をした理由を尋ねられる前に白状していた。
「写真を取ろうとした時、先輩がナンパされそうになったでしょう? それで俺……あの人達に取られちゃうって思って、俺の先輩なのに……だから」
「そうか、嫉妬してくれていたんだな……」
大きな手に肩を掴まれたかと思えば抱き寄せられていた。先輩が軽く背を屈めて、俺の耳元に口を寄せてくる。
「ここが君の部屋なら……今頃押し倒しているところだ」
囁かれたトーンの低さ、うっとりとした声色。それだけでも俺の背筋には、淡い感覚が走ってしまったってのに。
絡めた指を、触れるか触れないかの加減で擦り寄せてくるもんだから、大げさなくらいに肩を跳ねさせてしまっていた。
「ちょっ、へ、変なこと……言わないで下さいよ……誰かに聞かれたら、どうするんですか?」
「はは、俺は全く構わないんだが……これ以上は君に嫌われるかもしれないから止めておこう」
「もう……俺が先輩のこと、嫌いになる訳がないじゃないですか」
「そうか……安心したよ」
ことさら嬉しそうに微笑まれ、心臓がますます煩くなってしまう。
……これ以上はマズい。もっとくっつきたくなってしまう。席は離れているとはいえ、お客さんが居るんだぞ。店員さんだって。兎にも角にも、この甘くて妖しい空気を変えなければ。
「……何、頼みます? 俺、お腹すきました」
慌ててメニューを取り、熱くなる顔を隠すように眺めていると先輩が横から覗き込んできた。上機嫌な様子の先輩に、また小さく笑われてしまった。
店名がハッピーハートカフェなだけあって、外観がミニチュアハウスの様に可愛らしかったが、内装もなかなかにファンシーだ。店内のいたるところにハートやウサギがモチーフの置物が飾られている。
食事の時でも楽しめるようにと、徹底している雰囲気作りには尊敬の念しかないんだけれど……可愛いしかない空間に、男の俺が踏み入るのは。先輩と一緒じゃなかったら、入る勇気なかったかも。いくらテーマパーク内のレストランとはいえ。
件の先輩はといえば、キラキラとした目で興味津々に店内を見回しながら、俺の手を引いてくれている。
頼もしい。それから絵になる。長身でマッチョな先輩とハートとウサギにまみれたファンシーな空間。可愛いにカッコ可愛いを足しているのだ、最強に決まっている。まぁ先輩ならば、どんな場所だって似合うだろうけど。
素晴らしいコラボレーションに見惚れている内に、ひらひらたっぷりの衣装を身に着けた店員さんに案内されて奥の席へ。
当たり前のように先輩は俺にソファーを譲ってくれて、背もたれがハートの形をした椅子に腰を下ろした。
店員さんが満点のスマイルと共にお水を置いてくれてから頭を下げて戻っていく。運ばれてきたグラスも上から眺めるとハート型。その可愛らしさにまた先輩は、興味深げに持ち上げ眺めている。
先輩とはテーブルを挟んでいるだけ。手を伸ばせば、すぐにでも届く距離だ。でも。
「……先輩、隣に来てくれませんか? 一緒に座りたいです……」
「あ……ああっ、そうだな、そうしようっ」
驚いたような表情に笑顔が戻ってホッとする。
彼女達からもらったチケットを見たからだろうか。少しでも先輩にくっついていたい。安心したい。
隣に座ってくれた先輩の手を取り繋ぐと、すぐに握り返してくれた。喜びが滲んだ小さな笑い声が頭の上から降ってくる。釣られて顔を上げると、先輩はどこか申し訳無さそうに片方の眉を下げた。
「すまない、君から繋いでくれたのが嬉しくてな……気を悪くしただろうか?」
「いえ……」
安心したように先輩が口元を綻ばせる。重なった手のひらから伝わってくる温もりが、心の中に滲んだモヤモヤをはらってくれる。
とはいえ、欲ってのは尽きないもので。
「サルファー先輩は……俺のもの、ですよね?」
聞きたくなってしまった。言葉が欲しくなってしまった。あの時も、彼女達に誘われていた時も、先輩は十分に示してくれたのに。
我儘な自分にうんざりする。再び滲み出てきた暗いもの。それすらも、容易く吹き飛ばされてしまった。
「あぁ、そうだ。俺は君だけのものだし、君も俺だけのものだ、絶対に誰にも渡さない」
真っ直ぐな眼差しと力強い言葉。高鳴るそれらによって、喜びがあふれてしまったんだろう。こんな質問をした理由を尋ねられる前に白状していた。
「写真を取ろうとした時、先輩がナンパされそうになったでしょう? それで俺……あの人達に取られちゃうって思って、俺の先輩なのに……だから」
「そうか、嫉妬してくれていたんだな……」
大きな手に肩を掴まれたかと思えば抱き寄せられていた。先輩が軽く背を屈めて、俺の耳元に口を寄せてくる。
「ここが君の部屋なら……今頃押し倒しているところだ」
囁かれたトーンの低さ、うっとりとした声色。それだけでも俺の背筋には、淡い感覚が走ってしまったってのに。
絡めた指を、触れるか触れないかの加減で擦り寄せてくるもんだから、大げさなくらいに肩を跳ねさせてしまっていた。
「ちょっ、へ、変なこと……言わないで下さいよ……誰かに聞かれたら、どうするんですか?」
「はは、俺は全く構わないんだが……これ以上は君に嫌われるかもしれないから止めておこう」
「もう……俺が先輩のこと、嫌いになる訳がないじゃないですか」
「そうか……安心したよ」
ことさら嬉しそうに微笑まれ、心臓がますます煩くなってしまう。
……これ以上はマズい。もっとくっつきたくなってしまう。席は離れているとはいえ、お客さんが居るんだぞ。店員さんだって。兎にも角にも、この甘くて妖しい空気を変えなければ。
「……何、頼みます? 俺、お腹すきました」
慌ててメニューを取り、熱くなる顔を隠すように眺めていると先輩が横から覗き込んできた。上機嫌な様子の先輩に、また小さく笑われてしまった。
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