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マッチョな先輩と恋人同士になった件(サルファールート)
貴方の笑顔が見られるならば
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デジャヴだ。覗き込むように俺を見つめる、心配そうな眼差し。申し訳無さそうに下がった凛々しい眉。
そして、逞しい長身へとぐったり寄りかかってしまっている俺。つい、さっきの状態にすっかり戻ってしまっていた。
「すまない……どのくらいまで速く回るのかと、つい試したくなってしまって」
「い、いえ……先輩が、楽しそうで……なにより、でした……それに、俺も……気になっちゃったんで……」
最初は和やかだった。聞いたことのあるクラシックをポップな感じにアレンジした曲と共に、ゆったりくるくる回り出したカップ達。
その内の一つにて、大人が四人は楽に座れそうな席にて、ここぞとばかりに俺は先輩にくっつこうとした。
座った途端に距離を詰めて肩を寄せ、軽く体重を預けた俺の意図が、先輩にも伝わったらしい。お願いをする前に手を繋いでくれて、肩を抱き寄せてくれてんだ。
そんなもんだから、俺は舞い上がっていた。てっきり時間いっぱいまで身を寄せ合って、見つめ合って、緩やかなカップの動きに任せるもんだと。
「……なぁ、シュン。せっかくだから、少し一緒に回してみないか?」
始まりは、純粋な提案だった。
確かに、回すのがこのアトラクションの醍醐味だよな。そう思い、そうですねと。一緒に回しましょうと答えてから、そんなに時間はかからなかった。
「はっはっは! 凄いなっ! どんどん速くなっていくぞ!」
「せ、せんぱっ……ちょっと、緩めません?」
「もうちょっとだけ、駄目か? 限界を知りたいんだ」
好きな人からのお強請り。それだけでも俺が首を縦に振るには十分だった。なのに、プラスで少し寂しそうな潤んだ眼差しを向けられてしまえば、もう。
「……とことん、やって……みましょうか……限界まで……」
「ありがとう、シュン! よしっ、いくぞ!!」
その結果が、ハイテンションでお目々キラキラ、血色抜群な先輩と、全身ぐわんぐわんになった俺という訳で。
どうやら先輩は、絶叫系が大層お好きらしい。速ければ速いほど、回れば回るほど楽しさが増すタイプのようだ。
さぞかし異様な光景だっただろう。他のお客さん達のカップがゆったり回る中、俺達のカップだけが猛スピードで回転し続けていたさまは。
まさか、コーヒーカップであそこまでの速さを出せるなんてな。回転も相まって、体感速度が増していたのかもだけど。
逞しい温もりに支えてもらいながら、のんびり回り続けているカップ達を遠目に眺めていると、小さや呟きが聞こえてきた。
「二人で園内の乗り物を全制覇しようかと思っていたんだが……絶叫マシン系は除外するか……」
独り言のつもりだったんだろう。先輩は、何事もなかったかのように微笑みながら尋ねてきた。
「なぁ、シュン。少し休んでから、君が行きたがっていたホラーハウスに行ってみないか?」
でも、俺は聞いてしまった。それに見てしまった。寂しそうな横顔を。
「……他の乗り物を制覇してからにしません? 俺も、園内の乗り物全部、先輩と一緒に楽しみたいです」
細められていた瞳が丸くなる。聞かれたことに気づいたんだろう。何だか気まずそう。太い指先で、ほんのり染まった頬をかいている。
「シュン……すまない、その……我儘を言ってしまって……」
「我儘の内に入りませんよ。それに俺もしたいんです。先輩と」
伏せられていた瞳がこちらを向いていくれる。遠慮がちに見つめてはいるものの、少しだけ期待が宿っている様に見えた。
「……だが、まだ結構怖いのが残っているぞ?」
「先輩と一緒なら大丈夫です! それに先輩が好きな物は、俺も好きになりたいですから」
鈍く曇っていた空が、晴れ渡っていくようだった。
「シュン……ありがとう。一緒に楽しもうな!」
太陽のような眩しい笑顔に、早くも胸の内が温かく満たされていく。
この笑顔を守る為なら、絶叫マシンくらいいくらでも乗ってやる! そう決心していたのだが。
そして、逞しい長身へとぐったり寄りかかってしまっている俺。つい、さっきの状態にすっかり戻ってしまっていた。
「すまない……どのくらいまで速く回るのかと、つい試したくなってしまって」
「い、いえ……先輩が、楽しそうで……なにより、でした……それに、俺も……気になっちゃったんで……」
最初は和やかだった。聞いたことのあるクラシックをポップな感じにアレンジした曲と共に、ゆったりくるくる回り出したカップ達。
その内の一つにて、大人が四人は楽に座れそうな席にて、ここぞとばかりに俺は先輩にくっつこうとした。
座った途端に距離を詰めて肩を寄せ、軽く体重を預けた俺の意図が、先輩にも伝わったらしい。お願いをする前に手を繋いでくれて、肩を抱き寄せてくれてんだ。
そんなもんだから、俺は舞い上がっていた。てっきり時間いっぱいまで身を寄せ合って、見つめ合って、緩やかなカップの動きに任せるもんだと。
「……なぁ、シュン。せっかくだから、少し一緒に回してみないか?」
始まりは、純粋な提案だった。
確かに、回すのがこのアトラクションの醍醐味だよな。そう思い、そうですねと。一緒に回しましょうと答えてから、そんなに時間はかからなかった。
「はっはっは! 凄いなっ! どんどん速くなっていくぞ!」
「せ、せんぱっ……ちょっと、緩めません?」
「もうちょっとだけ、駄目か? 限界を知りたいんだ」
好きな人からのお強請り。それだけでも俺が首を縦に振るには十分だった。なのに、プラスで少し寂しそうな潤んだ眼差しを向けられてしまえば、もう。
「……とことん、やって……みましょうか……限界まで……」
「ありがとう、シュン! よしっ、いくぞ!!」
その結果が、ハイテンションでお目々キラキラ、血色抜群な先輩と、全身ぐわんぐわんになった俺という訳で。
どうやら先輩は、絶叫系が大層お好きらしい。速ければ速いほど、回れば回るほど楽しさが増すタイプのようだ。
さぞかし異様な光景だっただろう。他のお客さん達のカップがゆったり回る中、俺達のカップだけが猛スピードで回転し続けていたさまは。
まさか、コーヒーカップであそこまでの速さを出せるなんてな。回転も相まって、体感速度が増していたのかもだけど。
逞しい温もりに支えてもらいながら、のんびり回り続けているカップ達を遠目に眺めていると、小さや呟きが聞こえてきた。
「二人で園内の乗り物を全制覇しようかと思っていたんだが……絶叫マシン系は除外するか……」
独り言のつもりだったんだろう。先輩は、何事もなかったかのように微笑みながら尋ねてきた。
「なぁ、シュン。少し休んでから、君が行きたがっていたホラーハウスに行ってみないか?」
でも、俺は聞いてしまった。それに見てしまった。寂しそうな横顔を。
「……他の乗り物を制覇してからにしません? 俺も、園内の乗り物全部、先輩と一緒に楽しみたいです」
細められていた瞳が丸くなる。聞かれたことに気づいたんだろう。何だか気まずそう。太い指先で、ほんのり染まった頬をかいている。
「シュン……すまない、その……我儘を言ってしまって……」
「我儘の内に入りませんよ。それに俺もしたいんです。先輩と」
伏せられていた瞳がこちらを向いていくれる。遠慮がちに見つめてはいるものの、少しだけ期待が宿っている様に見えた。
「……だが、まだ結構怖いのが残っているぞ?」
「先輩と一緒なら大丈夫です! それに先輩が好きな物は、俺も好きになりたいですから」
鈍く曇っていた空が、晴れ渡っていくようだった。
「シュン……ありがとう。一緒に楽しもうな!」
太陽のような眩しい笑顔に、早くも胸の内が温かく満たされていく。
この笑顔を守る為なら、絶叫マシンくらいいくらでも乗ってやる! そう決心していたのだが。
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