気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件~恋人ルート~

白井のわ

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マッチョな先輩と恋人同士になった件(サルファールート)

俺の想像よりも遥かに情熱的な彼

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 名残は惜しいけれども、いつまでも抱き締め合っている訳にはいかない。デートなんだから。遊園地なんだから。先輩と一緒に目玉であるアトラクション達を楽しまなければ、来た意味がないからな。

「とりあえず、ジェットコースターから行ってみます? すぐ目の前ですし」

「そうだな……よし行こうか」

 差し出された大きな手のひらに手を重ねつつも、有言実行。俺が歩ける範囲で先輩の逞しい身体にくっついてみる。

 少し驚いたように先輩は、金糸のようにキレイな睫毛を瞬かせた。けれどもすぐに擽ったそうな笑みをこぼしながら、俺の腰を支えるように抱き寄せてくれる。

「なんだか、二人三脚みたいだな」

「……なんか、台無しになってません? せっかく勇気出したのに」

「す、済まないっ、この喜びを表現するうえでいい言い方が浮かばなくてだな……」

「大丈夫ですよ、ちゃんと伝わってます……」

 少し見上げた先にある、嬉しさが滲み出ている眩しい笑顔からも。頬を寄せている分厚い胸板から聞こえてくる、少し忙しない心音からも。

 ちゃんと教えてくれているのだ。先輩も俺と同じ気持ちなんだって。

「それに俺、こうして先輩と歩けるだけで幸せですから」

「……シュン」

 先輩のことだから、爽やかに返してくれると思っていた。いつものように、俺も幸せだよとか。あるいは大胆に、愛してるよとか。

 けれども現実の先輩は、俺の想像なんてあっさり超えていってしまったのだけれど。

「その……やはりキスは止めておいた方が良いよな……したくて堪らないんだが……」

「っ…………せ、せめて人の目が無いところまで我慢して下さいっ」

 驚いたものの嬉しさも込み上げてきたからだろう。咄嗟に俺は、ほとんど了承に近い言葉を口にしていた。いや、実際、誰かに見られる心配がなければ俺だって。

「そう、だよな……済まない」

 眉を下げて微笑む先輩は、あからさまに残念そう。鍛え抜かれた筋肉により盛り上がっている肩を、しょんぼりと落としている。

 ……マジでこの場でしてくれるつもりだったんだろうか。俺がオッケーしていたら。

 ちらりと見渡しただけでも、親子連れやら仲の良い友達グループやら恋人同士やら。誰かの視線が無いところが無い。

 ……うん。ムリだな。こんな状況でしてもらう強い心臓なんて俺には。

 そんな折に渡りに船。目的地に辿り着いた。

 先輩ばかり見ていたからだ。そびえ立ち、ヘビのようにうねっているジェットコースターが、突然現れたように錯覚してしまった。

 認識した途端、意識が完全に二人の世界から賑やかなテーマパークへと。列に並んで今か今かと待つ話し声、一足先にジェットコースターに乗り込んでいる人達の楽しそうだけれども怖そうな絶叫。先輩の声以外の音が戻ってきた。

「ほ、ほらっジェットコースター見えてきましたよ! 並びましょう?」

「ああ」

 先輩も、周りの雰囲気に釣られてきたんだろう。表情にわくわくとした笑顔が戻っていた。
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