気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件~恋人ルート~

白井のわ

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マッチョな先輩と恋人同士になった件(サルファールート)

まさか、先輩から願ってもらえるなんて

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 肩に重みを感じたかと思えば、頬に柔い温もりが。先輩の頬が、ぴたりと寄せられていた。耳元で聞こえた吐息が静かな浴室に響く。少し湿った空気に溶けていく。

「済まないな……俺が堪え性がないばかりに……」

 大丈夫ですよ。謝らないで下さいよ。そう思ってはいた。だけど口は。

「……いい加減見慣れたんじゃないんですか? 結構、俺達……この一週間の間に……回数、重ねてきましたけど……」

「ぐっ……」

 パッと肩から、頬から体温が離れていってしまう。俺を包みこんでくれている腕がビクリと震えて、周囲のお湯が波打った。

「……その、本当に済まない……情けのない話なんだが、今でも結構いっぱいいっぱいなんだ……」

「……へ?」

 思いがけない告白に全部吹っ飛んだ。こんなこと言いたかったんじゃないのにとか、言おうとしていたごめんなさいとか、全部。

 反射的に振り返っていた先で、耳まで真っ赤にした先輩と目が合う。申し訳無さそうにしつつも、しっかりと熱を宿した瞳と。

「……まだ、俺のこと……触りたいって、思ってくれてるんですか?」

「…………ああ」

「……いっぱい……してくれたのに?」

「…………ああ」

 消え入りそうだけれども、瞳を逸らされてしまったけれども、肯定だけはしてくれる。こんなに素直に認めてもらえちゃったら、もう。

「ふふ、そうなんですか……じゃあ、触ります? ちょっとだけ」

 嬉しそうな顔を見せてくれたのは一瞬だけ。焦ったように先輩は、何かを振り払うように左右に首をブンブン振った。

「っ……だ、駄目だ、駄目だ! 絶対にちょっとじゃ済まなくなるっ明日は大事なデートなんだぞ?」

 それも、そうか。初めての遊園地デートなんだし、体力は取っておかないと。

「……なら、仕方ないですね……残念ですけど、俺も明日は楽しみにしてますし……」

 安心したような、残念そうな。複雑そうな顔をしてから先輩は、俺の手を握ってきた。

 口を開いたり閉じたりしながら、どこか迷っているように目を泳がせている。この感じは知っているぞ、前も見たことがある。何か、俺にお願いをしてくれようとしている時だ。

「……その代わりに、なんだが……」

「なんですか? 何でも言って下さいっ」

「……明日の晩……君を抱いてもいいだろうか?」

「はいっもちろ……って、え?」

 確かにお願いだった。お願いだったけれども。まさか、先輩から言ってくれるとは。

 抱くって……そういうことで、いいんだよな? ついに先輩のをくれるってことで……

 思わず固まってしまっていた俺に対して、珍しく先輩は積極的だった。後ろ向きにとらえることはなかった。

「今まで以上に優しくする……だから、どうか俺に委ねてくれないだろうか? 君の全部が欲しいんだ……」

 握った手に力を込めて、俺を真っ直ぐに見つめてくれた。

「……お願い、します」

 胸の中ではいっぱい込み上げてきていたのに、その一言しか、ひと回り大きな手を握り返すことしか。けれども先輩は満面の笑みで俺を抱き締めてくれた。額に優しく口づけてくれたんだ。
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