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マッチョな先輩と恋人同士になった件(サルファールート)
特別なお揃い
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俺が見ていた『無料でお好きなメッセージを刻めます』と大きく書かれた、オリジナルネックレスのカスタマイズ表に先輩も気付いたらしい。興味深そうに眺めながら、うんうんと頷いた。
「成る程……シュンは、色々と選べる方が好きなのか? さっきの石を選べるブレスレットも気になっていたみたいだったが」
バレていたとは。そんなにじっと見ていなかったつもりなんだが。
とはいえ誤魔化す必要もないだろう。少し気恥ずかしくはあるけれど。
「……はい……特別感が……あるかなって……俺と先輩だけの……」
「そうか……そうだな。じゃあ、せっかくだから名前も入れてもらおうか? 互いのイニシャルを入れれば、もっと特別感が増すだろう? 結婚指輪みたいに」
さり気なく出された例えに鼓動が大きく跳ねてしまう。火が出そうなくらい顔が熱くなってしまう。
「け、けけけ結婚……」
先輩とのお揃いってだけでも、あまりの喜びで天にだって昇っていけそうなのに。そんな言葉が出てくるなんて。
ということは、多少なりとも考えてくれているのだろうか。俺との将来を。期待しても、いいのだろうか。
俺の反応を見て、やっと自分の発言の重大さに気付いたんだろう。先輩の顔がみるみる内に真っ赤に染まっていく。
「あ、いや、その……深い意味は無いんだが」
舞い上がっていた気分が、一気に地に落ちた心地がした。
「……無いんですか? 俺は二人の名前……入れたいです……結婚指輪みたいに……」
恥ずかしさよりも、否定されたことの寂しさが勝っていたからだろう。素直な本音が口から漏れていた。
俯く俺の肩を先輩が掴む。温かい手のひらが頬に添えられて、促されるまま顔を上げれば、ひたむきな黄色い双眸に射抜かれた。
「……入れよう。いや、入れさせてくれシュン」
「はいっ」
思わず大きな声を上げてしまっていた。慌てて口を覆った俺を、安心したように微笑む瞳が見つめている。
「ははっ……それで、石の種類やスティックとチェーンの色はどうするんだ?」
「……俺は、このペリドットって石がいいです。先輩の瞳と……同じ色だから」
手元のプレートに嵌め込まれた天然石を指し示せば、ただでさえ赤かった先輩の顔がもっと赤くなった。
慌てたように、ゴツゴツした手で口元を押さえた彼の眉間には、また堪えるような深いシワが刻まれている。
「っ……じゃあ、そうしよう。代わりに……プレートとチェーンの色は俺が決めてもいいか?」
「いいですよ。どれにします?」
「黒にしよう。君の瞳と同じ色だからな」
俺の目元を太い指で撫でながら、先輩がしたり顔で白い歯を見せる。
途端に熱くなる顔を両手で覆い隠すと、ご機嫌そうに笑いながら頭をぽんぽんと撫でられた。
レジで組み合わせと刻む名前を伝えたところ、在庫が店に無かったらしく取り寄せることになった。
代金だけ先に割り勘で払おうとしたが、頑なに先輩が「贈らせて欲しい」と譲らなかった為お言葉に甘えることにした。
「届くの、楽しみですね」
ふわふわした気分のまま、モール内を当てもなくのんびり歩く。繋いでいる手を軽く握れば、すぐに先輩が優しく握り返してくれる。俺に微笑みかけてくれる。
「そうだな……ところでシュン、喉、乾かないか?」
言われてみれば。少し喉が乾いた気がする。
メインのお買い物も済んだことだし、フードコートにでも寄るか、それとも。
取り敢えずと周囲をぐるりと見渡せば、鮮やかな黄色いのぼりに目を引かれた。レモンの絵と共に、可愛らしい文字でレモネードと書かれている。
「先輩、あれにしませんか?」
「レモネードか……いいな、さっぱりしてて。俺が買ってくるから、シュンはそこのベンチに座って休んでいてくれ」
俺も一緒にと、言う間もなかった。颯爽と走って行ってしまったのだ。近くのベンチを指差して、ニコッと口角を持ち上げてから。
一人残された俺は言われた通りにベンチに腰掛けた。小さくなる先輩の背中をぼんやり眺めていた。
「成る程……シュンは、色々と選べる方が好きなのか? さっきの石を選べるブレスレットも気になっていたみたいだったが」
バレていたとは。そんなにじっと見ていなかったつもりなんだが。
とはいえ誤魔化す必要もないだろう。少し気恥ずかしくはあるけれど。
「……はい……特別感が……あるかなって……俺と先輩だけの……」
「そうか……そうだな。じゃあ、せっかくだから名前も入れてもらおうか? 互いのイニシャルを入れれば、もっと特別感が増すだろう? 結婚指輪みたいに」
さり気なく出された例えに鼓動が大きく跳ねてしまう。火が出そうなくらい顔が熱くなってしまう。
「け、けけけ結婚……」
先輩とのお揃いってだけでも、あまりの喜びで天にだって昇っていけそうなのに。そんな言葉が出てくるなんて。
ということは、多少なりとも考えてくれているのだろうか。俺との将来を。期待しても、いいのだろうか。
俺の反応を見て、やっと自分の発言の重大さに気付いたんだろう。先輩の顔がみるみる内に真っ赤に染まっていく。
「あ、いや、その……深い意味は無いんだが」
舞い上がっていた気分が、一気に地に落ちた心地がした。
「……無いんですか? 俺は二人の名前……入れたいです……結婚指輪みたいに……」
恥ずかしさよりも、否定されたことの寂しさが勝っていたからだろう。素直な本音が口から漏れていた。
俯く俺の肩を先輩が掴む。温かい手のひらが頬に添えられて、促されるまま顔を上げれば、ひたむきな黄色い双眸に射抜かれた。
「……入れよう。いや、入れさせてくれシュン」
「はいっ」
思わず大きな声を上げてしまっていた。慌てて口を覆った俺を、安心したように微笑む瞳が見つめている。
「ははっ……それで、石の種類やスティックとチェーンの色はどうするんだ?」
「……俺は、このペリドットって石がいいです。先輩の瞳と……同じ色だから」
手元のプレートに嵌め込まれた天然石を指し示せば、ただでさえ赤かった先輩の顔がもっと赤くなった。
慌てたように、ゴツゴツした手で口元を押さえた彼の眉間には、また堪えるような深いシワが刻まれている。
「っ……じゃあ、そうしよう。代わりに……プレートとチェーンの色は俺が決めてもいいか?」
「いいですよ。どれにします?」
「黒にしよう。君の瞳と同じ色だからな」
俺の目元を太い指で撫でながら、先輩がしたり顔で白い歯を見せる。
途端に熱くなる顔を両手で覆い隠すと、ご機嫌そうに笑いながら頭をぽんぽんと撫でられた。
レジで組み合わせと刻む名前を伝えたところ、在庫が店に無かったらしく取り寄せることになった。
代金だけ先に割り勘で払おうとしたが、頑なに先輩が「贈らせて欲しい」と譲らなかった為お言葉に甘えることにした。
「届くの、楽しみですね」
ふわふわした気分のまま、モール内を当てもなくのんびり歩く。繋いでいる手を軽く握れば、すぐに先輩が優しく握り返してくれる。俺に微笑みかけてくれる。
「そうだな……ところでシュン、喉、乾かないか?」
言われてみれば。少し喉が乾いた気がする。
メインのお買い物も済んだことだし、フードコートにでも寄るか、それとも。
取り敢えずと周囲をぐるりと見渡せば、鮮やかな黄色いのぼりに目を引かれた。レモンの絵と共に、可愛らしい文字でレモネードと書かれている。
「先輩、あれにしませんか?」
「レモネードか……いいな、さっぱりしてて。俺が買ってくるから、シュンはそこのベンチに座って休んでいてくれ」
俺も一緒にと、言う間もなかった。颯爽と走って行ってしまったのだ。近くのベンチを指差して、ニコッと口角を持ち上げてから。
一人残された俺は言われた通りにベンチに腰掛けた。小さくなる先輩の背中をぼんやり眺めていた。
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