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マッチョな先輩と恋人同士になった件(サルファールート)

★ 先輩となら、安心できる

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 ベッドの上で膝を突き合わせ、どのくらい経ったのか。空気がこそばゆくて仕方がない。

「…………」

「…………」

 言い出しづらいんだろう。先輩は、こちらをチラリと見ては、伏せを繰り返している。

 ……してくれる気、満々だったもんな。

 でも、まぁ、俺が先輩の立場でも期待するけど。お互いに口頭で確認し合ってなくても、オッケーだろうって思い込んじゃうけど。

 っていうか、実際オッケーなんだけど。やっぱり、俺が言うべきだよな? 言うべきだろう。

「……いいんですか?」

「……いいだろうか?」

 尋ねる声が、ピタリと重なった。

 俺が覚悟を決めたのと同時だったのだ。先輩が真っ赤な顔のまま、真っ直ぐに俺を見つめてきたのは。

「えっと……どうぞ、先輩から」

「いやいや、君から」

 動きまで鏡合わせ。手のひらを差し出し合って、話す順番を譲り合う。きりがないな。もう先輩は、俺の話を聞く体勢になっちゃってるし。

「じゃあ、俺から……いいですか?」

 顔の横で小さく手を上げれば、先輩の顔がぱぁっと輝いた。

「っああ、よろしく頼む」

「……率直に言いますね」

「……ああ」

「……俺は……先輩がしてくれるんだったら、して欲しいです……準備を……手伝って、欲しいです……」

 尖った喉仏が上下に動くのが見えた。俺を見つめる黄色の瞳が見開いて、熱が滲んでいく。

「……いいのか?」

 逞しい上体を前のめりに傾けて、尋ねる声は少し掠れていた。トーンも低い。先輩から伝わってくる期待に、心臓が煩く高鳴ってしまう。

 お尻の穴を解して、広げる。先輩と最後までしたいなら、先輩を受け入れたいのなら、避けられない課題であり難題だ。

 本来ならば、俺が練習して、事前に準備を済ませておくべきだろう。でも。

「……一人でするの、自信ないし……不安、だし……でも、先輩とだったら、安心できるか、らっ」

 勢いよく両の肩を掴まれた。血管の浮き出た大きな手が、今度は俺の頬に添えられる。

 大きく心臓が跳ねた。真摯な彼の瞳に、言葉に。

「……俺に任せて欲しい……絶対に優しくする……君が、気持ちいいと思えるように頑張るから……」

「……ありがとうございます……でも、大丈夫だと思いますよ」

 真剣な眼差しが、きょとんと丸くなる。

 ホントに先輩は分かっていないんだな。じゃあ、ちゃんと伝えないと。

「だって、俺……こういうの初めてだけど……ずっと先輩に優しくしてもらえて……いっぱい気持ちよくして、もらってますから……」

「ぐ、ぅ……本当に、君は……」

「ふふ、先輩はドキドキしやすいですね」

「……君が、可愛いことばかり言うからだろう」

 何かを堪えるように歪んでいた唇が、ふにゃりと綻んでいく。試しに目を瞑ってみれば、優しく口づけてくれた。
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