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マッチョな先輩と恋人同士になった件(サルファールート)
★ 俺だって我慢していたのに、無理なんかしていないのに
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俺の疑問に答えるように、先輩は話し始める。頼もしく盛り上がった肩を縮め、高い背を屈めながら。
「いや……その……湯上がりの君がとても色っぽくて……色々と思い出してしまってな……」
色っぽい……? 俺が……?
嬉しさと困惑が同時にやってきて、俺は固まってしまっていた。その間にも先輩は、指先で赤い頬を掻きながら続ける。
「君にバレてしまう前に何とか浴室に駆け込んで、シャワーを浴びて気持ちを鎮めたんだが……君の顔を見ると、その……ムラムラしてまうというか……」
俺を見ると……ムラムラする? 先輩が?
先輩の追撃、もとい答え合わせは、なおも続く。
やれ「だから、出来るだけ顔を見ないように目線を下げていたんだが……そうすると、今度は君の無防備な首元が見えてしまって……余計に気持ちが昂ってしまってな……」とか。
やれ「煩悩を払う為に瞑想も試みたんだが、君の笑顔ばかりが浮かんでしまって……」だとか。
目が合わなかったのも、上の空だったのも、気持ちを鎮める為だったと。無理をさせてしまった俺に、これ以上の無理をさせぬよう堪えていたんだと言うのだ。
だったら、一言、言ってくれればいいじゃないか。そう俺が思うよりも、口にするよりも先に言われてしまった「君は優しいから……俺が白状すれば、無理をしてでも応えてくれようとするだろう?」と。
黙ったままの俺を見て、先輩が微笑む。困っているような、嬉しそうな笑顔だった。
「そういう訳でな……こんな状態で君とベッドを共にしようもんなら、俺は絶対に手を出してしまう……だから」
言葉よりも先に、俺は行動していた。分厚い胸板に飛び込んで、広い背中を抱き締めていた。
「っ……シュン、俺の話を聞いていただろう? 今の俺は」
「……いいですよ。それに、無理なんかしてないです」
少し見上げた先にある先輩の顔は、耳まで真っ赤っ赤だった。
俺を抱き締め返そうとして、けれども我慢しようとしていたんだろう。中途半端に上がった両手が、ぷるぷると震えている。
「……俺も、先輩に……してもらえたの、思い出してましたし……またして欲しいなって……思ってましたから……」
「……シュン」
「……我慢しようとしてたのも、一緒です」
黄色い瞳を瞬かせて「そうか」と小さく呟いた唇に、緩やかな笑みが形作られていく。筋肉で盛り上がった腕が俺を抱き締める。
交わした、触れるだけのキスが合図だったみたい。飢えた獣が獲物の喉笛に噛みつくように、先輩は俺の首元に吸いついてきた。
「……あっ……ん、んっ」
唇で軽く食んだり、俺の肌をふやかすように丹念に舌で舐めたり。また、キスマークを付けてくれるつもりなんだろうか。
柔い先輩の唇が触れてくれる度に、熱く濡れた舌が這う度に、俺の身体は電気でも走ってるみたいにビクビク跳ねた。早くも俺の身体は、思考は、心地のいい波に飲まれようとしていた。
ふと、視界の端にベッドが映る。どうせなら、あそこで普通の恋人同士らしく、先輩と。
「ふ、ぁ……せんぱ……ベッド……」
「……分かった」
言葉足らずな訴えだったのに、先輩は察してくれたらしい。首元から顔を離すと力の入らない俺を軽々と抱き抱えてくれた。
ゆっくりと先輩が俺をベッドへと横たえてくれる。背中に触れたシーツは、服越しなのにひんやりしていて気持ちがいい。
軋む音がして、先輩が俺に覆い被さってくる。逞しい太ももが俺の身体を跨いで、大きな両の手のひらが顔を挟むように置かれた。
俺を見下ろす先輩には、普段の爽やかさはない。見たことのない、雄の顔をした先輩が、そこにはいた。
ギラつく黄色の瞳が、俺を捉えて離さない。荒い吐息を漏らす唇から、白い歯と赤い舌が覗いていた。
もう、逃げられそうにない。そもそも逃げようとも思わないけど。
「いや……その……湯上がりの君がとても色っぽくて……色々と思い出してしまってな……」
色っぽい……? 俺が……?
嬉しさと困惑が同時にやってきて、俺は固まってしまっていた。その間にも先輩は、指先で赤い頬を掻きながら続ける。
「君にバレてしまう前に何とか浴室に駆け込んで、シャワーを浴びて気持ちを鎮めたんだが……君の顔を見ると、その……ムラムラしてまうというか……」
俺を見ると……ムラムラする? 先輩が?
先輩の追撃、もとい答え合わせは、なおも続く。
やれ「だから、出来るだけ顔を見ないように目線を下げていたんだが……そうすると、今度は君の無防備な首元が見えてしまって……余計に気持ちが昂ってしまってな……」とか。
やれ「煩悩を払う為に瞑想も試みたんだが、君の笑顔ばかりが浮かんでしまって……」だとか。
目が合わなかったのも、上の空だったのも、気持ちを鎮める為だったと。無理をさせてしまった俺に、これ以上の無理をさせぬよう堪えていたんだと言うのだ。
だったら、一言、言ってくれればいいじゃないか。そう俺が思うよりも、口にするよりも先に言われてしまった「君は優しいから……俺が白状すれば、無理をしてでも応えてくれようとするだろう?」と。
黙ったままの俺を見て、先輩が微笑む。困っているような、嬉しそうな笑顔だった。
「そういう訳でな……こんな状態で君とベッドを共にしようもんなら、俺は絶対に手を出してしまう……だから」
言葉よりも先に、俺は行動していた。分厚い胸板に飛び込んで、広い背中を抱き締めていた。
「っ……シュン、俺の話を聞いていただろう? 今の俺は」
「……いいですよ。それに、無理なんかしてないです」
少し見上げた先にある先輩の顔は、耳まで真っ赤っ赤だった。
俺を抱き締め返そうとして、けれども我慢しようとしていたんだろう。中途半端に上がった両手が、ぷるぷると震えている。
「……俺も、先輩に……してもらえたの、思い出してましたし……またして欲しいなって……思ってましたから……」
「……シュン」
「……我慢しようとしてたのも、一緒です」
黄色い瞳を瞬かせて「そうか」と小さく呟いた唇に、緩やかな笑みが形作られていく。筋肉で盛り上がった腕が俺を抱き締める。
交わした、触れるだけのキスが合図だったみたい。飢えた獣が獲物の喉笛に噛みつくように、先輩は俺の首元に吸いついてきた。
「……あっ……ん、んっ」
唇で軽く食んだり、俺の肌をふやかすように丹念に舌で舐めたり。また、キスマークを付けてくれるつもりなんだろうか。
柔い先輩の唇が触れてくれる度に、熱く濡れた舌が這う度に、俺の身体は電気でも走ってるみたいにビクビク跳ねた。早くも俺の身体は、思考は、心地のいい波に飲まれようとしていた。
ふと、視界の端にベッドが映る。どうせなら、あそこで普通の恋人同士らしく、先輩と。
「ふ、ぁ……せんぱ……ベッド……」
「……分かった」
言葉足らずな訴えだったのに、先輩は察してくれたらしい。首元から顔を離すと力の入らない俺を軽々と抱き抱えてくれた。
ゆっくりと先輩が俺をベッドへと横たえてくれる。背中に触れたシーツは、服越しなのにひんやりしていて気持ちがいい。
軋む音がして、先輩が俺に覆い被さってくる。逞しい太ももが俺の身体を跨いで、大きな両の手のひらが顔を挟むように置かれた。
俺を見下ろす先輩には、普段の爽やかさはない。見たことのない、雄の顔をした先輩が、そこにはいた。
ギラつく黄色の瞳が、俺を捉えて離さない。荒い吐息を漏らす唇から、白い歯と赤い舌が覗いていた。
もう、逃げられそうにない。そもそも逃げようとも思わないけど。
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