気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件~恋人ルート~

白井のわ

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マッチョな先輩と恋人同士になった件(サルファールート)

★ そういうところが眩しくて、カッコいいんですよ

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 ……触ってもいいかって……俺の、胸を?

 先輩みたく筋肉でムチムチしている訳でもなく、かといって、女の子みたいに柔らかい訳でもない俺の胸を? 何かの間違いじゃ……

「えっと、先輩……?」

「ああ……」

「ここって……俺の胸を触りたいってことで、あってます?」

「あ、ああ……」

 間違いじゃなかった。

 声を詰まらせかけた先輩は、俺の確認を後ろ向きに捉えたらしい。寂しそうに眉を下げ「すまない、嫌ならいいんだ……」ともう話しを終えようとしている。

「いやいや、全然いいですけど……」

「本当か? 無理、していないか?」

「はい、別に胸くらい……っていうか、先輩にだったら、俺、大抵のことは嬉しいですよ」

 そもそも、サルファー先輩は、俺が嫌がるようなことなんてしないもんな。今だって、慎重に確認してくれているしさ。

「そうか……」

 安心したように先輩は微笑んだ。けれども、何やら気になることがあるらしかった。

 俺を見つめながら、聞いてもいいのだろうかと言わんばかりに、口を開いたり閉じたりを繰り返している。

 ああ、理由……かな?

「いや、俺の……先輩の雄っぱいと違って……小さい……じゃないですか?」

「ああ、君はスタイルがいいからな。筋肉もバランスが良くて、しなやかだ。綺麗だよ」

「っ……あ、ありがとうございます……」

 まさか、褒められるとは。

 思いも寄らない嬉しい講評に、鷲掴みされまくった胸が苦しい。きゅんきゅんする。

 俺の状態なんて知る由もない先輩は「今の君でも十分にカッコいいが。俺と一緒に鍛えていけば、もっとカッコいい筋肉になれるぞ!」だなんて、また嬉しいことを言ってくれている。

 この人、もしや天然のタラシでわ? タラシだろ、絶対に。

 高鳴る胸を手で押さえ、悶えている俺の頭を、先輩の大きな手が撫でる。

「もしかして、大きさを気にしていたのか?」

「……はい、まぁ……触り心地……良くないかなって、思いまして……」

「そうか……」

 頭を撫でてくれていた手が、俺の手を握った。俺を見つめる黄色の瞳は、優しくて、真っ直ぐだった。

「俺は……君が好きだから、君の胸だから、触りたいと思ったんだが……嫌か?」

「っ……」

 期待はしてたさ。

 さっきでさえ、あんなに嬉しいことを言ってくれたのだ。だったら、今回だってと。

 だけど、俺の貧弱な想像よりも、現実の先輩は眩しくて。

「……ホントに、先輩ってズルいですよね……そういう嬉しいことばっかり言って……」

 カッコよくて、可愛くて。

「君だって……俺は、いつも君の言葉に、行動に一喜一憂しているんだぞ?」

 やっぱり、ズルい。

「う……もー……そういうところですってば……」

「ははっ」

 白い歯を覗かせて、先輩が笑う。鍛錬の後のような、サッパリとした爽やかな笑顔が、ほのかに艶を帯び始めた。

「それで、シュン……いいのか? 嫌なのか?」

 期待のこもった眼差しを向けながら、少し固い指先が俺の手の甲を撫でていく。まるで産毛を撫でているような触れ方に、収まりかけていた身体が熱を持つ。ワザと、だろうか。

「シュン……」

「いっ、いいに、決まってる……でしょう……好きなだけ、触っていいですよ……」

「ありがとう、愛してるよ……」

「もー……」

 不満が滲んだ俺の声は、すぐに遮られ、飲まれていった。溺れていったんだ。重ねられた先輩の唇の柔らかさに、口内に入ってきた先輩の舌の熱さに。

「ふ、ぁ……ん、んっ、は……ぅ、ぁ……」

 深いキスを交わしてくれながら、先輩は俺の胸を撫で始めた。最初は服の上から、頭や背中の時みたく手のひらで、ゆったりと。

 正直、これといった心地よさは感じなかった。先輩から撫でてもらえてるなってだけ。キスの気持ちよさの方が、明らかに勝ってるからかもしれないけど。

 少し厚い唇で、俺の舌先を甘く食んでから、先輩が俺から離れていく。

「……シュン」

 焦がれるように見つめる眼差しだけで、俺は察することが出来た。先輩が望んでいることを、先輩がお願いしようとしていることを。

「は、ふ……いい、ですよ……直接、触って……好きなだけって、言った、でしょ……」

「……ありがとう」

 嬉しそうに微笑む唇が、俺の頬に触れる。次に、濡れた左右の口端を拭うように何度か口づけながら、服の裾から手を差し入れてきた。

 温かい先輩の指先が、肌着の下に潜り込んでくる。俺の腹回りを撫でていく。

 律儀だな……いちいち許可を求めようとするなんて。毎回、感謝の印みたいにキスをくれるのもだけど。

「……あんまり、良くはないか?」

「……え?」

 俺が思考を飛ばしている内に、先輩の手は胸元へと辿り着いていたようだった。丁度、右胸に手のひらの温かさを感じる。

「……あ、すみません……キス、気持ちよくて……ぼーっとしてました……」

 ウソは言っていない。

 実際、ずっとしていたいくらい気持ちいいし、頭ん中ふわふわするし。

「ッ……君だって、人のことを言えないじゃないか……っ」

 なのに、何故か怒られてしまった。耳まで真っ赤にした先輩に、噛みつくように口づけられてしまったんだ。
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