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マッチョな先輩と恋人同士になった件(サルファールート)

★ 優しくする……絶対に、君が嫌なことはしないから……

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 今、先輩……可愛いって、俺のって……

 恋人同士になれる前も、そう褒めてもらえたことはある。けれども、威力が段違いだ。幸せ過ぎる。おまけに、先輩のものだっていう宣言まで。

 心臓が、壊れちゃいそう……

 俺の心を鷲掴みまくっているという自覚が、先輩にはないんだろう。柔らかい微笑みを浮かべている。

 更には容赦のない追撃まで。どこか無邪気な先輩に、ただただ見惚れているだけの俺に向かって「ふふ、耳まで真っ赤だぞ。照れてるのか? 可愛いな」なんて言ってくれてしまうのだ。

 ときめきの波状攻撃に、ますます言葉がさよならしてしまっている俺の背に、先輩の手が添えられる。

 先輩は俺を優しく抱き寄せてくれた。しかし、俺の身体は、まだ力が抜けたままだった。

「あっ……」

「おっと……?」

 全体重をかけるように寄りかかってしまった俺を、先輩が抱き止めてくれる。不可抗力とはいえ、鍛え上げられた分厚い胸板に、頬を押しつけてしまっていた。

「す、すみません……ありがとうございま、す?」

 異変に気がついたのは、顔を上げた時だった。

「…………」

 先輩の顔が、真っ赤に染まっている。照れているんだろうか? 抱き寄せてくれたのは、先輩なのに。

 困ったように眉を下げ、黄色の瞳を泳がせているサルファー先輩。普段はカッコいい彼の慌てた様子に、つい悪戯心が湧いてしまう。

「ふふ、先輩も照れてるんですか? 可愛いですね」

「っ……しゅ、シュン」

 自ら身体をくっつけた俺に、先輩がますます困ったように声を震わせる。

 おや? 先輩の視線が、何だか下を向いているような……

「す、すまない……これ以上、俺を煽らないでくれ……」

 不思議には思ったものの、先輩から言われたことの疑問の方が上回った。

「あおる? 抱きつくのも、ダメ……なんですか?」

「駄目じゃない、嬉しくて堪らない……だが、その、当たって、いるんだ……」

「当たる?」

 先輩は、俺に何かを伝えたそうにしていた。しかし、どれも遠回しなもんだから俺には分からなかった。

 意を決したように眉をひそめ、先輩が俺の肩を掴む。寄せていた身体を少し離してから、俺に促すように視線を落とした。

「? あ、っ……」

 視線を辿って、ようやくだった。

 俺は、男としてごく当たり前の生理現象を起こしていたのだ。そんでもって、ソコを先輩の膝近くに押し当ててしまっていたのだ。無自覚に。

「ご、ごめん……なさい……」

 慌てて太ももを閉じた俺の背を、先輩が優しく撫でてくれる。

「大丈夫だ……気にしないでくれ……」

 無理な話だ。気にするに決まっている。

 いくら好きな人に抱き寄せられたからって、いきなり勃つ訳がないだろう。ないと思いたい。

 多分、キスマークを付けてもらった時だろう。多少、気持ちいいと思っていた訳だし。そうだろう? そうだよな? そうだとしても、恥ずかしいことに変わりはないけれど。

 何とも言えない沈黙の中、少し固い指先が俺の手に擦り寄ってくる。

 指を絡められて、分厚い手のひらが重なって。反射的に見上げた先で、欲に濡れた黄色の瞳とかち合った。

「すまない、シュン……」

 先輩の長いまつ毛が震えている。尖った喉が上下に動く。

「後で、お返しはいくらでもする……君の好きなように、君が満足出来るまで俺の胸板を揉んでくれて、身体に触れてくれて構わない……」

 形の良い唇がどこか切なそうに吐息を漏らす。鼻筋の通った顔がゆっくりと近づいてくる。重なった額が熱い。

「だから、今は……君に触れさせて、もらえない……だろうか? もっと、君に……触れたいんだ……」

 嬉しくない訳がない。

 応えたい。俺を求めてくれる、彼の気持ちに。

「いい、ですよ……俺も、先輩に……触れて欲しいです……」

「シュン……」

 太い指先が俺の輪郭をなぞるように撫でていく。辿り着いた顎を優しく持ち上げられて、柔らかい温もりが唇に触れた。

「優しくする……絶対に、君が嫌なことはしないから……」

「はい……お願い、します……」

 先輩の手が俺の腰をゆったり撫でる。その手つきは酷く優しい。

 でも違う。今までの触れ方とは、俺を褒めてくれたり、励ましてくれたりしていた時とは。

「あ……」

 服をずらされ、先輩の指先が俺の肌に直に触れる。途端にじわりと滲んだ感覚は、淡くて甘い感覚は、キスマークを付けてもらえた時のものと似ていた。
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