気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件~恋人ルート~

白井のわ

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マッチョな先輩と恋人同士になった件(サルファールート)

俺ばっかりは不公平ですよ……恋人同士なのに……

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 先輩も俺と同じ気持ちでいてくれる。すっかり舞い上がってしまっていた俺は、ここぞとばかりに強請ってしまっていた。

「あの、先輩……他にも、お願い……あるんですけど……」

「ああ、構わないぞ。どんどん言ってくれ」

「……明日の日曜日、一緒に何処かに出掛けませんか? 俺、先輩とデートしたいです」

 金糸のようにキレイな睫毛が瞬く。少し丸くなった瞳が俺を見つめている。

 しまった、言葉が足りなかった。今、この時間だって、大切な先輩とのデートなのに。

「あ……き、今日みたいな、お部屋デートもスゴく楽しいですし、嬉しいですよ? でも、先輩と二人っきりで出掛けたことって……ないから……」

 俺の手を握ったまま、きょとんと固まっていた先輩が「ああ」と納得したように口元を綻ばせた。良かった。ちゃんと伝わったみたい。

「……そうだな。君と買い出しや食事に出掛けることはあっても、ソルや他の部員も一緒だったな。唯一二人で山に登ったこともあったが……あれは、あくまでも学園行事だったし……何処か、希望はあるのか?」

「先輩と一緒なら、何処でも……あ、でも、何かお揃いの物とか……欲しい、です」

 一人の時でも、それが有ったら先輩が側にいてくれる気になれるし。そんな恥ずかしいこと、面と向かって言える訳がないけど。

「いいなっ、お揃いの物。俺も欲しいぞ!」

 眩しい笑顔で喜んでくれる先輩に、心も表情も緩んでしまう。よっぽど前向きに考えてくれているんだろう。彼の方から提案してくれたんだ。

「だったら、俺は身に付けられる物の方がいいな。例えば、ネックレスとか」

「ネックレス、ですか?」

 オウム返しに尋ねた途端、先輩の笑みが深くなる。どこか得意げに口の端を持ち上げながら、話し始めた。

「ああっ! 離れていても、常に君の事を感じていられるだろう? 試合中でも付けたままに出来るから、一石二鳥だ!」

 ……俺が言えなかったことを、こうも簡単に。ていうか、おんなじことを考えてくれていただなんて。

 あふれてしまいそうな喜びに、少しだけ滲んでいた悔しさ。余計なソレが邪魔をしたんだろう。

「せ、先輩って……そういうこと、サラッと言いますよね……まぁ、そんな所も……す、好きですけど……」

 つい、憎まれ口を叩いてしまっていた。けれども、先輩には、うんともすんとも。

「俺もシュンが好きだ、愛してる」

 それどころか、逆に屈託のない笑顔と真っ直ぐな想いをもらってしまったんだ。

「っ……せ、先輩は、俺と何かしたいことってないんですか?」

 顔が熱を持つ気恥ずかしさを誤魔化すように、俺は咄嗟に先輩に話題を振っていた。

 また少し目を瞬かせて先輩は、困ったように男らしい眉を下げる。

「俺は、君とこうして、一緒に過ごせるだけで幸せだから……」

 噛み締めているような呟きだった。気持ちは分かる。痛いほどに。

 だって、俺だって幸せだ。先輩と一緒に居られるだけで、微笑みかけてもらえるだけで、嬉しくて仕方がない。

 でも、満たされた分だけ、俺は我儘になってしまう。もっと、もっと欲しいと思ってしまうのに。

 ……先輩は、違うのかな? いや、我慢してくれてるのかも。先輩は優しいから。

 だったら、聞き出さなければ。俺ばっかりは、もう……

「先輩……」

「ん、どうした?」

「……したいこと……エッチな方でも、いいですよ?」

「ッ…………」

 あっという間に、先輩の顔が真っ赤に染まっていく。じっと俺を見つめたまま、何か言いたげに口をパクパク動かしている。

 これは、満更でもないのでわ?

 俺のこと……抱きたいって言ってくれたもんな。やっぱり、何かしたいことがあるのかも。

 先に、俺の要望を言ってみるか。その方が先輩も言い出しやすいかもしれない。

「因みに……俺は、先輩の雄っぱいを揉みたい……です」

「お、おっぱ? あ、ああ、俺の……胸板のことか? それなら、好きなだけ触ってもらって構わないぞ」

 顔を真っ赤にした先輩は、一瞬不思議そうな顔をしたけれど、すぐに理解し、快諾してくれた。

 それどころか、満面の笑顔で「良かったら、腕とか腹筋とかも触ってみるか?」などと魅力的なことまで言ってくれる。

「ありがとうございます……そちらも、是非……でも、その代わりに、俺にもお返しをさせて下さい」

「お、お返し?」

「はい。俺の要望を叶えてくれるんですから、俺も先輩の要望を叶えたいんです」

 先輩は、息を呑んで、幅広の肩を僅かに震わせた。

 黄色の瞳が俺を見つめている。食い入るような眼差しは、少しだけ熱を帯びているような。やっぱり、先輩は。

「き、君の気持ちは、とても有り難いが……大丈夫だぞ? 俺は君が喜んでくれれば」

「先輩のやりたいことを叶えられたら、俺はもっと嬉しいです」

「うっ……」

「それに、俺ばっかりは不公平ですよ……恋人同士なのに……」

「ぐ、ぬ……」

「先輩が、俺にしたいこと……ホントに何も無いんですか?」

 先輩の反応に、チャンスを見い出した俺は畳み掛けた。出来ることは全部やった。手を握って、上目遣いで、寂しそうな声も出してみた。

 そこまでやり切って、ようやくだった。

「……つけたい」

 先輩が、消え入りそうな声で呟く。

 黙って続きを促すように真っ赤な顔を見つめれば、俺の手をぎゅっと握りながら、意を決したように口を開いた。

「シュンに……キスマークを、付けたい」

 そういえば、前にも言われたことがあったっけ。恥ずかしいからって俺が断っちゃったけど。

「いいですよ。先輩が好きなだけ、付けて下さい」

 俺が微笑みかけると先輩は、安心したように、嬉しそうに、瞳を細めた。今にも蕩けてしまいそうな笑顔が可愛い。

 気がつけば、俺は自分から先輩との距離を詰めていた。

 奪おうとした寸前で、笑みを深めた唇から逆に奪われる。逞しい腕が、俺の背を強く抱き締めた。
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