気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件~恋人ルート~

白井のわ

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マッチョな先輩と恋人同士になった件(サルファールート)

謝る相手は、オレじゃないでしょ?

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 そうだ。勝負はついたのだ。

 けれども、まだ肝心の話は終わっていない。聞き出せてはいないのだ。親友の想いを。

 だから、俺は。

「ソル……改めて問うぞ。貴様も、シュンと向き合わなければいけないんじゃないか?」

 向けていた切っ先を下ろし、尋ねる。力なく落としていた彼の肩が、僅かに揺れて見えた。

 遠巻きに俺達を囲う人垣は、いまだに興奮が冷めやらぬのか、沸いている。

 多くは喜色に満ち、ところどころに心配が混じる音の洪水の中、それでも彼の呟きは、消え入ることなく俺に届いた。

「……るなら…………よ」

「ソル?」

 聞き取れなかった部分を聞き取ろうと背を屈め、膝を折ろうとした時だった。

「奪えるもんなら、とっくの昔に奪ってんだよ!」

 その叫びは、酷く痛々しかった。

 そして似ていた。かつて幾度も聞いて、俺達自身も上げたことのある叫び。

 あと一歩、己の力が勝利の頂へと届かなかった、己自身を責める嘆きの声に。

 固まった一瞬を、ソルが逃すハズがなかった。

 立ち上がると同時に放たれた、鋭い蹴りが俺の手元を見事に捉えた。今度は俺の剣が頭上を舞い、後方でどこか虚しい音を鳴らす。

 勢いのまま、ソルが俺の軍服の襟を引っ掴んでくる。負けじと俺も掴み返す。

「だったら、何故そうしない!?」

「仕方がないだろ! オレじゃダメなんだから!」

 互いに襟首を掴みながら言い合う様は、もはや決闘と言うよりただの喧嘩だろう。

 そう頭の片隅で浮かんだものの止まれない。止まる訳にはいかなかった。

「貴様は昔からそうだ! やる前から結果が分かってるような行動をとって! やってみないと分からないだろうがっ!!」

「今回は、特に分かるんだよ! 好きなコのことだからなっ!!」

「やっぱり好きなんじゃないか!! 何を俺に遠慮しているっ!」

「してねーよ馬鹿!!」

 噛みつくように食って掛かっていたソルが止まる。奥歯まで見えるくらいに開いていた口が閉まり、引き結んだ唇が歪んでいく。

「分かるから、ムリなんだよ……」

 声量が萎んでいくにつれ、俺の首を締めんばかりに襟元を掴んでいた拳から力が抜けていく。

「シュンちゃんが好きなのはサルフだって、分かるから……」

 ソルは俺に絞り出すように告げてから、襟を掴んでいた手を弱々しく離した。煮えたぎるように熱かった腹の内が、一気に冷えていくのを感じた。

「好きなコにはさ、幸せになって欲しいじゃん……だから、さっさとケジメつけなよ」

「すまない……ソル」

「謝る相手は、オレじゃないでしょ?」

 ソルは力なく笑いながらも、気合を入れてくれるように俺の背中を叩いた。そして視線を人垣の方へと向ける。

 促され、向けた先にはシュンがいた。

 彼の近くで観戦していた部員達が左右に別れるように離れていく。残されたのはシュンと、彼を挟むように寄り添っているダンとライ。

 が、彼らもシュンの頭を撫でたり、肩を叩いたりしてから離れていく。一人残されたシュンが俺を見つめる。

 久しぶりに、ちゃんと彼の目を見つめ返すことが出来た。
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