上 下
135 / 491
マッチョな先輩と恋人同士になった件(サルファールート)

ソルが怒っている原因は分かった、しかし

しおりを挟む
 再び、勢いをつけて飛び上がり、俺の頭部目掛けて剣を降り下ろしてくる。今度は、受け止める間が。

「くっ……」

 咄嗟に横に飛ぶことで、渾身の一撃を躱した。やられてばかりでは。

 全体重をかけて着地したソルの、無防備な胴体を狙って薙ぎ払う。確実に捉えたハズだった。

「なっ」

 これもまた読まれていたらしい。あっさりめ受け止められてしまった。剣を縦にし、俺の一撃を軽くいなす。

 しまったと思う時には、もう別の一撃が。長い足が俺の鳩尾に、強烈な打撃を食らわせた後だった。

 見事に蹴っ飛ばされた俺は、身体をくの字に折りながら、後退る。ブーツの底が石畳を擦る音が、大きく聞こえた。

「ぐぅっ……いつも以上に、容赦が……無いな」

 胸が重たい。息が詰まる。今ので肋骨が何本か、もっていかれたかもしれない。

 片手で庇うように鳩尾を押さえる俺に、ソルは呆れたような声で告げてきた。

「へたれた根性叩き直すのに、手加減なんかしてどーすんのよ」

「……さっきから意気地無しだの、ヘタレだの、一体何の話だ?」

 ソルが怒っている原因は分かった。

 ……シュンだ。俺が、彼を傷つけてしまったから。俺を殺したいほど怒る気持ちも分かる。

 何故なら、シュンはソルを慕っている。それに、ソル自身も、きっとシュンのことを……

 だから、余計に分からない。何故、そこで俺が出てくるんだ? どうして、俺との喧嘩を彼に見せる必要がある?

 俺に怒っているのならば、俺を殴ればいいだけだろう。

「はぁ? それ、マジで言ってんの? 引くんだけどっ!!」

 答えが返ってくることはなかった。ただ、彼の怒りを増長させてしまっただけに終わった。

 ……言葉で駄目ならば、剣で語るしか。

 大きく息を吐いて剣を構えた俺に向かって、一足飛びにソルが突っ込んでくる。

 また頭か。即頭部を目掛けて横に振るってきた剣筋を、上体を反らすことで辛くも避けた。

 しかし、すぐさま次の一撃が。畳み掛けるように、俺の頭上に向かって剣を振り下ろしてくる。

 間一髪のところで、横に構えた剣で再びそれを防いだものの、体勢が悪いせいだろう。押し負けそうになってしまう。

「分からない、からっ……聞いたんだがなっ」

 俺の鼻先で交差している剣が、耳障りの悪い音を立てて震える。手のひらに広がる熱い痺れが、じくじくと全身に広がっていく。

 瞳孔が開かんばかりに、俺を鋭く睨めつけてくるソル。食いしばった歯の隙間から、獣地味た吐息を漏らすばかりだったが、不意に口角を持ち上げ笑った。

「じゃあ、望み通りハッキリ言ってやるよ……」

 思わせ振りに言葉を切り、息を大きく、ありったけ吸い込む。そして。

「ウジウジしてる暇があったら、シュンちゃんにさっさと告白しろよ! この剣術馬鹿!!」

 思いがけない言葉と共に吐き出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜 ・不定期

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

男子寮のベットの軋む音

なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。 そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。 ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。 女子禁制の禁断の場所。

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...