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マッチョな先輩と恋人同士になった件(サルファールート)

いっぺん死んで、出直してこいよ

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 瞳を細め、ニコリと口角を持ち上げ、明るい声で答えた矢先だった。

 体勢を低くしたソルが、勢いよく地面を蹴り、飛び上がった。宙で均整の取れた体躯をしならせ、俺の頭部目掛けて剣を降り下ろしてくる。

 反射的に構えた剣が鈍い音を立てた。柄を握り、刃を支える手のひらから腕へ、そして腰から足へと重たい衝撃の波が伝わっていく。

 ……初撃から、全身全霊とはな。

 おまけに、術で滞空時間を伸ばしているのだろう。受け止められてもなお押し切ろうと、体重ごと力をかけてくる。

 だが、押し負ける訳にはいかない。速さは一歩及ばないが、単なる力勝負では俺の方に分があるのだから。

「っ……いきなりとは、ご挨拶だなっ」

 読まれたんだろう。俺の押す力を利用して後方へ、くるりと一回転。俺が横に払った刃は空を切り、無様な音を鳴らした。

 ソルはといえば、難なく着地して、剣を構え直している。

「……貴様、俺を殺す気か?」

 いくら練習用に刃が潰されているとはいえ、今の攻撃をまともに受けてしまえば、ただでは済まないだろう。数針は縫うはめになるだろうか。

 頑丈さには自信がある。だが、脳ばかりはいかんともし難い。数分……いや数十秒、気を失っている内に、ことが終わってしまう。

 瞬間、あの時の、山での出来事が頭を過る。

 キメラに隙をつかれ、木に叩きつけられ気を失い、シュンを危険に晒してしまった。最大の汚点が。

「一回死ねば、いいんじゃなーい?」

 俺の思考を戻したのは、あっけらかんとした声で言うには、そぐわない言葉だった。

 顔を上げれば、ソルが笑っていた。

 また、あの顔だ。鈍く光る刃で自分の肩を、トン、トンと叩きながら、一切笑っていない眼差しを俺に向けてくる。

「は? 貴様、何を言って……」

「ん? だって、サルフが殺す気かって聞くからさ」

 タレ目の瞳を瞬かせ、指先でウェーブのかかった髪を弄る様は、ただ質問に答えただけだと言わんばかり。本当に、俺が一回死んだ方が良いと思っているらしい。

 ここまで、ソルに言わせてしまうとは。

 何だかんだ文句は言いつつも面倒見が良く、優しい親友。彼を、これほどまでに怒らせてしまっていたとは。俺は、一体何をやらかしたっていうんだ。

「それにぃ……ほら、馬鹿って、死ぬまで治らないって言うじゃん?」

 俺が、二の句を継げないでいる間もソルは、まるで世間話でもしているかのごとく、軽い調子で続けている。

「だからさ……いっぺん死んで、出直してこいよ」

 そして、急に声のトーンを低くした。

「シュンちゃんを悲しませる、意気地無しのサルフなんか」
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