133 / 441
マッチョな先輩と恋人同士になった件(サルファールート)
剣を取る理由
しおりを挟む
一体、何を考えているんだろうか。ソルとは長い付き合いだが、今回ばかりは分からない。
彼とぶつかり合うのは、初めてではない。それどころか、日常茶飯事だ。
互いの主張が対立し、話し合いでは解決しない時は、いつも剣で、拳で決めていた。大きいことから些細なことまで、酷い時は、遊びにいく場所を決める為だけに、剣を取った時もある。
だが、今は理由がない。俺とソルがぶつかり合う理由が。
不意に、今にも泣いてしまいそうな彼の顔が浮かんだ。
「……シュン」
彼の名前を口にするだけで、胸の奥が痛んだ。俺には、傷つく資格なんてありはしないのに。彼を傷つけてしまったのは、俺なのに。
どうして、ソルは彼を此処に呼んだのだろうか。
シュンは、随分とソルに懐いているようだった。ソルを頼りにしているらしかった。彼の態度から見ても明らかだ。
現に先程も、その信頼を見せつけられた気がした。
泣きそうな顔をしていた彼は、ソルを見ただけで、彼と一言二言話しただけで、安心したように可愛らしい笑顔を見せていたのだから。
やはり、俺では……シュンを……
コツ、コツと軽やかな足取りが、ブーツの底が石畳を叩く音が、近づいてくる。
「……話は済んだのか」
「うん、バッチリ! 待たせちゃってごめんねー」
ソルの表情は、いつも通りだ。変わらず明るい。軽く上げた手をひらひらと振りながら、人の良さそうな笑みを浮かべている。
やっぱり分からない。
昨日の晩、急に部屋へ押しかけて来たかと思えば「決闘するから。明日の放課後、練習場で待ってる、逃げんなよ」と言いたいことだけ言って帰っていった、ソルの表情。
キレイに笑っているのに、目だけは笑っていない……一番怒っている時の顔をしていたのは、俺の見間違いだったんじゃないかと思ってしまう。
浮かんだ疑問は問いかけとして、自然と口から出てしまっていた。
「一応確認するが、本当にやるのか?」
瞬間、空気が変わった。
「……何? 今さら逃げるの?」
ソルの顔から笑顔が消える。だけなら、まだ良かった。
まるで鉄仮面のようだ。表情は抜け落ち、ただ刃の切っ先のように鋭くなった瞳だけが、ギラリと俺を見据えている。
ああ、やっぱり怒っているんだな、貴様は。本気で。
こういう時に驚きや心配よりも、血が騒いでしまうのが、いけないのだろう。
自覚は、反省はあれど、口角が上がっていくのが抑えられない。久しぶりに、本気の親友と剣を交えることに、仄かな喜びを感じてしまう。
手離しかけていた柄を握り直す。射殺すようなオレンジの瞳を、正面から受け止めた。
「悪かったなソル、今のは忘れてくれ。貴様の本気に、俺も全力で応えるとしよう」
「そうこなくっちゃ! じゃあ、行くよ」
彼とぶつかり合うのは、初めてではない。それどころか、日常茶飯事だ。
互いの主張が対立し、話し合いでは解決しない時は、いつも剣で、拳で決めていた。大きいことから些細なことまで、酷い時は、遊びにいく場所を決める為だけに、剣を取った時もある。
だが、今は理由がない。俺とソルがぶつかり合う理由が。
不意に、今にも泣いてしまいそうな彼の顔が浮かんだ。
「……シュン」
彼の名前を口にするだけで、胸の奥が痛んだ。俺には、傷つく資格なんてありはしないのに。彼を傷つけてしまったのは、俺なのに。
どうして、ソルは彼を此処に呼んだのだろうか。
シュンは、随分とソルに懐いているようだった。ソルを頼りにしているらしかった。彼の態度から見ても明らかだ。
現に先程も、その信頼を見せつけられた気がした。
泣きそうな顔をしていた彼は、ソルを見ただけで、彼と一言二言話しただけで、安心したように可愛らしい笑顔を見せていたのだから。
やはり、俺では……シュンを……
コツ、コツと軽やかな足取りが、ブーツの底が石畳を叩く音が、近づいてくる。
「……話は済んだのか」
「うん、バッチリ! 待たせちゃってごめんねー」
ソルの表情は、いつも通りだ。変わらず明るい。軽く上げた手をひらひらと振りながら、人の良さそうな笑みを浮かべている。
やっぱり分からない。
昨日の晩、急に部屋へ押しかけて来たかと思えば「決闘するから。明日の放課後、練習場で待ってる、逃げんなよ」と言いたいことだけ言って帰っていった、ソルの表情。
キレイに笑っているのに、目だけは笑っていない……一番怒っている時の顔をしていたのは、俺の見間違いだったんじゃないかと思ってしまう。
浮かんだ疑問は問いかけとして、自然と口から出てしまっていた。
「一応確認するが、本当にやるのか?」
瞬間、空気が変わった。
「……何? 今さら逃げるの?」
ソルの顔から笑顔が消える。だけなら、まだ良かった。
まるで鉄仮面のようだ。表情は抜け落ち、ただ刃の切っ先のように鋭くなった瞳だけが、ギラリと俺を見据えている。
ああ、やっぱり怒っているんだな、貴様は。本気で。
こういう時に驚きや心配よりも、血が騒いでしまうのが、いけないのだろう。
自覚は、反省はあれど、口角が上がっていくのが抑えられない。久しぶりに、本気の親友と剣を交えることに、仄かな喜びを感じてしまう。
手離しかけていた柄を握り直す。射殺すようなオレンジの瞳を、正面から受け止めた。
「悪かったなソル、今のは忘れてくれ。貴様の本気に、俺も全力で応えるとしよう」
「そうこなくっちゃ! じゃあ、行くよ」
0
お気に入りに追加
128
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店
ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。
淫紋付けたら逆襲!!巨根絶倫種付けでメス奴隷に堕とされる悪魔ちゃん♂
朝井染両
BL
お久しぶりです!
ご飯を二日食べずに寝ていたら、身体が生きようとしてエロ小説が書き終わりました。人間って不思議ですね。
こういう間抜けな受けが好きなんだと思います。可愛いね~ばかだね~可愛いね~と大切にしてあげたいですね。
合意のようで合意ではないのでお気をつけ下さい。幸せラブラブエンドなのでご安心下さい。
ご飯食べます。
先生を誰が先に孕ませるかゲーム
及川雨音
BL
複数ショタ×おっぱい有りマッチョ両性具有先生総受け
おっぱいとおしりがデカいむちむちエロボディー!
強姦凌辱調教洗脳脅迫誘導だけど愛があるから大丈夫!
ヤンデレ気味なショタたちに毎日日替わりで犯されます!
【書いていくうちに注意事項変わりますので、確認してからお読みいただくよう、お願い致します】
*先生の肉体は淫乱なのですぐ従順になります。
*淫語強要されます。
*複数プレイ多め、基本は一対一です。ギャラリーがいるのはプレイの一環です。ある意味チームプレイです。
*詳しい女性器・生理描写が有ります。
*ゴミを漁る、トイレ盗撮、ハッキングなど犯罪とストーカー行為をナチュラルにしています。
*相手により小スカ、飲尿、おもらし、強制放尿有ります。
*相手により赤ちゃんプレイ、授乳プレイ有ります。
*パイズリ有り。
*オモチャ、拘束器具、クスコ、尿道カテーテル、緊縛、口枷、吸引機、貞操帯もどき使います。
*相手によりフィストファック有ります。
*集団ぶっかけ有り。
*ごく一般的な行動でも攻めにとってはNTRだと感じるシーン有ります。
*二穴責め有り
*金玉舐め有り
*潮吹き有り
【BL】SNSで人気の訳あり超絶イケメン大学生、前立腺を子宮化され、堕ちる?【R18】
NichePorn
BL
スーパーダーリンに犯される超絶イケメン男子大学生
SNSを開設すれば即10万人フォロワー。
町を歩けばスカウトの嵐。
超絶イケメンなルックスながらどこか抜けた可愛らしい性格で多くの人々を魅了してきた恋司(れんじ)。
そんな人生を謳歌していそうな彼にも、児童保護施設で育った暗い過去や両親の離婚、SNS依存などといった訳ありな点があった。
愛情に飢え、性に奔放になっていく彼は、就活先で出会った世界規模の名門製薬会社の御曹司に手を出してしまい・・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる