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マッチョな先輩と恋人同士になった件(サルファールート)
放課後の決闘
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「よしっ」
満足そうに笑うダンは、もういつもの明るく元気な彼だった。また、俺の頭を撫でてくれる。
最後に気合を入れてくれるみたいに、背中をぽんっと叩いてから、繋いでいる手に力を込めた。
「んじゃ、行くぞ。あんまり持たせちまうとよくないだろ」
「だね。ソレイユ先輩は、臨機応変に対応できる人だけれど……」
「……え? ダン、ライも……そこまで分かってるの?」
ソレイユ先輩に助けてもらっているなんて、俺、一言も。
「今朝、相棒のことフォローしてただろ」
「わざわざ、早く合流してまでね。流石に分かるよ」
「そっか……」
二人に勘づかれているんだったら、サルファー先輩にも……
過った不安すら、ライとダンはお見通しらしかった。
「ああ、でもサルファー先輩は気づいてないと思うよ。だから大丈夫だよ、心配しないで」
「……それどころじゃねぇだろうしな」
ライが俺の手を擦ってくれながら、明るい声と笑顔で俺を安心させようとしてくれる。ダンが何か呟いていたけれど、上手く聞き取れなかった。
道中でも、ダンとライは定期的に「大丈夫だ」と「きっと全部上手くいくよ」と励ましてくれた。心強い二人のお陰で、俺は練習場に辿り着くことが出来た。
すると、何故か練習場を囲むように人だかりが出来ていた。
ざわざわと群がっている人混みには、明らかに普段練習場を使わない、一般の生徒達も混じっている。
「おいおい、どうなってんだ?」
「これじゃあ、先輩達が何処にいるのかも分からないね……」
「どうしよう……あっ!」
少し離れた所に見覚えのある顔が。何度か話したことのある、同学年の剣術部員を見つけた。手短に二人に説明してから近づき、声をかけてみる。
「なぁ、何かあったのか?」
「おっ、ようやく主役の登場だな! ほらほら特等席に行くぞ! 先輩達が、首を長くして待ってるんだからなっ!」
彼は、手招きをしながら、俺達を先導するように人だかりの中心へと駆けていく。
何が何だか分からないが、俺達も続くことに。人混みに近づいたところで、俺に気付いた他の部員達が、微笑みながら道を開けてくれた。
「おいっ! お前! どういうことだよ? 相棒が主役って……ちゃんと説明しろ!」
「先輩達って、ソレイユ先輩とサルファー先輩のことですか?」
困惑している俺に代わり、ダンが、ライが尋ねてくれる。
「ああ、そうさ。ソレイユ先輩が、サルファー先輩に決闘を申し込んだんだよ! お前が原因だって、もっぱらの噂だぜ?」
「決闘!?」
俺の声に被さるように、ダンとライも驚きの声を上げる。
先輩が言ってた、お楽しみって……まさか、これのことなのか?
俺達が呆然としている間も、彼は生き生きと続ける。
「お前、先輩達と仲良かっただろ? だから、お前をかけての決闘だろうって、皆大盛り上がりしちゃってさ」
どうやら彼は、イベントとして楽しんでいるみたいだった。
集まっている皆もだろう。どうりで、剣術部員以外にも見たこともない人達が、ちらほら混じっていた訳だ。
「……相棒をかけてって……何考えてんだよ…………もし、これ以上……シュンを泣かせるようなことしやがったら……」
「……ダン」
繋いだ手のひらから震えが伝わってくる。ダンが、俺の為に怒ってくれている。その優しさだけで、俺は。
「……ありがとう、大丈夫……大丈夫だよ」
「…………」
精一杯、微笑みかけてみたけれど、逆に心配をかけてしまったんだろうか。真っ赤な瞳が、見開いて、伏せられた。代わりに繋いだ手に力がこもる。
ライにも、また心配をかけてしまったみたい。今にも泣いてしまいそうな瞳で、俺を見つめていた。
俺は、もう一度「大丈夫だよ」と微笑みかけてみた。上手くは出来ていなかったみたいだ。
不意に人混みが開けた。人垣の輪が囲んでいる中心、石畳で出来た練習場の真ん中に、二人はいた。
サルファー先輩とソレイユ先輩が、各々剣を手に対峙していた。
満足そうに笑うダンは、もういつもの明るく元気な彼だった。また、俺の頭を撫でてくれる。
最後に気合を入れてくれるみたいに、背中をぽんっと叩いてから、繋いでいる手に力を込めた。
「んじゃ、行くぞ。あんまり持たせちまうとよくないだろ」
「だね。ソレイユ先輩は、臨機応変に対応できる人だけれど……」
「……え? ダン、ライも……そこまで分かってるの?」
ソレイユ先輩に助けてもらっているなんて、俺、一言も。
「今朝、相棒のことフォローしてただろ」
「わざわざ、早く合流してまでね。流石に分かるよ」
「そっか……」
二人に勘づかれているんだったら、サルファー先輩にも……
過った不安すら、ライとダンはお見通しらしかった。
「ああ、でもサルファー先輩は気づいてないと思うよ。だから大丈夫だよ、心配しないで」
「……それどころじゃねぇだろうしな」
ライが俺の手を擦ってくれながら、明るい声と笑顔で俺を安心させようとしてくれる。ダンが何か呟いていたけれど、上手く聞き取れなかった。
道中でも、ダンとライは定期的に「大丈夫だ」と「きっと全部上手くいくよ」と励ましてくれた。心強い二人のお陰で、俺は練習場に辿り着くことが出来た。
すると、何故か練習場を囲むように人だかりが出来ていた。
ざわざわと群がっている人混みには、明らかに普段練習場を使わない、一般の生徒達も混じっている。
「おいおい、どうなってんだ?」
「これじゃあ、先輩達が何処にいるのかも分からないね……」
「どうしよう……あっ!」
少し離れた所に見覚えのある顔が。何度か話したことのある、同学年の剣術部員を見つけた。手短に二人に説明してから近づき、声をかけてみる。
「なぁ、何かあったのか?」
「おっ、ようやく主役の登場だな! ほらほら特等席に行くぞ! 先輩達が、首を長くして待ってるんだからなっ!」
彼は、手招きをしながら、俺達を先導するように人だかりの中心へと駆けていく。
何が何だか分からないが、俺達も続くことに。人混みに近づいたところで、俺に気付いた他の部員達が、微笑みながら道を開けてくれた。
「おいっ! お前! どういうことだよ? 相棒が主役って……ちゃんと説明しろ!」
「先輩達って、ソレイユ先輩とサルファー先輩のことですか?」
困惑している俺に代わり、ダンが、ライが尋ねてくれる。
「ああ、そうさ。ソレイユ先輩が、サルファー先輩に決闘を申し込んだんだよ! お前が原因だって、もっぱらの噂だぜ?」
「決闘!?」
俺の声に被さるように、ダンとライも驚きの声を上げる。
先輩が言ってた、お楽しみって……まさか、これのことなのか?
俺達が呆然としている間も、彼は生き生きと続ける。
「お前、先輩達と仲良かっただろ? だから、お前をかけての決闘だろうって、皆大盛り上がりしちゃってさ」
どうやら彼は、イベントとして楽しんでいるみたいだった。
集まっている皆もだろう。どうりで、剣術部員以外にも見たこともない人達が、ちらほら混じっていた訳だ。
「……相棒をかけてって……何考えてんだよ…………もし、これ以上……シュンを泣かせるようなことしやがったら……」
「……ダン」
繋いだ手のひらから震えが伝わってくる。ダンが、俺の為に怒ってくれている。その優しさだけで、俺は。
「……ありがとう、大丈夫……大丈夫だよ」
「…………」
精一杯、微笑みかけてみたけれど、逆に心配をかけてしまったんだろうか。真っ赤な瞳が、見開いて、伏せられた。代わりに繋いだ手に力がこもる。
ライにも、また心配をかけてしまったみたい。今にも泣いてしまいそうな瞳で、俺を見つめていた。
俺は、もう一度「大丈夫だよ」と微笑みかけてみた。上手くは出来ていなかったみたいだ。
不意に人混みが開けた。人垣の輪が囲んでいる中心、石畳で出来た練習場の真ん中に、二人はいた。
サルファー先輩とソレイユ先輩が、各々剣を手に対峙していた。
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