上 下
119 / 441
マッチョな先生と恋人同士になった件(グレイルート)

★ だったら、いいじゃないか、離れなくても

しおりを挟む
 柔らかく微笑む唇が、何度も口づけてくれている。小さなリップ音を鳴らす合間に「大丈夫?」と、「痛いところはない?」と尋ねながら。

 何度も頷いても、「大丈夫ですよ」と微笑んでも。乱れきっていたお互いの息が、鼓動が、落ち着いてきても。先生からの甘い気遣いが終わる気配はない。

 シワだらけで、少し湿ったシーツの上に、四肢を投げ出している俺を腕の中に収めたまま、厚みのある手のひらで、腰を労るように撫でてくれている。

「ごめんね……もっと優しくするつもりだったのに」

「気にしないで下さい……先生は、十分優しくしてくれてましたよ? そもそも……俺が、先生の好きにしてって言ったんですし……それに……」

 優しい手の動きが止まる。少し見開いた青の瞳に俺が映っている。多分、真っ赤になってるんだろうな。

「それに俺、先生に抱いてもらっている間、ずっと嬉しくて、幸せで……スゴく……気持ちよかったから……」

 すでに高鳴り始めていた心音が、また大きく跳ねることになるとは。

「…………」

 尖った喉が上下に動いたかと思えば、あそこも動いた。いまだに、俺の奥まで届いている先生のものが、トクンと脈打つ。

 ……あ、少しだけ……大きくなったような……

「ご、ごめん……今、抜くね……」

 白い頬を赤く染めながら、焦りながらも、ゆっくり俺の中から出ようとする先生。途端に、寂しくなってしまっていた。晴れ渡っていたハズの心が曇っていく。

 離れていってしまった頼もしい腕、俺の中から離れていこうとしている熱。それらが、スゴく名残惜しくて。

「先生は、どう……だったんですか?」

 気がつけば、分厚い胸板に抱きついてしまっていた。

「シュン、君?」

「……気持ちよかった、ですか?」

 見上げた先で、戸惑っていた青い瞳。少し瞬いて、すぐにゆるりと微笑んでくれる。太い腕が、俺の背を包み込んでくれる。

「……うん、とても気持ちよかったよ……私も、幸せだった。嬉しかったよ、君に受け入れてもらえて……」

 だったら、いいじゃないか。離れなくても。もっと、深く抱き締めてくれたって。

「でも、足りてない……ですよね?」

「っ……それは……」

 目を丸くした先生の唇は震えていた。何か言おうとして、でも堪えなければと思っているんだろう。先生らしいな。引くつもりはないけれど。

「俺も、です……まだ、先生と繋がっていたい……先生を感じていたいんです……」

 先生からもらえた言葉に、すっかり俺は強気になっていた。

 このまま押せばイケる。だって、俺を見つめる眼差しには、あの時の熱が。俺を求めてくれた時の光が、宿っているんだから。

「シュン……」

「お願いします、グレイさん……もう一度、俺を抱いてくれませんか?」

 名前を呼ばれるのは、さすがに想定外だったんだろう。先生の顔が、ますます真っ赤に染まっていく。面白いくらいに。

 よっぽど喜んでもらえたんだろうか。あっちも反応してくれた。俺の中にある熱が、大きく震えている。もう、硬さを取り戻してくれたかも。

「……シュン」

「……はい」

「……もう一回、呼んで……くれないかい?」

「……はい、グレイさん」

 ゆっくり大事に彼の名前を紡いでいく。ありったけの想いと愛を込めて。

 勢いよく抱き締められる。嬉しい。ほんの少しの息苦しささえ、喜びに変わっていく。強く彼に求められているんだと、実感できる。

「……本当に……君は、私をたぶらかす天才だね……」

 震えた声で囁くグレイさんが、腕の力を緩め、俺と目線を合わせてくれるように逞しい背を曲げた。

 擦り寄ってきた額が、鼻の先が熱い。また映れた、透き通った青。晴れ渡る空のように澄んだ瞳は、煌めいていた。薄っすら張られた、透明な涙の膜によって。

「たった一言だけで……こんなにも私の心は、かき乱されてしまう……もう、君なしでは生きていけないよ」

 俺だって。俺だって、もうグレイさんなしじゃ。グレイさんのいない日々なんて。

「……大丈夫ですよ、ずっとグレイさんの側にいますから。この指輪に誓って」

「……シュン」

 彼の前に左手を差し出す。薬指の根本で輝く彼との証。ペアリングが見えるように。

 大きな手が、俺の手を取り重ねてくれた。俺の方から指を絡めれば、強く握り返してくれた。離さないって言ってくれているみたいに。

「愛してます、グレイさん」

 微笑みかけて、重ねた唇は震えていた。「私も」だと、「愛してるよ」と返してくれた声も。抱き締めてくれた腕も。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店

ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。

淫紋付けたら逆襲!!巨根絶倫種付けでメス奴隷に堕とされる悪魔ちゃん♂

朝井染両
BL
お久しぶりです! ご飯を二日食べずに寝ていたら、身体が生きようとしてエロ小説が書き終わりました。人間って不思議ですね。 こういう間抜けな受けが好きなんだと思います。可愛いね~ばかだね~可愛いね~と大切にしてあげたいですね。 合意のようで合意ではないのでお気をつけ下さい。幸せラブラブエンドなのでご安心下さい。 ご飯食べます。

男子学園でエロい運動会!

ミクリ21 (新)
BL
エロい運動会の話。

[R18] 20歳の俺、男達のペットになる

ねねこ
BL
20歳の男がご主人様に飼われペットとなり、体を開発されまくって、複数の男達に調教される話です。 複数表現あり

バイト先のお客さんに電車で痴漢され続けてたDDの話

ルシーアンナ
BL
イケメンなのに痴漢常習な攻めと、戸惑いながらも無抵抗な受け。 大学生×大学生

ショタ18禁読み切り詰め合わせ

ichiko
BL
今まで書きためたショタ物の小説です。フェチ全開で欲望のままに書いているので閲覧注意です。スポーツユニフォーム姿の少年にあんな事やこんな事をみたいな内容が多いです。

おとなのための保育所

あーる
BL
逆トイレトレーニングをしながらそこの先生になるために学ぶところ。 見た目はおとな 排泄は赤ちゃん(お漏らししたら泣いちゃう)

処理中です...