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マッチョな先生と恋人同士になった件(グレイルート)

いくつものお揃い

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 僅かに見開いて、でもすぐに微笑んでくれた。

 とろりと細められた眼差し。言葉にしなくても、見つめてもらえるだけで、好きだって伝わってくるような。

「本当に君は……ますます虜になってしまったよ……」

「……じゃあ、お揃いですね」

「……え?」

「だって、俺……ずっと前から先生の虜ですもん……ずっと大好きですから……」

 不意に、全身に感じた重み。逞しい体躯にのしかかられて、太い腕から抱き締められていた。

 俺の頬に、しっとりとした先生の頬が擦り寄せられる。すりすり動く度に、サラサラの髪が揺れて、素肌に触れて、少しだけ擽ったい。

 でも、嬉しい。なんだか、甘えてもらえているみたいだ。

「ふふ……あはっ……先生、可愛い……」

 広い背中に腕を回そうとしたところで起き上がり、少しだけ離れてしまった先生との距離。気恥かしそうな、どこか拗ねたような瞳が見つめてくる。

 いくらなんでも失礼だったかな。大人な男の人に、可愛いって。

「っあ、あの! 常日頃、カッコいいなって思ってるんですよ! 逞しい身体もですけど、俺、結構重いだろうに簡単に抱っこしてくれたり……いつも笑顔で、包容力があるとことか……それから、渋くて色っぽいな、とも思って……」

 反射的に触れていた、先生の頬。包み込むように添えていた両手に、くすくすと細かい震えが伝わってくる。

 捲し立ててしまっていた俺の口に、優しく触れてくれた唇が、笑みを深くした。

「……先生?」

「……本当に君には敵わないね」

 噛み締めるように呟いて、瞳を伏せる。ひと回り大きな手のひらが、俺の手の甲に重なった。

 再び絡んだ視線。ゆっくりとこちらを向いた青の眼差しは、少しだけ照れくさそう。けれども、柔らかい光を湛えていて、スゴくキレイだった。

「……ありがとう、いっぱい褒めてくれて。それから、気にしなくていいよ。君に褒めてもらえるなら、どんな言葉だって嬉しいからね」

「良かった……先生みたいなカッコいい人に可愛いって失礼かなって……あ、でも、さっきの先生は目茶苦茶可愛かったですよ!」

「ふふ、ありがとう」

 嬉しそうに瞳を細めて、俺の手のひらに擦り寄ってくれる。やっぱり可愛い。

 でも、良かった……同じで。俺も、先生から褒めてもらえるならどんな言葉だって……

「あ」

「どうかしたのかい?」

 気づいてしまった。そう言えば、伝えてないよなって。

 思ってしまった。俺だけ伝えないのは、フェアじゃないよなって。

 だから、口を開いた。不思議そうに見つめる青の瞳を見つめながら。

「いや……その、俺も……嬉しいですから。先生に可愛いって褒めてもらえるの……」

 顔が見る見るうちに熱くなってしまう。徐々に視線が落ちていってしまう。

「だから、これからもいっぱい褒めて欲し……んっ」

 それでもどうにか伝えようとして、伝えきれそうになった時、柔らかい熱に遮られた。

 ついばむように何度も重ねてくれていた唇が、離れていく。かと思えば、額に、頬に、鼻の頭にと、たくさんのキスを送ってくれる。

「可愛い……可愛いよ、私のシュン……」

「あ……先生」

「……他には? 他には、どうしたらシュンに喜んでもらえるのかい? 私に出来ることなら、なんでもしてあげるよ」

 柔らかい笑顔。熱のこもった眼差し。少しトーンの低い甘い囁やき。どれも魅力的で、溺れそうになってしまう。

 揺らいでしまう。俺が先生を喜ばせるんだって決意が。

「……っ……嬉しいですけど……でも、俺……まだ先生に喜んでもらえてないから……」

「……シュンは、私を喜ばせようと……してくれていたのかい?」

「はい……その、先生……俺が先生の手で気持ちよくなれたら嬉しいって言ってくれたから……だから……」

 そこで気がついてしまった。

「……あっ」

「シュン?」

「あ、いや……俺も先生に触ってもらえたら嬉しいから……一緒、かなって……」

 静かになったのは、自分の鼓動しか聞こえなくなったのは一瞬だった。

「ん……んっ、ふ……」

 吐息を奪うような口づけの後に、少し離れた唇が悪戯っぽく笑う。

「じゃあ、いっぱい触って気持ちよくしてあげるね……シュンに喜んでもらえるように」
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