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マッチョな先生と恋人同士になった件(グレイルート)
彼が込めた想い
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不意に、視線を感じた。隣で絵を眺めていた、お客さんだ。俺が気づくと視線を逸らしたものの、何やらこそこそ二人で話している。そんなに大きな声だったっけ。
他のお客さん達もだ。すれ違い様に、はっとした顔で俺を見てくる。しかも何故か、驚いた後は決まってクスリと微笑まれた。
何なんだ? さっきから色んな人に、チラチラ見られているような気が。
ただ、幸いというかなんというか、その視線は悪意に満ちたものではなかったんだ。むしろ好意的というか、優しい眼差しで……何だかとてもむず痒い。
先生は、気づいていないのかな。というか、スミスさんと別れてから、全然目が合わないんだけど。かといって絵を眺めてる訳ではないんだよな。俺が、見られるくらいの速度で歩いてはくれているけど。
目的地に、まっしぐらって感じだな。頭の中が、いっぱいいっぱいみたいな? 緊張してるのかな。
原因は分かっている。先生が、俺に見せたいっていう絵だ。それしか考えられない。でも。
美術館に着いてから、疑問ばかり。だけど、それらが全部繋がっていたなんて。
しばらくして着いた、少し広めのフロア。そこで一際、人が集まっているところへ、一番目立つ場所に飾られた絵の前に、先生が俺の手を引き、連れて行く。
「……これって」
木製のシンプルな額縁に収められた、大きなキャンバス。そこに描かれていたのは黒髪黒目の男性。焦げ茶色の一人がけのソファーに座り、穏やかな笑みを浮かべている。
優しいタッチで描かれた絵画から伝わってくる。描き手の、あふれんばかりの愛情が。祈りにも似た、慈しむ想いが。
見覚えしかない。見間違えるハズがなかった。だって、あのアトリエは、先生と過ごした放課後は、俺にとっては、幸せでしかなくて。
息が上手く出来なくて。目の奥が熱くて仕方がなくて。唇を噛み締めそうになっていた俺の手から、温もりが離れていってしまう。思わず顔を上げた先で、青い瞳に微笑まれた。
大きな手のひらが、そっと俺の肩を掴んだ。抱き寄せられて、逞しい胸元に寄りかかってしまう。
「……完成したら、君に一番に見せるつもりだったんだけどね。その前に、アトリエを訪れた館長さんに見つかってしまってね。断りきれなかったんだよ」
込み上げる熱を、堪えられなくなってしまう。彼の服を、濡らしてしまう。頬を優しく持ち上げられた。ボヤけかかった視界に、柔らかい微笑みが。大好きなグレイ先生が映った。
「展示が終わったら君に渡したいんだけど、受け取ってくれるかい?」
心が、喉が震えて言葉が出ない。こぼれるのは、声にならない喜びだけ。
それでも、どうにか伝えようと何度も頷く。震える俺の手を、両手で包み込むように握ってくれた先生が、花の咲くような笑顔を浮かべた。
他のお客さん達もだ。すれ違い様に、はっとした顔で俺を見てくる。しかも何故か、驚いた後は決まってクスリと微笑まれた。
何なんだ? さっきから色んな人に、チラチラ見られているような気が。
ただ、幸いというかなんというか、その視線は悪意に満ちたものではなかったんだ。むしろ好意的というか、優しい眼差しで……何だかとてもむず痒い。
先生は、気づいていないのかな。というか、スミスさんと別れてから、全然目が合わないんだけど。かといって絵を眺めてる訳ではないんだよな。俺が、見られるくらいの速度で歩いてはくれているけど。
目的地に、まっしぐらって感じだな。頭の中が、いっぱいいっぱいみたいな? 緊張してるのかな。
原因は分かっている。先生が、俺に見せたいっていう絵だ。それしか考えられない。でも。
美術館に着いてから、疑問ばかり。だけど、それらが全部繋がっていたなんて。
しばらくして着いた、少し広めのフロア。そこで一際、人が集まっているところへ、一番目立つ場所に飾られた絵の前に、先生が俺の手を引き、連れて行く。
「……これって」
木製のシンプルな額縁に収められた、大きなキャンバス。そこに描かれていたのは黒髪黒目の男性。焦げ茶色の一人がけのソファーに座り、穏やかな笑みを浮かべている。
優しいタッチで描かれた絵画から伝わってくる。描き手の、あふれんばかりの愛情が。祈りにも似た、慈しむ想いが。
見覚えしかない。見間違えるハズがなかった。だって、あのアトリエは、先生と過ごした放課後は、俺にとっては、幸せでしかなくて。
息が上手く出来なくて。目の奥が熱くて仕方がなくて。唇を噛み締めそうになっていた俺の手から、温もりが離れていってしまう。思わず顔を上げた先で、青い瞳に微笑まれた。
大きな手のひらが、そっと俺の肩を掴んだ。抱き寄せられて、逞しい胸元に寄りかかってしまう。
「……完成したら、君に一番に見せるつもりだったんだけどね。その前に、アトリエを訪れた館長さんに見つかってしまってね。断りきれなかったんだよ」
込み上げる熱を、堪えられなくなってしまう。彼の服を、濡らしてしまう。頬を優しく持ち上げられた。ボヤけかかった視界に、柔らかい微笑みが。大好きなグレイ先生が映った。
「展示が終わったら君に渡したいんだけど、受け取ってくれるかい?」
心が、喉が震えて言葉が出ない。こぼれるのは、声にならない喜びだけ。
それでも、どうにか伝えようと何度も頷く。震える俺の手を、両手で包み込むように握ってくれた先生が、花の咲くような笑顔を浮かべた。
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