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マッチョな先生と恋人同士になった件(グレイルート)
俺が、恥ずかしくて言えなかったことを、いとも容易く
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「お待たせしました」
助手席に乗り込んで、再びシートベルトを締める。ふと感じた視線の方へ顔を向ければ、先生がぼんやりと俺を見つめていた。
形のいい唇を薄く開けたまま、ぴくりとも動かない。青く長い睫毛すら。
「……グレイ先生? どうかしましたか?」
不思議に思って声をかければ、ようやくピクリと幅広い肩が動く。ゴツゴツした大人の手が、俺に向かって伸びてきた。頬を優しく撫でてくれてから、瞳を細める。
「……ごめんね。シュン君が、あまりにも可愛いから……つい見惚れちゃってたんだよ」
「う……ありがとう、ございます」
俺が、恥ずかしくて言えなかったことを、いとも容易く。こういうところ、何だよな。大人の余裕を感じるっていうか。違いを見せつけられてるっていいうかさ。
少しだけ、妙な敗北感を抱いてしまった。
けれども、あっさりと喜びの方が勝っていく。口元が、だらしなく緩んでしまう。素直な気持ちが、ぽろぽろと口からこぼれていく。
「……俺も、見惚れちゃってました」
「……え?」
「服装も、ですけど……さっき、運転してるの、カッコいいなって……その……ずっと、見ちゃって……」
また先生が固まった。丸くなった青い瞳が、俺を見つめ続けている。なんか、気まずい。目茶苦茶。
「……えっと、ごめんな……んむっ」
思わず口にしかけていた謝罪を遮られる。柔らかい唇で、こぼれそうな喜びを湛えた唇で塞がれて。
「ふ、ん…………は、先生……」
触れ合えたのは、ほんの数回。けれども全身に響くくらいに胸が高鳴るのには、頭が浮かれた熱でぽやぽやしてしまうのには、十分で。上擦った声を出してしまっていた。
ジンと疼く唇には、まだ少し、大好きな温もりが残っている。余韻に浸り、柔らかい微笑みを、ただただ見つめる。そんな俺を映している青い瞳が、ますますとろりと微笑んだ。
「ごめんね。私の恋人が、あんまりにも愛らしいことを言うものだから、ついね」
「っ……し、仕方ないじゃないですか……だって、先生、いつもカッコい……んっ」
また塞がれた。変な責任転換をしたからなのか、今度は一回。でも、さっきよりも長めに、重ねられた。
太い指が、俺の髪を梳くように撫でてくれる。ゆっくり離れていってしまった唇が、俺の頬にそっと触れた。
「……本当に、可愛い」
背筋が甘く震えてしまう。トーンの低い声に囁かれて、熱を帯びた眼差しで見つめられて。
忘れてしまう。ここが車の中だって、通りがかりの誰かに見られてしまうかもしれないって。
「……先生」
「ふふ、大丈夫だよ。今はまだ、これ以上しないから。帰ってから、ゆっくり続きをしようね」
「…………はい、お願い……します……」
もう一度、額にキスをくれてから、先生がシートベルトを締める。前を向いてしまった先生は、もういつもの先生だった。艷やかな雰囲気は、微塵もない。穏やかに微笑んでいる。
……ちょっとくらい、手を出してくれても良かったのに。
エンジン音と、名前は知らないけれど聞き馴染みのあるクラシック。それらに紛れて、まだ鳴り続けている鼓動。ドキドキと響くそれを聞こえないフリして、窓の外へ視線を向けた。
助手席に乗り込んで、再びシートベルトを締める。ふと感じた視線の方へ顔を向ければ、先生がぼんやりと俺を見つめていた。
形のいい唇を薄く開けたまま、ぴくりとも動かない。青く長い睫毛すら。
「……グレイ先生? どうかしましたか?」
不思議に思って声をかければ、ようやくピクリと幅広い肩が動く。ゴツゴツした大人の手が、俺に向かって伸びてきた。頬を優しく撫でてくれてから、瞳を細める。
「……ごめんね。シュン君が、あまりにも可愛いから……つい見惚れちゃってたんだよ」
「う……ありがとう、ございます」
俺が、恥ずかしくて言えなかったことを、いとも容易く。こういうところ、何だよな。大人の余裕を感じるっていうか。違いを見せつけられてるっていいうかさ。
少しだけ、妙な敗北感を抱いてしまった。
けれども、あっさりと喜びの方が勝っていく。口元が、だらしなく緩んでしまう。素直な気持ちが、ぽろぽろと口からこぼれていく。
「……俺も、見惚れちゃってました」
「……え?」
「服装も、ですけど……さっき、運転してるの、カッコいいなって……その……ずっと、見ちゃって……」
また先生が固まった。丸くなった青い瞳が、俺を見つめ続けている。なんか、気まずい。目茶苦茶。
「……えっと、ごめんな……んむっ」
思わず口にしかけていた謝罪を遮られる。柔らかい唇で、こぼれそうな喜びを湛えた唇で塞がれて。
「ふ、ん…………は、先生……」
触れ合えたのは、ほんの数回。けれども全身に響くくらいに胸が高鳴るのには、頭が浮かれた熱でぽやぽやしてしまうのには、十分で。上擦った声を出してしまっていた。
ジンと疼く唇には、まだ少し、大好きな温もりが残っている。余韻に浸り、柔らかい微笑みを、ただただ見つめる。そんな俺を映している青い瞳が、ますますとろりと微笑んだ。
「ごめんね。私の恋人が、あんまりにも愛らしいことを言うものだから、ついね」
「っ……し、仕方ないじゃないですか……だって、先生、いつもカッコい……んっ」
また塞がれた。変な責任転換をしたからなのか、今度は一回。でも、さっきよりも長めに、重ねられた。
太い指が、俺の髪を梳くように撫でてくれる。ゆっくり離れていってしまった唇が、俺の頬にそっと触れた。
「……本当に、可愛い」
背筋が甘く震えてしまう。トーンの低い声に囁かれて、熱を帯びた眼差しで見つめられて。
忘れてしまう。ここが車の中だって、通りがかりの誰かに見られてしまうかもしれないって。
「……先生」
「ふふ、大丈夫だよ。今はまだ、これ以上しないから。帰ってから、ゆっくり続きをしようね」
「…………はい、お願い……します……」
もう一度、額にキスをくれてから、先生がシートベルトを締める。前を向いてしまった先生は、もういつもの先生だった。艷やかな雰囲気は、微塵もない。穏やかに微笑んでいる。
……ちょっとくらい、手を出してくれても良かったのに。
エンジン音と、名前は知らないけれど聞き馴染みのあるクラシック。それらに紛れて、まだ鳴り続けている鼓動。ドキドキと響くそれを聞こえないフリして、窓の外へ視線を向けた。
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