気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件~恋人ルート~

白井のわ

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マッチョな先生と恋人同士になった件(グレイルート)

先生が嫉妬してくれたんだが?

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 すっかり日が傾き始めた頃、大きなビニール袋を片手に先生が部屋に戻ってきた。

 正直、その緩く広げられた男らしい腕の中に飛び込みたい。今すぐ。セレストさんの前だから、我慢するけどさ。

 せめて大歓迎な意思を示そうと、俺的にはとびきりの笑顔で迎えた。

「おかえりなさいっ、グレイ先生」

「お疲れ様、遅かったな」

「ただいま、シュン君。セレストも助かったよ……随分仲良くなったみたいだね?」

 肩を寄せ合いながらソファーに座る俺達を見て、先生が微笑んだ。

 気のせい、だよな? どことなく、先生の目が笑っていない様に見えるんだが……

「うむ! お陰様で、たっぷり親睦を深めさせてもらったよ! はっはっは」

 俺の肩に腕を回しながら、セレストさんが耳元で小さく囁く。

「良かったな……グレイのやつ、嫉妬しているぞ」

 ああ、それで。先ほど感じた違和感の正体に、だらしなく口元が緩みそうになってしまう。顔が熱くなってしまう。

 ふにゃふにゃな口を慌てて手で覆っている内に、つかつかと足早に先生が歩み寄ってくる。

 表情は穏やかなままだけど、何だか悪化しているような。それは、態度からも明らかだった。

 お土産らしき袋を、ローテーブルの上に無造作に置いただけじゃない。セレストさんを、力任せに押し退けたんだ。

「……せ、先生?」

 ……怒られるんだろうか。

 身構えていた俺の予想は、ものの見事に外れた。それも斜め上に。

 無言のまま、俺を抱き上げたかと思えば、胸元に顔を埋めてくる。先生が、だ。包容力抜群で、大人な先生が、俺に。

「えっと……お疲れ様です。よく頑張りましたね」

 きっと先生も疲れたんだろう。いきなりの休日出勤だったもんな。

 突然の行動に、そう結論づけた俺は、少しでも彼の癒やしになれるように、両手で頭を撫でてみた。いつも先生が俺にしてくれているみたいに、とびきり優しく。

 長い髪を梳くように撫でていると、先生が頭をぐりぐり押しつけ、擦り寄ってきた。なにこの生き物……めっちゃ可愛いんだが。

「……ふむ。では今度こそ、お邪魔虫はさっさとお暇するとしようかね」

 先生の仕草にときめいている間に、セレストさんが扉の前に立っていた。

 セレストさんが、今にも部屋を後にしようとしていたからだろう。だんまりを決め込んでいた先生が渋々といった感じで口を開く。

「……夕飯、食べていかなくていいのかい?」

「気にするな。私の分の弁当は、すでに頂いたからな」

 俺に頬を寄せたままの先生に、セレストさんが、これまたいつ手にしていたのか、黒い長方形の箱を掲げて見せた。

 続けて、ローテーブル上の袋を指し示す。お土産の正体は、俺達三人の夕ご飯だったようだ。

「君が留守の間、文句も言わずに待ってたんだ。責任をもって、しっかり彼に埋め合わせをしたまえ」 

「……君に言われるまでもないよ」

「うむっ、いい返事だな! では、またな!」

 片手をヒラヒラ振りながら俺に目配せすると、セレストさんは振り向くことなくスタスタと部屋から出ていった。
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