63 / 509
マッチョな先生と恋人同士になった件(グレイルート)
なんつーもんを持ち歩いてんだ、この人は
しおりを挟む
「……グレイ先生が、そう言ってたんですか?」
そこまで言うつもりは、なかったんだろうか。俺が尋ねると、ばつが悪そうにセレストさんが眉間のシワを深くした。
じっと見つめると、セレストさんの瞳が迷うように泳ぐ。もともと乱れていた髪を、さらにわしゃわしゃかき混ぜてから、両手を軽く上げて降参のポーズを取った。
「……君が卒業するまではな。教職者としてのけじめらしいが……私が思っていた以上に決意が固そうだ。こればかりは君が強請っても無理だろう」
卒業するまでって……俺が強請っても無理って……そんな……
「で、でも……昨日は俺のこと触ってくれましたよ? 俺が気持ちよくなれたら嬉しいって、喜んでくれて……」
「ふむ……一応、手は出してもらえていたか。だが、結局最後まで致してもらえなかったんだろう? 君だけスッキリさせられて終わったんじゃないか?」
まるで、見ていたようなもの言いだ。いや、その通りなんだけどさ。
「うっ……」
「図星のようだな。つまりは、そういうことだ。君が卒業するまで、それでやり通すつもりなんだろう」
じゃあ、ホントに昨日みたいに俺だけのまま過ごさないといけないのか? 俺が卒業するまで、ずっと?
ますます生殺しになっただけじゃないか。軽いスキンシップだけの関係から、大幅にステップアップ出来たかと思っていたのに。
セレストさんが、項垂れる俺の背中を、ぽんぽんと叩いてくれる。しばらく宥めてくれた後、不意に手を取られる。白衣のポケットから掌サイズのチューブを取り出したかと思えば、俺に握らせた。
「そこでだ、君にこれを渡しておこう」
「……何ですか、これ?」
塗り薬、だろうか。見たことのないラベルだ。
っていうか、何で今? 別に俺、擦り傷も、かぶれもないけれど。
指に挟んで裏表をくるくる回しながら、しげしげ眺めている俺にセレストさんが答える。今日の天気予報を言うかのように、さも事も無げに。
「潤滑油代わりの軟膏だ。身体に問題ない成分だから安心したまえ」
「……じゅん、かつゆ?」
「最後までヤるつもりなら必須だろう? それとも本気で分かっていないのか?」
男同士のやり方を、そこまで言われてやっと気づいた。とんでもない物を手渡されたことに。
「なっ……なななんでこんな物、持ち歩いてるんですか!?」
「グレイを焚き付けるつもりで持ってきたんだが、彼に渡しても無意味そうだからな」
焦ってチューブを取り落としそうになる俺を尻目に、セレストさんはマイペースだ。冷めかけた紅茶をくぴくぴ飲んでいる。
そこまで言うつもりは、なかったんだろうか。俺が尋ねると、ばつが悪そうにセレストさんが眉間のシワを深くした。
じっと見つめると、セレストさんの瞳が迷うように泳ぐ。もともと乱れていた髪を、さらにわしゃわしゃかき混ぜてから、両手を軽く上げて降参のポーズを取った。
「……君が卒業するまではな。教職者としてのけじめらしいが……私が思っていた以上に決意が固そうだ。こればかりは君が強請っても無理だろう」
卒業するまでって……俺が強請っても無理って……そんな……
「で、でも……昨日は俺のこと触ってくれましたよ? 俺が気持ちよくなれたら嬉しいって、喜んでくれて……」
「ふむ……一応、手は出してもらえていたか。だが、結局最後まで致してもらえなかったんだろう? 君だけスッキリさせられて終わったんじゃないか?」
まるで、見ていたようなもの言いだ。いや、その通りなんだけどさ。
「うっ……」
「図星のようだな。つまりは、そういうことだ。君が卒業するまで、それでやり通すつもりなんだろう」
じゃあ、ホントに昨日みたいに俺だけのまま過ごさないといけないのか? 俺が卒業するまで、ずっと?
ますます生殺しになっただけじゃないか。軽いスキンシップだけの関係から、大幅にステップアップ出来たかと思っていたのに。
セレストさんが、項垂れる俺の背中を、ぽんぽんと叩いてくれる。しばらく宥めてくれた後、不意に手を取られる。白衣のポケットから掌サイズのチューブを取り出したかと思えば、俺に握らせた。
「そこでだ、君にこれを渡しておこう」
「……何ですか、これ?」
塗り薬、だろうか。見たことのないラベルだ。
っていうか、何で今? 別に俺、擦り傷も、かぶれもないけれど。
指に挟んで裏表をくるくる回しながら、しげしげ眺めている俺にセレストさんが答える。今日の天気予報を言うかのように、さも事も無げに。
「潤滑油代わりの軟膏だ。身体に問題ない成分だから安心したまえ」
「……じゅん、かつゆ?」
「最後までヤるつもりなら必須だろう? それとも本気で分かっていないのか?」
男同士のやり方を、そこまで言われてやっと気づいた。とんでもない物を手渡されたことに。
「なっ……なななんでこんな物、持ち歩いてるんですか!?」
「グレイを焚き付けるつもりで持ってきたんだが、彼に渡しても無意味そうだからな」
焦ってチューブを取り落としそうになる俺を尻目に、セレストさんはマイペースだ。冷めかけた紅茶をくぴくぴ飲んでいる。
5
お気に入りに追加
141
あなたにおすすめの小説


身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる