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マッチョな先生と恋人同士になった件(グレイルート)

……俺は、今日が、初めてなのに

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 ……俺の格好? 

 言われて、ざっと自分の服へと視線を巡らせる。明らかにサイズの合っていないTシャツと短パン。そう言えば、先生の服を借りたんだった。

 ようやく思い出して、頬が一気に熱くなる。そんな俺を置き去りにして、セレストさんはガンガン話を進めていく。

 楽しくて仕方がないって感じだ。口角の上がりまくった口元からも、弾んだ声からも滲み出ていた。

「ケーキでも食べながらじっくり話を聞こうではないか! そうと決まれば紅茶を淹れよう! ああ、そうだ! こっちの棚の奥に秘蔵の茶葉があった筈だ」

 そうして、俺の返事を聞くより先に、いそいそと台所へと向かっていった。多分、紅茶であろう彩り鮮やかな缶や箱。それらがみっちり詰まった棚の奥へと手を伸ばす。

 しばらく、アレでもないコレでもないという風に、缶や箱を出してはしまいを繰り返していた。が、お目当てが見つかったんだろう。ああ、これだ! と目を輝かせて一つの缶を手にする。

 それは、詳しくない俺が見ても、デザインや色合いが他のものとは違うように見えた。何だか、いかにも高そうだ。

 ほくほく顔のセレストさんは、その後も勝手知ったるようにキッチンでお湯を沸かし、食器棚からティーポットやティーカップを取り出し、テーブルの上へと並べていく。

 胸の中にモヤモヤした重苦しさが渦巻いていく。セレストさんは、俺の為にお茶の準備をしてくれているのに。

 ……なんか、手慣れてないか? それに、詳し過ぎないか?

『まるで、常に来客を想定しているような』さっき浮かんだ考えが蘇る。もしかして、ずっと入り浸っているのかな、セレストさん……先生の部屋に。

 ……俺は、今日が、初めてなのに。

「随分手慣れてますね……ここには、よく遊びに来るんですか?」

 気がつけば、ポロリとこぼしてしまっていた。あからさまな不満を滲ませた俺の声に、セレストさんが振り返る。俺を捉えた水色の瞳は、何故か嬉しそうに微笑んでいた。

「そういうことは、私ではなくグレイに言いたまえ。喜ぶぞぉ、君が私に嫉妬したってな」

 ああ、そうか。嫉妬してたのか、俺、セレストさんに。

 またしても彼に気づかされて、顔から火が出そうになる。思わず口を手で覆った俺を見て、セレストさんがニシシと白い歯を見せて笑った。
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