気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件～恋人ルート～

マッチョな幼なじみと恋人同士になった件（ダンルート）

俺との将来

「父さん、母さん、大事な話があるんだ」

　閉店後の静かな店内にダンの声が響く。

　真っ直ぐな声と同じ、真剣な面持ち。ガタイのいい背を伸ばして語りかけるダンの姿に、テーブルの向かいに座るおじさん達は表情を引き締め、隣に座る俺は身を固くした。

「……俺、今シュンと付き合ってるんだ。真剣にこいつとの将来を俺は考えてる」

　……俺との、将来……

　静かに紡がれた言葉に心臓が煩くなってしまう。思わずダンを見上げると温かい眼差しに出迎えられた。

「シュンと一緒に暮らしたいんだ。学園からはルームシェアって形でもう許可はとってある。後は父さん達が許してくれたら……」

　明るい調子を遮ったのは、短いけれども重いため息。眉をひそめたおじさんの表情は呆れているように見えた。

「お前の気持ちは分かった。だが肝心のシュンくんの方はどうなんだ？」

　てっきり反対されるのかと思ったけれど、違うらしい。俺を心配してくれての苦言みたいだ。

　確かに俺は初耳だった。いきなりで、びっくりもした。でもそれ以上に嬉しかったんだけれどな。

　丸くなった真っ赤な瞳が俺を見る。焦った顔には分かりやすく書いてあった。しまった、と。

「その様子だと……お前だけ浮き足だって、ちゃんと彼に説明してなかったんだろう？」

　図星、というか事実だ。ダンは眉間に深く皺を刻みながら俯いてしまった。

「シュンくんとの将来を考えるんだったら、一番優先しなければならないのは彼の気持ちじゃないのか？」

　……なんか、雲行きが怪しいな。　

　ここは俺が声を上げるべきだろう。フォローすべきだろう。嬉しかったですよと。気にしてないから大丈夫ですよと。

　……ワンチャン、火に油を注ぐ可能性も否めないが。

「あなたの言う通りよ、だからシュンちゃんの気持ちを聞きましょう？」

　まさかの助け舟だった。おばさんから微笑みかけられながら手を取られ、おじさんの表情が少し柔らかくなる。

「ねぇ、シュンちゃん」

　優しい眼差しが俺に問いかけた。

「……俺も、ダンと一緒に暮らしたいです。ずっと、ダンの側に居たいです」

　俺の思ったままを言葉に乗せる。二人を真っ直ぐ見つめながら。

「シュン……」

　か細く震える声に応え、繋いだ手を握り返す。見つめ合った夕焼けよりも眩しい赤色は、透明な膜に包まれていた。