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マッチョな幼なじみと恋人同士になった件(ダンルート)
恋人同士なんだから
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約束通り、丁度夕御飯の時間にダンは部屋に帰ってきた。
店でついでに作ってきた、と手渡された大きなタッパー。開けると中には二人分のオムライスがみっちり詰まっていた。
他愛もない会話をしながらそれを平らげ、お風呂に入る。昨日俺が頼んだからだろう。ダンが付いてこようとすることはなかった。
その代わり……なんだろうか。今日もダンは、俺をその逞しい腕の中に閉じ込めたまま動かない。
俺はというと……中々踏み出せずにいた。ダンが帰ってきてからずっと、タイミングを見計らっているんだけれど。
何も出来ないまま、刻一刻と時間だけが過ぎていく。
「シュン、そろそろ寝るか?」
よっぽど態度に出てたんだろうか。いつもより明らかに早い就寝の提案。振り向けば、男らしい眉を心配そうに下げるダンと目が合う。
マズいな……このままじゃ、結局今日もいつも通りに終わってしまう。
『ずっと恥ずかしがってても進めないよ? 勇気を出して!』
不意に蘇ったライの声援が、俺の背中をそっと押した。
「ダン! ちょっと……いいか?」
拳を固く握りしめ、ダンに向き直る。察してくれたんだろう。姿勢を正し、俺の言葉を静かに待ってくれている。
「その、俺……ダンともっと、恋人らしいこと、したくて……折角付き合えたのに、前と変わらないから、だから……俺」
もっと、ちゃんと気持ちを伝えたいのに……上手く言葉が出てこない。知らず知らずの内に手に力が入ってしまい、ダンのシャツの胸元がくしゃくしゃになる。
「……嬉しいよ……シュンがそんな風に思ってくれていたなんて」
頭の上から降ってきた、噛み締めるような声。思わず顔を上げると、幸せそうに頬を緩めるダンと目が合った。
「てっきり、俺ばっかりがお前に夢中だと思ってたから……」
「そんな、俺だって、もうとっくにダンのこと……」
言い終わる前に大きな手が頬にそっと添えられた。優しく上を向かされ、精悍な顔がゆっくり俺に近付いてくる。
「ま、待って! ダン! ちょっと、待って……」
うっかり流されそうだった。して欲しい気持ちを何とか堪え、両手でダンの肩を押し返す。
「シュン……どうし」
「俺から、ダンにキス、したいから」
赤い目をひときわ大きく見開かれた。寂しそうに歪んでいた口元が、ふわりと綻ぶ。
じっと俺を待っててくれる、その表情は期待に満ちていた。
店でついでに作ってきた、と手渡された大きなタッパー。開けると中には二人分のオムライスがみっちり詰まっていた。
他愛もない会話をしながらそれを平らげ、お風呂に入る。昨日俺が頼んだからだろう。ダンが付いてこようとすることはなかった。
その代わり……なんだろうか。今日もダンは、俺をその逞しい腕の中に閉じ込めたまま動かない。
俺はというと……中々踏み出せずにいた。ダンが帰ってきてからずっと、タイミングを見計らっているんだけれど。
何も出来ないまま、刻一刻と時間だけが過ぎていく。
「シュン、そろそろ寝るか?」
よっぽど態度に出てたんだろうか。いつもより明らかに早い就寝の提案。振り向けば、男らしい眉を心配そうに下げるダンと目が合う。
マズいな……このままじゃ、結局今日もいつも通りに終わってしまう。
『ずっと恥ずかしがってても進めないよ? 勇気を出して!』
不意に蘇ったライの声援が、俺の背中をそっと押した。
「ダン! ちょっと……いいか?」
拳を固く握りしめ、ダンに向き直る。察してくれたんだろう。姿勢を正し、俺の言葉を静かに待ってくれている。
「その、俺……ダンともっと、恋人らしいこと、したくて……折角付き合えたのに、前と変わらないから、だから……俺」
もっと、ちゃんと気持ちを伝えたいのに……上手く言葉が出てこない。知らず知らずの内に手に力が入ってしまい、ダンのシャツの胸元がくしゃくしゃになる。
「……嬉しいよ……シュンがそんな風に思ってくれていたなんて」
頭の上から降ってきた、噛み締めるような声。思わず顔を上げると、幸せそうに頬を緩めるダンと目が合った。
「てっきり、俺ばっかりがお前に夢中だと思ってたから……」
「そんな、俺だって、もうとっくにダンのこと……」
言い終わる前に大きな手が頬にそっと添えられた。優しく上を向かされ、精悍な顔がゆっくり俺に近付いてくる。
「ま、待って! ダン! ちょっと、待って……」
うっかり流されそうだった。して欲しい気持ちを何とか堪え、両手でダンの肩を押し返す。
「シュン……どうし」
「俺から、ダンにキス、したいから」
赤い目をひときわ大きく見開かれた。寂しそうに歪んでいた口元が、ふわりと綻ぶ。
じっと俺を待っててくれる、その表情は期待に満ちていた。
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