気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件~恋人ルート~

白井のわ

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細マッチョな先輩と恋人同士になった件(ソレイユルート)

嫌いになんてなる訳が

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「……はい?」

 思わず涙が引っ込んでいた。止まる気配なんて、全然なかったのに。

 ……え? ちょっと待って……じゃ、じゃあ、俺……自分に嫉妬してたの? 泣き喚いてたの? 穴が有ったら今すぐ入りたいんだけどっ!

「わっ、忘れて下さいっ! さっき俺が言ったこと、全部忘れて下さい! お願いします!!」

「えー? それってぇ、俺の方が、先輩のこと好きなのに! ってとこ? そ、れ、と、もー」

「全部って、言ってるじゃないですかっ! ソレイユ先輩の意地悪っ!!」

 ニヤニヤと口元を緩めながら先輩が頬をくっつけてくる。ますます密着してくる身体を押し返そうとしても、ビクともしない。

 流石、サルファー先輩の相棒。剣術部のエース格。見た目は、この世界にしては細めだけれども鍛え方が違う。

 そんな彼の腕の中から逃れようと、ヒョロヒョロな俺が暴れたところで敵う訳もなく、あっさりと動きを封じられてしまった。

「うぅ……離して下さ、んぅっ……」

 往生際悪く藻掻いていると顎を掴まれた。鼻筋の通った顔が、柔らかな微笑みが、近づいてきた。

 ああ、この眼差しは……さっきの……

 強引な口づけだった。それも、一回だけじゃ終わらなかった。何度も角度を変えながら、柔い唇を重ねられた。まるで、想いを伝えられているみたいに。

 頭の中がふわふわする。だんだんと身体の力が抜けてきて、俺は縋るように先輩の腕にしがみついてしまっていた。

「……は、ん……ん、ふ、んぅ……ん……ぁ……」

 もう抵抗する気も起きなかった。恥ずかしさなんて、どっかへいってしまっていた。

 ただ嬉しくて、幸せで……夢を見ているみたいで。この時間が、いつまでも続いて欲しいだなんて、有り得ないことを願ってしまっていた。

 くぐもった笑い声が聞こえてきて、触れ合っている唇が僅かに震えた。目を開ければ、微笑むオレンジの瞳とかち合った。わざとらしく音を立てて、先輩が離れていってしまう。

「……ん、落ち着いた?」

 頬を撫でてくれる手のひらが温かい。

 小首を傾げている先輩は、スゴくご満悦そう。目尻を下げて、ふにやふにゃと口元を緩ませている。つい、彼の周りに花でも飛んでいそうな錯覚を覚えてしまう。

 ……可愛い。可愛いんだけど、何か……

「……ばか……先輩の、ばか」

 悔しくて、そっけないことを言ってしまっていた。ふいっと顔を背けてしまっていた。

 ホントは聞きたかった。俺のどういうところが好きなんですか? とか。いつからですか? とか。

 伝えたかった。俺は、ずっと好きでしたって。このピアスを貰えた時から、ずっと。なのに。

「ご、ごめっ……シュンちゃ……オレのこと……嫌いに、なっちゃった……?」

 慌てた声は今にも泣いてしまいそうで。思わず顔を向ければ、しょんぼりと眉を下げた先輩が俺をじっと見つめていた。

「……シュンちゃん」

 大きな手のひらが、俺の手をそろそろと握ってくる。打って変わってすっかり肩を落としてしまっている様子に、胸が高鳴ってしまう自分はもう救いようがないんだと思う。

「……嫌いになんか、なりませんよ……好きに決まってるじゃないですか……大好きですよ」

 白旗を上げて思いの丈を伝えれば、沈んでいた表情が見る見るうちに晴れ渡ってく。頬をほんのり染めながら、先輩がそっと額を合わせてきた。

「……オレも……大好きだよ、シュンちゃん……オレの恋人になってくれる?」

「はい……こんな俺で良かったら……よろしくお願いします」

「……愛してるよ、シュン」

 柔らかな指先が俺の頭を、頬を撫でていく。今度は優しく、ゆっくりと重ねられた。

 また触れ合えた唇に、胸の内がじんわりと温かくなっていく。俺の心は、かつてないほどの幸福で満たされていた。
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