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細マッチョな先輩と恋人同士になった件(ソレイユルート)
思わせぶりな彼
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頭の上から降ってきた焦がれていた声。耳心地のいい明るい声に顔を上げると、オレンジの瞳が微笑んでいた。ゆるくウェーブがかかった髪を耳にかけながら、待ち人が俺を見下ろしていた。彼の左耳で揃いのピアスが淡い光沢を帯びている。
「そっ、ソレイユ先輩? まだ、部活中なんじゃ……」
驚きのあまり俺はジュースを落としてしまっていたらしい。先輩が拾ってくれて、飲み口を丁寧にハンカチで拭いてくれた。
さらには、沈んでいる果肉を浮かばせる為に軽く振ってくれて、タブを開けてから「ハイっ」と手渡してくれた。
「……ありがとうございます」
「んーん、どういたしまして」
自分の分のジュースを買うのかと思いきや、隣に腰掛けてきた先輩。横顔でもカッコいいのに、こっちを向いてくれた。その破壊力たるや。
「シュンちゃんに会いたくてサボっちゃった」
「うぇっ!?」
そして、この思わせぶりな発言である。全く、心臓がいくつあっても足りやしない。
形の良い唇が悪戯っぽく微笑んでいるから、冗談なのだろう。でも、嬉しい。もしかするのかもって、期待してしまう。
俺のリアクションに気を良くしたのか、先輩は隠す気もなくクスクスと笑った。彼の長く引き締まった腕が俺の背に周り、肩を抱き寄せてくる。
温かい……いい匂いもして……
突然の想い人からのスキンシップに、全身が強張ってしまう。強く握り締めていた俺の手の中で、缶が鈍い悲鳴を上げた。
どうしよう……滅茶苦茶嬉しい……絶対、人に見せられない顔してるな、俺。
「実は、シュンちゃんに相談したいことがあるんだよねー」
「相談、ですか?」
「うん、オレの友達の話なんだけど。良かったら聞いてくれない?」
「……俺で良ければ、いくらでも聞きますけど」
やっぱり、そうだよな……何の理由もなく先輩が俺に会いに来てくれる訳ないよな……
いや、でも折角先輩が俺のことを頼ってくれてるんだから、しっかりしないと!
複雑な気持ちをジュースと一緒に一気に飲み干す。空き缶を持て余す暇もなかった。ひょいっと横から奪われてしまった。先輩が慣れた手つきで缶を放ると、綺麗な放物線を描いてゴミ箱へと着地した。甲高い音も相まって、何だか気持ちがいい。
口の端をニッと持ち上げて、先輩が得意気に笑いかけてくる。カッコいいんだけど可愛くて、胸の辺りが擽ったくなった。
「あ、ありがとうございます……それで、その友達が一体どうしたんですか?」
誤魔化すように問いかければ、先輩は口元をふわりと綻ばせた。ただそれだけで心臓が大きく跳ねてしまう。重症だ。
幸いなことに先輩から不審がられてはいないよう。件の相談内容を話し始めた。
「ソイツ好きなコがいるんだけどさ、ソイツの親友もそのコのことが好きなんだよね」
「友達と好きな人が被っちゃったから、悩んでるってことですか?」
「うん、それも有るんだけどね。実はもともとソイツ、親友の恋を応援しててさ……不器用な彼を焚き付ける為に、そのコに近付いたんだけど……」
「好きになっちゃったんですね」
「うん……」
俺の言葉に、先輩は眉を下げて切なそうな表情で笑った。
まるで自分のことのように心を痛めている先輩を見て、その友達の事を羨む俺は大分……いや、かなり最低だと思う。
「ソイツ、最初は諦めようと思ってたみたいなんだけど……そのコが困ってる時にかこつけて相談に乗ったり、世話を焼いたりしている内に完全に入れ込んじゃったみたい」
「それは……辛いですね」
「うん……でも、脈は有りそうなんだよねー……そのコ、ソイツのお気に入りの場所で、毎日ずっとソイツが来るのを待ってるんだよ。んで、ソイツが来たらぱあって顔を輝かせてさ……その笑顔が堪らなく可愛いんだって」
なんだろう、急に親近感が湧いてきたな。その子とは、なんだか仲良くなれそうだ。
「因みに、親友の人は知ってるんですか?」
「んー……多分バレてると思うって。最近、親友に宣戦布告されたみたい。どっちが選ばれても恨みっこなしだぞ! って」
「だったら、もう告白するしかないんじゃないですか? 結局、その子の気持ちが一番大事ですし」
自分のことは棚に上げといて人には告白しろって、一体どの口が言っているんだろう。
自分自身にうんざりしてると視線を感じた。鋭く細められた瞳が、真っ直ぐに俺を見つめている。先輩の面持ちは、今まで見たことがないくらいに真剣で。
「……やっぱりシュンちゃんもそう思う?」
「え、はい……」
「そっか……じゃあさ……さっきの友達の話、実はオレのことだったって言ったら、どうする?」
突然、ガツンと頭を殴られた気分だった。
「そっ、ソレイユ先輩? まだ、部活中なんじゃ……」
驚きのあまり俺はジュースを落としてしまっていたらしい。先輩が拾ってくれて、飲み口を丁寧にハンカチで拭いてくれた。
さらには、沈んでいる果肉を浮かばせる為に軽く振ってくれて、タブを開けてから「ハイっ」と手渡してくれた。
「……ありがとうございます」
「んーん、どういたしまして」
自分の分のジュースを買うのかと思いきや、隣に腰掛けてきた先輩。横顔でもカッコいいのに、こっちを向いてくれた。その破壊力たるや。
「シュンちゃんに会いたくてサボっちゃった」
「うぇっ!?」
そして、この思わせぶりな発言である。全く、心臓がいくつあっても足りやしない。
形の良い唇が悪戯っぽく微笑んでいるから、冗談なのだろう。でも、嬉しい。もしかするのかもって、期待してしまう。
俺のリアクションに気を良くしたのか、先輩は隠す気もなくクスクスと笑った。彼の長く引き締まった腕が俺の背に周り、肩を抱き寄せてくる。
温かい……いい匂いもして……
突然の想い人からのスキンシップに、全身が強張ってしまう。強く握り締めていた俺の手の中で、缶が鈍い悲鳴を上げた。
どうしよう……滅茶苦茶嬉しい……絶対、人に見せられない顔してるな、俺。
「実は、シュンちゃんに相談したいことがあるんだよねー」
「相談、ですか?」
「うん、オレの友達の話なんだけど。良かったら聞いてくれない?」
「……俺で良ければ、いくらでも聞きますけど」
やっぱり、そうだよな……何の理由もなく先輩が俺に会いに来てくれる訳ないよな……
いや、でも折角先輩が俺のことを頼ってくれてるんだから、しっかりしないと!
複雑な気持ちをジュースと一緒に一気に飲み干す。空き缶を持て余す暇もなかった。ひょいっと横から奪われてしまった。先輩が慣れた手つきで缶を放ると、綺麗な放物線を描いてゴミ箱へと着地した。甲高い音も相まって、何だか気持ちがいい。
口の端をニッと持ち上げて、先輩が得意気に笑いかけてくる。カッコいいんだけど可愛くて、胸の辺りが擽ったくなった。
「あ、ありがとうございます……それで、その友達が一体どうしたんですか?」
誤魔化すように問いかければ、先輩は口元をふわりと綻ばせた。ただそれだけで心臓が大きく跳ねてしまう。重症だ。
幸いなことに先輩から不審がられてはいないよう。件の相談内容を話し始めた。
「ソイツ好きなコがいるんだけどさ、ソイツの親友もそのコのことが好きなんだよね」
「友達と好きな人が被っちゃったから、悩んでるってことですか?」
「うん、それも有るんだけどね。実はもともとソイツ、親友の恋を応援しててさ……不器用な彼を焚き付ける為に、そのコに近付いたんだけど……」
「好きになっちゃったんですね」
「うん……」
俺の言葉に、先輩は眉を下げて切なそうな表情で笑った。
まるで自分のことのように心を痛めている先輩を見て、その友達の事を羨む俺は大分……いや、かなり最低だと思う。
「ソイツ、最初は諦めようと思ってたみたいなんだけど……そのコが困ってる時にかこつけて相談に乗ったり、世話を焼いたりしている内に完全に入れ込んじゃったみたい」
「それは……辛いですね」
「うん……でも、脈は有りそうなんだよねー……そのコ、ソイツのお気に入りの場所で、毎日ずっとソイツが来るのを待ってるんだよ。んで、ソイツが来たらぱあって顔を輝かせてさ……その笑顔が堪らなく可愛いんだって」
なんだろう、急に親近感が湧いてきたな。その子とは、なんだか仲良くなれそうだ。
「因みに、親友の人は知ってるんですか?」
「んー……多分バレてると思うって。最近、親友に宣戦布告されたみたい。どっちが選ばれても恨みっこなしだぞ! って」
「だったら、もう告白するしかないんじゃないですか? 結局、その子の気持ちが一番大事ですし」
自分のことは棚に上げといて人には告白しろって、一体どの口が言っているんだろう。
自分自身にうんざりしてると視線を感じた。鋭く細められた瞳が、真っ直ぐに俺を見つめている。先輩の面持ちは、今まで見たことがないくらいに真剣で。
「……やっぱりシュンちゃんもそう思う?」
「え、はい……」
「そっか……じゃあさ……さっきの友達の話、実はオレのことだったって言ったら、どうする?」
突然、ガツンと頭を殴られた気分だった。
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