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マッチョな先輩と恋人同士になった件(サルファールート)
これって、もしや……カツアゲというヤツでわ?
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長めの行列に並んでいる先輩をぼんやり見つめていると不意に視界を影が遮った。
「……ねぇ、君……今一人?」
頭の上から降ってきた声に顔を上げれば、見知らぬ青年が。両の耳に大量のピアスを付けた、いかにもな風貌な青年が口端を不敵に上げて笑っていた。
あれ? これって、もしや……カツアゲってヤツじゃないか? とにかく逃げないと……サルファー先輩のところへ……
「っ……」
慌てて立ち上がったものの、時すでに遅し。
更にお仲間らしき、これまた絵に描いたようにアレな格好をした二人の青年が、俺を取り囲むように左右に立ち塞がっていた。
後ろに逃げようにも、運悪く壁際のベンチだったこともあり八方塞がり。タックルでもして前か左右の誰かを押し退けない限り、突破するのは難しそう。
しかし三人共、先輩程ではないとはいえそれなりにガタイがよく、身長も俺より高い。体格差といい、人数差といい、分が悪過ぎる。
男達からの無言の圧に堪えかねてか、イヤな汗が背中にじわりと滲んでくる。勝手に指先が震え出す。
どうしよう……早く先輩帰ってきてくれないかな……見た目が怖いだけで実は普通の人だったりしないだろうか……道を聞きたいだけとか……
現実逃避故に希望的観測をし始めていた俺に向かって、骸骨のタトゥーが入った腕を差し出しながら左の男が微笑んだ。
「……良かったら、俺らとお茶しない?」
「……お、お茶? 財布出せ……とかじゃなくて?」
「……財布?」
話しかけてきた男の眉が、切り傷らしき跡によって太めのアーチの真ん中がかけた眉が、怪訝そうに持ち上がる。
しまった。あんまりにも予想外なことを言われたもんだから、つい。
何やらアイコンタクトをし始めた男達に、ますます背筋が冷たくなっていく。
俺の右に居る男が、おもむろに筋肉質な腕をゆらりと上げる。その手にはトゲトゲした指輪がいくつも嵌められていた。
マズい……怒らせた? 殴られる?
咄嗟に顔を庇うように腕で覆い身構える。けれども予想していた衝撃は一向に訪れない。それどころか。
「……どうしたの? 大丈夫? もしかして、頭……痛いとか?」
普通に心配してくれた。他の二人も「座ってていいよ」とベンチを勧めてくる。
「へ……? あ、いえ……大丈夫……です」
もしかして、この人達……普通にいい人なのでわ? 見た目が、ちょっとヤンチャなだけで。
因みに俺が殴られると勘違いしてしまった男の動きは、ただ頭の後ろに手をやろうとしていただけらしかった。件の彼が、刈り上げた後頭部を掻きながら、照れくさそうに笑いかけてくる。
「……じゃあ、改めて君のこと……お茶に誘わせてもらってもいいかな? あっちのカフェなんかどう? ゆっくり座れるよ?」
「勿論、俺達が奢るからさ」
「ナンパで割り勘とか、ダサい真似しないからさ。好きな物、何でも頼んでいいよ?」
「……ナンパ? 俺を……ですか?」
先輩じゃなくて? カッコよくて、頼もしくて、優しくて……なのに可愛さも兼ね備えている、百億満点な先輩じゃなくて?
いや、仮に先輩をナンパしようもんなら、絶対に阻止するけど。恋人として。
一人で勝手に決意していた俺に、男達が畳み掛けてくる。
「そうそう、君をだよっ」
「遠目で見ても可愛いなって思っていたけど、近くで見たら本当に可愛いね。目、大きいし、肌も白いし」
「スタイルもいいよね、バランスのいい筋肉の付き方しててさ」
どうやら本気らしい。冗談抜きで、何故か俺をお茶に誘っているらしい。
にこやかな笑顔で俺を褒めちぎってくる彼らを前にして、緊張がほっと緩んでいく。
良かった……カツアゲじゃなくて。殴られなくて。
……いや、これはこれでよくないだろ。早く断んないと。
「えっと、すみません、気持ちは嬉しいんですけど……俺、今、大事な人を待っていて……」
「さっきの筋肉凄い人? やっぱり彼氏?」
「君みたいな可愛いこを一人にするヒドイ奴なんて放って置いて俺達と行こうよ、ね?」
「損はさせないからさ」
坊主頭の男が、俺の腕を掴んで連れて行こうとする。
突然のことに恐怖はあった。けれども、それを塗り潰さんばかりに怒りが込み上げてくる。
「サルファー先輩は、ヒドイ奴なんかじゃありません!! カッコよくて優しい素敵な人です!! それから皆さんとは一緒に行けませんっ、ごめんなさい!!」
男の手を振りほどいて捲し立てる。男達は目をぱちくりさせた後、三人同時にガックリと肩を落とした。
「だよねぇー」
「……へ?」
今度は俺の番だった。息ぴったりに嘆きと諦めの混じった声を上げた男達を、目を丸くして見つめることになったのは。
「……ねぇ、君……今一人?」
頭の上から降ってきた声に顔を上げれば、見知らぬ青年が。両の耳に大量のピアスを付けた、いかにもな風貌な青年が口端を不敵に上げて笑っていた。
あれ? これって、もしや……カツアゲってヤツじゃないか? とにかく逃げないと……サルファー先輩のところへ……
「っ……」
慌てて立ち上がったものの、時すでに遅し。
更にお仲間らしき、これまた絵に描いたようにアレな格好をした二人の青年が、俺を取り囲むように左右に立ち塞がっていた。
後ろに逃げようにも、運悪く壁際のベンチだったこともあり八方塞がり。タックルでもして前か左右の誰かを押し退けない限り、突破するのは難しそう。
しかし三人共、先輩程ではないとはいえそれなりにガタイがよく、身長も俺より高い。体格差といい、人数差といい、分が悪過ぎる。
男達からの無言の圧に堪えかねてか、イヤな汗が背中にじわりと滲んでくる。勝手に指先が震え出す。
どうしよう……早く先輩帰ってきてくれないかな……見た目が怖いだけで実は普通の人だったりしないだろうか……道を聞きたいだけとか……
現実逃避故に希望的観測をし始めていた俺に向かって、骸骨のタトゥーが入った腕を差し出しながら左の男が微笑んだ。
「……良かったら、俺らとお茶しない?」
「……お、お茶? 財布出せ……とかじゃなくて?」
「……財布?」
話しかけてきた男の眉が、切り傷らしき跡によって太めのアーチの真ん中がかけた眉が、怪訝そうに持ち上がる。
しまった。あんまりにも予想外なことを言われたもんだから、つい。
何やらアイコンタクトをし始めた男達に、ますます背筋が冷たくなっていく。
俺の右に居る男が、おもむろに筋肉質な腕をゆらりと上げる。その手にはトゲトゲした指輪がいくつも嵌められていた。
マズい……怒らせた? 殴られる?
咄嗟に顔を庇うように腕で覆い身構える。けれども予想していた衝撃は一向に訪れない。それどころか。
「……どうしたの? 大丈夫? もしかして、頭……痛いとか?」
普通に心配してくれた。他の二人も「座ってていいよ」とベンチを勧めてくる。
「へ……? あ、いえ……大丈夫……です」
もしかして、この人達……普通にいい人なのでわ? 見た目が、ちょっとヤンチャなだけで。
因みに俺が殴られると勘違いしてしまった男の動きは、ただ頭の後ろに手をやろうとしていただけらしかった。件の彼が、刈り上げた後頭部を掻きながら、照れくさそうに笑いかけてくる。
「……じゃあ、改めて君のこと……お茶に誘わせてもらってもいいかな? あっちのカフェなんかどう? ゆっくり座れるよ?」
「勿論、俺達が奢るからさ」
「ナンパで割り勘とか、ダサい真似しないからさ。好きな物、何でも頼んでいいよ?」
「……ナンパ? 俺を……ですか?」
先輩じゃなくて? カッコよくて、頼もしくて、優しくて……なのに可愛さも兼ね備えている、百億満点な先輩じゃなくて?
いや、仮に先輩をナンパしようもんなら、絶対に阻止するけど。恋人として。
一人で勝手に決意していた俺に、男達が畳み掛けてくる。
「そうそう、君をだよっ」
「遠目で見ても可愛いなって思っていたけど、近くで見たら本当に可愛いね。目、大きいし、肌も白いし」
「スタイルもいいよね、バランスのいい筋肉の付き方しててさ」
どうやら本気らしい。冗談抜きで、何故か俺をお茶に誘っているらしい。
にこやかな笑顔で俺を褒めちぎってくる彼らを前にして、緊張がほっと緩んでいく。
良かった……カツアゲじゃなくて。殴られなくて。
……いや、これはこれでよくないだろ。早く断んないと。
「えっと、すみません、気持ちは嬉しいんですけど……俺、今、大事な人を待っていて……」
「さっきの筋肉凄い人? やっぱり彼氏?」
「君みたいな可愛いこを一人にするヒドイ奴なんて放って置いて俺達と行こうよ、ね?」
「損はさせないからさ」
坊主頭の男が、俺の腕を掴んで連れて行こうとする。
突然のことに恐怖はあった。けれども、それを塗り潰さんばかりに怒りが込み上げてくる。
「サルファー先輩は、ヒドイ奴なんかじゃありません!! カッコよくて優しい素敵な人です!! それから皆さんとは一緒に行けませんっ、ごめんなさい!!」
男の手を振りほどいて捲し立てる。男達は目をぱちくりさせた後、三人同時にガックリと肩を落とした。
「だよねぇー」
「……へ?」
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