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マッチョな先輩と恋人同士になった件(サルファールート)

最終確認は、きちんと

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 俺達のペースで、とは言ったもののだ。やっぱり、ちゃんと確認しておかなければいけないだろう。お互いの気持ちを。

「あの……先輩」

「ん? どうしたんだ、シュン」

 柔らかく微笑む先輩は、すっかり落ち着きを取り戻していた。

 それどころか、良い意味で吹っ切れたような。また俺を膝の上に抱っこしてくれ、手を繋いでくれ、更には時折キスをしてくれるのだ。頭や、額や、頬、勿論口にも。大サービスだ。

 俺が、嬉しかったって言ったからかな……キスしてもらえて。

「……また、何かお願いがあるのか? 何をしたらいい? 俺は何をしたら、君に喜んでもらえるんだ?」

 今もまた、嬉しそうに瞳を輝かせながら「遠慮せずに何でも言ってくれ」と繋いだ手を握ってくれる。

「ありがとうございます……えっと、お願いというか、先輩に確認しておきたいことがあって……」

「ああ、なんだ? 何でも聞いてくれ」

 そう言ってくれるのは有り難いのだけれど、聞きにくい。そんな純粋な、期待に満ちた眼差しで見つめられてしまったら。

「その……せ、先輩は……俺と……」

「ああ」

「俺と…………え、エッチなこと、したいですか?」

「ッ…………そ、それは」

 鼻筋の通った顔が一気に真っ赤に染まっていく。重なっている、ひと回り大きな手が震え出す。

 ここまでの反応は想定内だ。それに、さっきまでのやり取りのお陰で分かる。先輩が、イヤがってはいないことが。ただ、照れてるだけってことが。

 だから俺は、先輩の目を見つめたままでいられた。

「俺は……その、今回のお泊りで、先輩とキス以上のこと、したいなって……だから、さっきも」

「っじゃあ、やっぱり、そういう意味であっているのか?」

 言い終わる前に先輩から尋ねられた。急に距離を詰められて、彼の高い鼻先と俺の鼻とが当たってしまいそうになる。

 黄色の瞳を縁取る、金糸のようにキレイな睫毛が震えている。尖った喉から、飢えた音が聞こえた気がした。

「君を、俺の……す、好きにしていいって……」

「はい……」

「っ…………」

 息を呑んで「そうか……」と震える声で呟いてから、先輩は口を引き結んでしまった。

「……大丈夫ですよ、先輩。俺、確認したかっただけなんで」

 そうだ。もう十分じゃないか。

 さっきも、嬉しかったって言ってくれたじゃないか。今だって、イヤがっている風には、見えないし。

 焦らずに進めて行こう。時間はたっぷりあるんたから。

「……そういうことしたいの、俺だけかなって思ってたから……だから、先輩もイヤじゃないんだって分かれば、それで十ぶ、んっ」

 また言い終わる前に遮られた。今度は、少し熱い唇で。

 大きな手から後頭部を固定されたまま、何度も優しく食まれる。激しく高鳴る心臓の音が、ぼうっと熱を持った頭に響き続けている。

 唇が重なる度に、先輩から言ってもらえている気がした。大丈夫だって、好きだって、伝えてもらえている気がしたんだ。

「ふ……ん、んぅ……」

 ドクドクと煩い全身から力が抜けていく。指の先すら、まともに動かせない。

 先輩の腕の中で、すっかり腑抜けになっていた頃だった。名残惜しそうにリップ音を鳴らしながら、熱烈な想いを伝えてくれていた唇が離れていったのは。

 どちらのものかも分からない乱れた呼吸が、いまだに高鳴りっぱなしの鼓動に混じって聞こえる。

 ぼんやりと俺を見つめている、熱のこもった眼差し。少し滲んだ瞳が、数回ゆっくり瞬いて、大きく見開かれた。

「は……っ、すまない……また俺は、言葉よりも先に、その……」

「ん……大丈夫、ですよ……分かってます……伝えてくれようとしたんですよね? 先輩も、その……」

 焦っていた表情が綻んでいく。黄色の瞳が真っ直ぐに俺を捉える。

「ああ、君だけじゃない。俺だって、君とそういうことをしたい」

 温かい手のひらが、俺の手を強く握り締めた。

「君を……抱かせて欲しいんだ……」

「サルファー先輩……」

「あっ……ああ、勿論、今すぐじゃないぞっ! 安心してくれ!」

 耳まで真っ赤にして、先輩はあたふたしている。とてもじゃないが、さっきまで情熱的な言葉を伝えてくれていたとは思えない。

 分かってますよ、と手を握り返せば、安心したように微笑んだ。

「大事な君に、痛い思いをさせたくないからな。焦らずに、俺達のペースで準備を進めていこう。それで、いいだろうか?」

「はいっ」
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